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【2022年度版】国会議員SNSメディア利用調査結果ー政治家のSNS利用は2017年→2022年でどう変化した?ー


今回は、国会議員SNSメディア利用度調査結果(2022年版)を行いました。

●調査概要

今回は、国会議員のインターネットメディアの利用動向を調査しました。
調査対象としたメディアは、(1)Twitter、(2)Facebook(個人ページ・ファンページ)、(3)Instagram、(4)YouTube、(5)公式LINE です。※(5)は2022年のみ集計


●集計対象とするインターネットメディア

(1)Twitter、(2)Facebook(個人ページ・ファンページ)、(3)Instagram、(4)YouTube、(5)公式LINE


●データの収集期間

メディア所有の有無:2022年12月
Twitter: 2022年11月13-16日時点、YouTube: 2022年11月11-16日時点、Facebook: 2022年11月17-20日時点、Instagram: 2022年11月17-19日時点、LINE: 2022年11月17日時点


●データの集計手順

1)国会議員リストを作成する
(2)政党の公式ウェブサイト、Wikipedia等から、各議員の生年月日、当選回数などを調査する
(3)政党の公式ウェブサイト、各議員の公式ホームページから各種SNSのアカウント(のURL)を取得する。
(4) Googleおよび各SNS内で議員個人名(例:河野太郎、河野 太郎、河野たろう、こうのたろう、Taro Kono)で検索し、漏れがあれば追加する

・データの収集方法は、個人アカウントの正誤確認が必要なため、自動化せず目視で一つ一つ確認した。また集計期間内であっても、集計期間前半に確認した議員が、集計期間後半になって新たに開設したインターネットメディアは集計から漏れてしまう。そういった限界もあるため、所有者数の最低の数値であることを了承いただきたい。また政党は、調査期間に存在していた政党である。



 

●全体のデータ:各プラットフォーム別(2017〜2022年)

上:所有数、下:所有率

まず、国会議員全体のTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeのアカウント所有数・所有率を、2017年と2022年で比較してみます。集計時点(2022年12月)で、国会議員全体で最もアカウントが所有されているメディアはFacebookであり、100%に近い議員(675人)が所持していました。その他の媒体では、Twitterは637人、Instagram 537人、YouTube 623人でした。

TikTokについては30程度確認できましたが、本人によるものか定かではない、有志による切り抜きのほうがフォロワー数が多いなどの理由から含めていません。

2017年度 国会議員インターネットメディアアカウント所有率データ出典先:(宮澤孟彰. SNS がもたらす政治コミュニケーションの変容可能性—議員インタビュー調査から—東京大学大学院 情報学環・学際情報学府, 2017.) ※2020年度 国会議員インターネットメディア利用率データ出典先:(中村佳美.なぜ政治家はSNSを使わざるを得ないのか—SNS活用動機の分析—慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科,2020.)をもとに筆者が作成

各メディアのアカウント所有率は、Facebook (95%), Twitter (90%), YouTube (88%), Instagram (74%)となっています。特に、Instagramは年々伸びてきています。

 米国と比較してみると、Twitter, YouTube, Facebookについては、日本はどれも100%に近い米国に迫っていますが、Instagramではまだ20%程度の差があります。

米国と日本の国会議員SNSアカウント所有率比較データ(2022年11月時点)

 

●国会議員SNS利用率:Twitterデータ(2022年11月時点)

男女別・年代別・当選回数・選挙区別・政党別・フォロワー別・投稿数別


国会議員のTwitterアカウント所有率を、男女別・年代別・当選回数・選挙区別・政党別に分けて見ると

·       所有率は女性議員のほうが高い

·       当選5回以上の議員の所有率は低い

·       政党別にみると、自民党以外は95〜100%になっている

ことなどがわかりました。

また、総ツイート数、フォロワー数について、同様に分けて見ると

·       女性議員のほうが数値が高い

·       当選回数を重ねるごとにフォロワー数は多くなっている

·       政党別にみると、れいわ新選組と共産党の所属議員のフォロワー数が多い

ことなどがわかりました。



●国会議員SNS利用率:YouTubeデータ(2022年11月時点)

