連載童話「タンポポの詩」その5「少年と少女」
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「タンポポの詩」その5
前回のあらすじ
たて琴を弾きながら、
透き通った美しい声で歌う少年の歌が聴きたいタンポポの私は。
街の噴水広場で歌う、少年の姿が見える場所で芽をだしました。
時は、春から夏へと移り。
タンポポの私は、
青々と葉を茂らせるまでに生長したのでした。
美しい声で歌う少年は、
今でも毎日のようにこの場所にやって来て歌っています。
しかし、
ほとんどの人が、
ただ少年の前を通り過ぎて行くだけだったのです・・・。
「タンポポの詩」その5「少年と少女」
少年が歌う、
噴水広場の前にパン屋がありました。
そのパン屋は、
母親と少女の２人きりの小さなパン屋です。
母親がパンを焼き、少女が店でパンを売ります。
少女は、キラキラと輝く美しい髪を、
頭の後ろでひとつにまとめている、とても可愛らしい女の子でした。
そして、とてもよく働き母親の仕事を助けていたのです。
そんな少女が、
時たま仕事の手を休めて、
広場をじっと見つめている事がありました。
少女の、その瞳の先には、
あの少年の姿があったのです・・・。
少年は、
何日かに一度、少女のパン屋にたちよりました。
そして少年は、
いつも決まって一番安いパンを少しだけ買ったのです。
ある日の事です。
少年が、いつものようにパンを買うと、
少女が、パンを１つ多く入れ物に入れてくれました。
すると少年は、
「あの、これ一つ多いです・・・」と、
気づいて返そうとしますが。
しかし少女は、
少年の顔を見ないようにして、うつむきかげんに
「いつも買ってくれるから、いいの」
と言うと。
走って店の奥へ行ってしまいました。
少年は、
少女の後姿に小さな声で
「ありがとう」
とひと言うと。
いつものように帰って行ったのです。
なぜ、タンポポの私が、
このことを知っているかと言うと。
パンの甘い匂いに誘われて、
パン屋の窓枠にとまっていたアゲハ蝶たちが、
その様子を見ていたのです。
そして、私の、花の蜜を吸いに来た時に、
少年と少女の、その時の話をしてくれたからなのです。
アゲハ蝶たちは、その時の２人はとても可愛らしかったと
、私に話してくれたのです。
その話を聞いて、私も、少年だけでなく、その少女の事も
とても微笑ましくて愛らしく思い好きになったのでした・・・。
連載童話「タンポポの詩」その6へつづく・・・。
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連載童話「タンポポの詩」その5 おわり
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2022.3.7 3.9加筆 3.22加筆
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