退職後・上場前でも使える!Spiral.AIの時代を先取りしたストックオプション制度
スタートアップに就職する際、気になる条件のひとつとして、「ストックオプション」があります。
一般的なストックオプションは、上場していないと行使できない、会社が上場したときに在籍していないと行使できないなどの制限がありました。そのため、会社が上場しない限り、紙切れになってしまうことが多い仕組みとなっていました。
Spiral.AIが発行するストックオプションは、仮に上場しなかった場合や、退職した場合でも、従業員が対価を得られる可能性があるように設計されています。一般的なストックオプションと比較すると紙切れになりづらく、国内ではかなり新しいスキームです。
この新しいスキームは具体的にどんなものなのか・制度設計にはどんな思いが込められているのか、Spiral.AI CFOの染原さんに話を伺いました。
▼ストックオプションの基礎知識を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください!
今回お話を伺った方
Spiral.AIのストックオプションのポイントは「1円」「退職後・上場前でも行使できる」
—— はじめにSpiralのストックオプションの特徴について教えてください。
染原 Spiralのストックオプションの特徴は大きく分けて3つあります。
まず、ストックオプションの権利を使って、株式を購入するときの金額が1円であること。
そして、後述するべスティング条件を満たした部分については退職したときにもストックオプションを会社に回収されず、持ち続けられること。
最後に、上場前でも株式に転換できる可能性を持たせていることです。
Spiralのストックオプションは、1円で行使できる
—— まずストックオプションの権利を使って、株式を購入するときの金額が1円であることについて教えてください。
染原 昨年、国税庁が新たなガイドラインを公表し、ストックオプションの行使金額が1円でも、税制適格ストックオプションとして認められうることとなりました。
この最新の制度を踏まえ、Spiralはストックオプションの行使金額を当面の間1株あたり1円としています。
これはまだ発表されてから時間が経っていない制度なので、世の中の多くの企業は取り組んでいない状態ですね。
Spiralのストックオプションは、退職しても行使できる
—— 次に、退職したときにもストックオプションを会社に回収されず、持ち続けられるポイントについて教えてください。
染原 従来のストックオプションのほとんどは、権利を使うために「在籍条件」がついていました。在籍条件とは、ストックオプションを行使する時点で、その会社の社員・役員でなければならないというものです。
今回、Spiralのストックオプションでは、在籍条件を外しました。
—— 退職してもストックオプションが行使できるのですね!それなら、入社してストックオプションをもらって、すぐに退職するとどうなりますか…?
染原 Spiralのストックオプションは退職しても使えますが、「2年間のクリフ」と「4年間のべスティング」の条件がついています。
クリフとべスティングについて解説するために、100株分の権利をもらった場合を考えてみます。
2年間のクリフとは、ストックオプションをもらったとしても、2年間は行使できないという条件です。2年間、役職員として業務に携わり続けるという要件を満たしてからストックオプションは行使できるようになります。
—— 2年間ストックオプションを行使できない崖のような制度が「クリフ」なのですね。
染原 はい。そして、クリフの2年経ったあとも、すぐに100株分すべて行使できるわけではありません。100株のうち、4分の1の行使できる権利を1年ずつ渡していきます。2年のクリフの後、1年経ったら25株、2年経ったら50株という感じです。4年で100株すべてを行使できるようになります。これが4年間のべスティングという制度です。
—— ということは、100%のストックオプションを使うためには、クリフの2年とべスティングの4年会社に在籍する必要があるということですね!Spiralでは、退職した後もストックオプションを付与されるとのことですが、例えば4年半働いた場合にはどうなるのでしょうか…?
染原 100株のストックオプションの権利をもらって、4年半働いた場合、2年間のクリフがあって、その後1年経つごとに4分の1ずつストックオプションが付与されるはずなので、75株を買う権利があります。
従来のストックオプションの場合、退職時点で会社が上場しておらず、75株を行使せずに退職すると、そのまま未来永劫その75株は行使できないことになっていました。
Spiralでは、退職した場合でも権利のある75株分は行使できるように設計しました。
フェーズごとに活躍できる人材は違う。創業当初で活躍した人材にも、活躍に見合った報酬を。
—— なぜ退職後でも行使できる制度設計にしたのですか?
染原 会社の成長フェーズに応じて、活躍する人物は変わると考えているためです。
会社が誕生して間もない時点から5年で活躍できる人と、大きくなって社員数が1,000名ぐらいの会社になってから活躍できる人では、求められる能力は大きく異なるでしょう。
もし退職後のストックオプションの権利行使が認められず、ずっと在籍しなければストックオプションを行使できませんとなった場合、別の場所でもっと活躍できる人が、ずっと同じ場所にとどまらなければいけないということになってしまいます。
—— たしかに。スタートアップ創業時と成長してからでは求められるマインドやスキルも変わってきますよね。
染原 はい。なので、退職されたとしても、在職されていた間で活躍いただいていたら、その分の報酬をお渡ししたいと思ったことが、今回の制度設計にした大きな理由です。
スタートアップの序盤に活躍した人材に対して、その活躍に見合った分のオプションをお渡しできる制度設計になっています。こちらの制度のほうが、いい意味での人の新陳代謝を実現できると考えています。
Spiralのストックオプションは、上場前でも行使できる
—— Spiralのストックオプションは、上場前でも行使できるということでした。こちらのポイントについても教えてください。
染原 従来のストックオプションは、上場が行使条件になっていることが多くなっていました。
したがって、クリフの2年、べスティングの4年が経って、100%の株を行使できる状態になったとしても、会社がまだ上場していなかったとしたら、行使できないというのが従来のストックオプションだったんです。
Spiralは、この上場の条件を撤廃できるような設計にしています。
税制の関係もあり、まだ完全に上場条件を撤廃しているというわけではないのですが、税制の今後の動きも見ながら柔軟に対応していこうと考えています。税制の変化に合わせて、上場前であっても行使できる可能性を残す設計にしています。
—— 上場前でも行使できる制度設計にしたのはなぜですか?
