見出し画像

【architecture】道と敷地のあいだ

道路内には基本的には(一部例外あり)建築物を建築してはならない
日本の建築基準法での基本的なルールである
ゆえに道路と敷地のあいだには明確な線引きがされている


最近浅草の商店街である騒動が話題になっていた

40年以上前に区画整理によって立ち退きを余儀なくされた住民が当時の区長と口約束で区画整理が完了したら、この道路内に店舗を建てても良いと言われた
そして今では浅草の街並みを象徴するような店舗群が出来たのであるが、今になって道路内の建築だから壊せというのが行政の言い分のようである

イッタイワナイ論とイマサライウナ論も合わさってますます厄介な騒動である




浅草のホッピー通りは昼間からお酒を楽しむことのできる場所である

通り沿いに居酒屋が並んでいるのだが、どこのお店も道路にまで店を拡張して、冬場はビニールのテントで覆って暖をとれるようにしている

このような光景は日本全国で見られるのではないだろうか


私は神保町の古本屋街が好きで学生時代から毎日のように通っていた
神保町は国内はもとより世界的にも有名な本屋街である
ここにない本は無いと言われる程の蔵書量を誇っているらしい

基本的には靖国通り沿いの南側に道路を向くように建っているビルに本屋が並んでいる
これは本が日に焼けてしまうのを防ぐために北向きに店舗が並んでいると言われている

そんな神保町の古本屋街であるが広い歩道には本屋のワゴンが道路内に並べられている風景は神保町ならではの街並みと言える

お店に入る前からこのワゴンで品定めをしてお店に入るとそこには昭和にタイムスリップしたような独特の香りのする本だらけの空間が広がっている


私は昔懐かしい八百屋さんや魚屋さん、本屋さん、駄菓子屋さんなどの店構えがこれからの建築にはふさわしいのではないかと思っている

道にまで迫り出すように置かれた野菜に惹かれて入ると店主がいて、その奥には居間があってそこから居住空間に繋がっている
居間からはテレビの音や家族の話し声が聞こえて来る

街(道路)から居住空間へと緩やかに繋がっていく流れは昔ながらの日本の風景と言えるのではないだろうか

リモートワークや会社勤めではない働き方が増える昨今において働く場所と住まう場所の関係性が問われている

今までは会社という組織を介して社会と繋がることが多かったが、これからは一個人が社会との繋がりを求める時代になるのではないだろうか


noteで繋がりのある吉田裕枝さんは建築デザインなどの仕事をされているが、『窓18ギャラリー』という、ご自身の事務所の窓をギャラリーとして街に開放する取り組みをされている


以前から面白い試みと思っており、『窓18ギャラリー』について考えていた

ネット社会でSNSなどで繋がりをつくることが出来る時代ではあるが、やはり地域社会との繋がりは必要である

個人間でのビジネスが増えるようになると如何に個人をリアルな世界で開いていくかは、ネット社会に隠されてしまった大事なテーマだと思っている

その為には”道と敷地のあいだ”をいかにデザインするかが鍵となるのではないだろうか

人はで人と繋がっている
だから人々は道に椅子やテーブル、本などを置きたがるのかもしれない
私の息子は雨上がりに道路にできた水溜りで遊ぶのが大好きである
道路に白い石で落書きをした思い出は誰にでもあるのではないだろうか
中国などで見られる道を挟んだ両側の家から紐を繋いで洗濯物を乾す光景
道にテラス席を設けるヨーロッパの街並み

人は道を使いたがっているのかもしれない

道が居心地の良いものになれば、コミュニティはより居心地の良いものになるだろう


道の使い方を根本的に改める事が、人々の暮らしを大きく変える事になるかもしれない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?