マガジンのカバー画像

日々のエッセイ

215
2019年から湖畔暮らし。自然、ヤギ、トリ、仕事、考え事の日々。
運営しているクリエイター

2020年11月の記事一覧

一粒の蜜柑

一粒の蜜柑

うちには今、山のように蜜柑がある。

なんでそんなに蜜柑があるのか。実は、近隣にお住まいの方が自宅の庭で、たくさんの蜜柑を育てていて、先日みかん狩りをさせてくれたのだった。

「コンテナ持って、うちに来な?」

優しい表情で誘ってくれた。夫と私は喜んでお邪魔することにした。

蜜柑畑には、立派な蜜柑の木が何本も植わっていて、いつ見てもうっとりしてしまう。おまけにそこからは湖がよく見える、というプレ

もっとみる
見えない気持ち

見えない気持ち

最近ヤギたちの落ち着きがなく、メーメー鳴くことが多くなった。

ヤギはとても静かな生き物で、何かを求めているとき以外、基本的には鳴かない生き物だ。求めることはいろいろで、一番多いのは寂しいとき、空腹なとき、雨が降るとき。

特に寂しいときの鳴き声と言ったら、まるでお祭り騒ぎ。私がヤギ小屋を後にしようとすると、まるで「行かないで!置いてかないで」と言わんばかりに、声を出す。

傍にいくと鳴き止んで、

もっとみる
寄り添う星々

寄り添う星々

三日前からしし座流星群が見頃となっているらしい。

昨夜、暗い庭でやる作業があって、夫とともに外へ出ていた。ふと空を見上げると、そこには満点の星空が。なんて綺麗なんだろう。そう思っていると、夫が思い出したように言った。

「そういえば、ここ数日でしし座流星群が見えるらしいよ」

そうなんだ、と言ってしばらく二人で星を眺めることにした。もう11月だというのに夜の外でも暖かかった。コートも着なくてふら

もっとみる
干し柿の陰影

干し柿の陰影

うちにある3本の柿の木に、たくさんの柿が実った。

古民家へ移住してきた当初、それがまだ渋柿なのか甘柿なのか分からなく、食べてみたら甘い柿だったからとても嬉しく思った。植木に詳しいお隣さんによると、わざわざ敷地内に植えてあるということは、甘柿の可能席が大いにあるということだった。

この一年、柿の木のサイクルを毎日観察してきた。

5月には瑞々しく透き通った黄緑色の葉を付け、白とベージュを混ぜ合わ

もっとみる
それはいつも突然に

それはいつも突然に

最近畑では冬野菜を育てている。鍋に合いそうな葉野菜が多くて、春菊、小松菜、カブ、などがある。

実は冬野菜の隣には、まだ夏野菜が中途半端に残っていて、ナス、ピーマン、シシトウなどが気まぐれに実っている。もうとっくに夏は終わったけれど、それでも花を咲かせ収穫できるまで大きくなってくれるのはとても嬉しいことだ。

とは言えそろそろ本格的な冬がやってくるし、夏野菜がもう実ることはないかもしれない。ヤギた

もっとみる
寂しさへの特効薬

寂しさへの特効薬

旅先に選ぶ場所は、自然豊かな場所が多い。特に国内だと、綺麗な水辺を求めて旅の予定をたてる。

外国だと自然よりも食べ物を優先してしまう。例えばベトナムに行く目的は生麺のフォーを食べることであったし、台湾はベジタリアン用の小籠包、スリランカはスパイスカレー、韓国はキムチだった。食文化への興味が大きい。

話は日本に戻って、先日訪問した旅先にも美しい自然(特に清流)があって、とても好みの地域だった。と

もっとみる
小さな世界

小さな世界

先日、港町を旅したときのこと。

その町は、歴史的にも有名な詩人・金子みすゞが生まれ育った場所だった。金子みすゞと言えば、小学校や中学校の国語の教科書でお目にかかることも少なくない。私の通っていた小学校の教科書にはたしか「私と小鳥と鈴と」が掲載されていた。

町を歩いていると、あちらこちらに彼女の詩が書かれた彫刻や絵が飾られている。有名なものから、初めて見たものなどいろいろあった。

散策の日はあ

もっとみる
孤独感との伴走

孤独感との伴走

先日、二泊三日の一人旅をした。

自分から提案したわけではなく、夫に勧められてのことだった。ヤギが来て、世話が忙しくなって、なんだか余裕がなくなっている様子が伝わったらしく、ある日突然「旅行、いってきたら?」と言われた。

「一人旅なんて久しぶりだから寂しい」と思いつつ、少しだけヤギと距離を置きたくて、夫の言葉に甘え行かせてもらうことにした。

ヤギは可愛いけれど、言葉が通じるわけじゃないから、猛

もっとみる