染原 こちらも人の新陳代謝を確保することが理由のひとつです。もしストックオプションの条件に上場していて、かつ在籍していないと行使できないとなると、上場するまで会社に残っていなければいけなくなります。
在籍要件がなく、退職したときにストックオプションが付与されたとしても、上場の条件があった場合には、ストックオプションの行使を上場まで待つ必要があります。もうすでに辞めて関係のなくなった会社のストックオプションの利益を実現するためには、辞めた後の今となっては自分と直接は関係のない会社が上場できるかどうかをずっと待っていなければならないわけです。
人材の新陳代謝を健全に確保するためには、上場要件と在籍要件を外す必要があるんです。
また、上場を条件にすると、辞めた人だけでなく、現在勤めている従業員と経営者の関係にも歪みが生じます。
—— 上場を条件にした時に、従業員と経営者の関係にはどんな歪みが生じるのですか?
染原 従業員から経営者に対して、早く上場しなければならないというプレッシャーがかかるようになります。
本来、上場するかしないかという判断は、経営環境や企業戦略を判断した上で、ベストなタイミングを選びたいもの。上場しない限り、ストックオプションの利益が実現できないとなると、その利益を確定するために上場することが目的化してしまいます。
このような状況になると、最適な上場のタイミングの判断を誤ってしまう可能性があるのです。
—— たしかに、私たち従業員からみたら、できるだけ早くストックオプションを使いたいですからね…。
染原 それだけではありません。ストックオプションは権利行使期間は決まっており、最大でも発行後15年となっています。
もし最初にストックオプションを発行して、13年・14年目となった時、その人のストックオプションは、あと1年で使えなくなってしまいます。そうなると、ストックオプションを持つ人は、会社の状況やマーケット環境によらず、是が非でも上場してくれないと困るという状況になってしまいます。経営陣にとっても、最初にストックオプションをもらっていた人たちが数千万円・数億円の利益が実現できるかもしれないというものを見捨てられるかというと、とても難しい話になります。
このように、上場要件をストックオプションの行使条件にしてしまうと、最適なタイミングでの上場の判断を阻害してしまう可能性があるのです。
—— ストックオプションには使用期限があって、その使用期限が従業員と経営者の間で軋轢を生むこともあるんですね。
染原 はい。そのような理由から、上場条件と在籍条件を撤廃できる制度を設計しました。
とはいえ、撤廃するだけでいいかというと他にも難しい問題があります。
ストックオプションの売買ができるセカンダリーマーケットが登場する可能性がある。
—— 上場条件と在籍条件を外すだけでは解決できない難しい問題とは?
染原 現在、上場する前にストックオプションの権利をもらって株を買ったとしても、マーケットがないため売ることができません。買った株の買い手が必要なのですが、そこをどうするかという点は今後も議論が必要です。
—— 現在、ストックオプションを退職後・上場前に行使する場合、どうすればいいのでしょうか?
染原 退職する方が上場前にストックオプションの権利を行使した場合には、他の株主の方を連れてきて、その方に株をお譲りして利益を実現してもらって、退職いただくのが基本のイメージです。
他にも、現在、政府レベルで、今後スタートアップのエコシステムを発展させていくために、ストックオプションのセカンダリーマーケットを作るべし、といったことが議論されています。このセカンダリーマーケットが将来的にどうなるかというのも大きなポイントの一つになります。
今後このセカンダリーマーケットがどうなっているかによって、現在は流動的な制度設計になっていますが、Spiralとしては、ストックオプションをもらった方が退職するとなった場合に、上場前でも行使いただける制度設計にしています。
一度IPOを経験したからこそ、現在のストックオプションの課題がわかる
—— 行使価格1円、退職後・上場前でも行使できるという野心的な制度設計になっていると思います。これらの制度は他の企業も導入されていくでしょうか?
染原 まず、行使価格が1円の制度については、新しい制度なので今後さまざまな企業が導入していくと思います。一方で、退職後・上場前でもストックオプションを行使できるというのは、行使価格が1円の制度に比べると、浸透に時間がかかると思いますね。
—— なぜ退職後・上場前でもストックオプションを行使できるという制度設計に至ったのでしょう?
染原 僕とCEOの佐々木さん、COOの周さんは、一度IPOを経験しています。だからこそ、一度目のIPOのときの経験を踏まえて、人材の適切な新陳代謝の意義や、IPOのタイミングを適切に見極められることが重要だと思い、この設計にしました。
このあたりは、Nstockさんが積極的に問題提起をされていらっしゃっていて、彼らの発信も参考にさせて頂きました。
創業からずっと同じメンバーで事業を続けるには、現実的にはワークしない部分もあると思います。会社のそれぞれの成長フェーズで適した方がいらっしゃって、退職という選択をしたという人とも適切な関係を継続できるのが健全だと考えています。
—— 適切なメンバー・上場タイミングを見極めるための制度設計になっているということですね。従業員も経営陣もWin-Winになっていることがよくわかりました。ありがとうございました!
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