男女別・年代別・当選回数・選挙区別・政党別

続いて、国会議員のYouTubeアカウント所有率を、男女別・年代別・当選回数・選挙区別・政党別に分けて見ると

·       所有率は、女性議員のほうが高い

·       参議院議員のほうが高い(特に比例代表のアカウントは活発である)

·       若手議員のアカウントのほうが、登録者数・視聴数ともに高くなっている

·       政党別にみると、れいわ新選組と公明党のアカウントがよく見られている

ことなどがわかりました。

上記の補足として、れいわ新選組は2020年7月にYouTubeのチャンネル登録者数がTwitterのフォロワー数を超えています。公明党もYouTubeのチャンネル登録者数をじわじわと伸ばし、2021年8月にTwitterのフォロワー数を超えました。参政党はYouTubeからスタートしています。


●国会議員SNS利用率:Instagramデータ(2022年11月時点)

男女別・年代別・当選回数・選挙区別・政党別


続いて、 国会議員のInstagramアカウント所有率を、男女別・年代別・当選回数・選挙区別・政党別に分けて見ると

·       女性議員のほうが投稿数・フォロワー数ともに多い

·       当選5回以上の議員の所有率は低い

·       政党別にみると、れいわ新選組と公明党所属議員のアカウントフォロワーが多い

ことなどがわかりました。

 

 

●国会議員SNS利用率:Facebook・LINEデータ(2022年11月時点)

男女別・年代別・当選回数・選挙区別・政党別


続いて、国会議員のFacebook,LINEアカウント所有率を、男女別・年代別・当選回数・選挙区別・政党別に分けて見ると

  • ·       女性議員のほうがFacebook投稿数・フォロワー数、LINE友だち登録者数ともに多い

    1. ·       LINE友だち登録者数は参議院議員・比例区選出議員が多い

    2. ·       当選5回以上の議員はFacebookフォロワー数が高くなる傾向に

    3. ·       政党別にみると、公明党所属議員のFacebookフォロワー数、LINE友だち登録者数が多い

    4. ことなどがわかりました。


 


●まとめ:政治家のYouTubeの活用が進む日本の未来


調査の結果について

今回は、国会議員のインターネットメディア利用率における全体の利用動向を調査しました。結果として、国会議員のSNS利用率は2017年に比べて全体的に高くなっていることが明らかになりました。

YouTubeの活用が進み、Facebookの利用が衰退へ

日本においては、政治(広報)におけるYouTubeの活用が進む一方、Facebookの活用が低調になった世界でも稀有な国でもあります。政治におけるYouTubeの活用が進んでいるのは、日本と台湾と韓国くらいであり、世界的に見ると、FacebookとTwitterが主流なツールとなっています。

以前別の調査において、74の主要国・地域の360政党について、公式SNS (YouTube, Twitter, Facebook, Instagram)のフォロワー数・チャンネル登録者数(の合計に占める割合)を調査したところ、世界比べて日本はYouTubeの活用が進んだ国であることが明らかに。

新しい政党ほどYouTubeを主戦場にしていく

今回のデータを政党別にまとめると、参政党とれいわ新選組はYouTubeを主戦場としていることがわかりました。(立花孝志氏のYouTubeチャンネルを公式とすれば)NHK党についても同様です。そして、YouTubeの活用が最も進んでいない立憲民主党は、トレンドから遅れていると言えるのかもしれません。

(補足)政党アカウントデータより

しかし、進んでいるのは政党の活用であり、議員の活用が全般的に進んだとは言えないでしょう。議員(候補者)によるYouTubeの活用は難しく、先の参院選でも、10%に満たないYouTuber候補者の視聴数が総視聴数の90%を占めていました。

(補足)国会議員アカウントデータより


Twitter政治家からYouTuber政治家の時代到来へ

現状、政治関係なくYouTubeは私たちの生活に欠かせない情報源としての社会的インフラになりました。そしてそこで活躍するユーチューバーにとっても、自由な表現の場として広がりを見せ、存在感を高める一つのプラットフォームとなっています。

また、彼らの影響力は、経済的な影響力を生み出し、評価される時代となりました。「YouTubeクリエイター」に企業がCMを依頼するバイラルマーケティングとして、芸能人よりも身近な著名人ということで親しみや好感度が増して、彼らがお勧めしたものは購買行動につながる部分もあります。YouTubeのおかげで発掘された多くの才能もあります。

そのジャンルの中で、政治家とYouTubeの発展についてはどうでしょうか。今年を振り返ると日本では、TwitterよりもYouTubeを制した者が当選に近づくくらいの影響力を持つようになりました。

数年前は、よくツイッター政治家がネット上で注目を浴び、言葉を武器にして、マスメディアが作り出すイメージの反抗や国民にメディアを介せずに直接メッセージを伝える一次情報としての役割を果たす目的を持った政治家が多かったでしょう。

しかし、この一年でユーチューバー政治家が誕生し、Twitterと違い、主にエンタテインメント性が高いコンテンツを武器にして、より幅広い層に向けて知名度を上げる、より身近な政治家として親近感を持ってもらうためや、情報発信を目的で使用している政治家が多くなっています。理由の一つとしては、組織票の弱体化による無党派層へのアプローチが進んでいると考えられます。

タレント性が高く問われるので、実際の向き不向きはありますが、政治家としての自身のブランディングをより作り上げ、コンテンツの面白さや熱を伝えるものとしては重要なツールの一つとなっているのです。


最後に:これからの選挙とSNS活用を考える

さて最後に、政治家のメディア活用やYouTubeやTikTokなど動画コンテンツが発達が進んだ際に、起きうる懸念や、わたしたちオーディエンス側ができることを考えてみましょう。

一つは、フェイクニュースや陰謀論に対する対策と検閲の強化が、今後ますます重要になっていきます。(当面の日本は欧米のようにはならないと考えるが)

アメリカの大統領選挙でもあったように、動画プラットフォームの利用が進むと、世界中にフェイクニュースやTwitterトレンドを利用したプロパガンダ等があふれ、過激な政党や政治家が台頭してきます。そして、フェイクニュースの手段は、日々巧妙化しています。AIの生成画像はもう本物と見分けがつかないレベルになっています。

そこに対して、メディアリテラシーの向上だけでなく、フェイクニュースの事例を紹介し、啓蒙が必要です。今後、特定の国家による世論の操作が増えてくると、選挙結果に影響しかねないものとなってきます。

先日の、アメリカ中間選挙を機に(イーロン・マスク氏によるポリシー改正や撤回により)Twitterの言論プラットフォームでは混乱が続き、ネット社会全体に揺らぎが生じています。そのような中においてわたしたち国民は、ネットの情報において複数の情報源に触れることが大切であり、信頼できるか冷静に見極めていくことが大事なのです。

パブリック機関や政治家のSNS活用が進むにつれて、元々関心のあった人は情報を多く得られるようになっていますが、必ずしも投票率を上げる要素になってはいません。

最近では、フォロワーや再生回数をどこまで伸ばすための活用は、個々それぞれであっても、一度過激なことをすれば、次はそれ以上のことをやらなくてはという負のループになり、再生回数だけに走る傾向も否めません。自らの責任や影響力を正しく理解した上で、自分が何か伝えたいメッセージがあるのかという軸を持った「視聴者とのコミュニケーション」を大切にする投稿方法をとっていくことが求められます。

私たち国民や政治家は、世論を動かすほどの影響力を持つSNSと真剣に向き合っていかなければならない時代に突入しています。選挙は政治家の就職活動ではありません。視聴者との距離の近さをうまく利用し、一方通行にならない信頼を築く投稿がこれからも必要なのです。

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