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寂しさへの特効薬

旅先に選ぶ場所は、自然豊かな場所が多い。特に国内だと、綺麗な水辺を求めて旅の予定をたてる。

外国だと自然よりも食べ物を優先してしまう。例えばベトナムに行く目的は生麺のフォーを食べることであったし、台湾はベジタリアン用の小籠包、スリランカはスパイスカレー、韓国はキムチだった。食文化への興味が大きい。

話は日本に戻って、先日訪問した旅先にも美しい自然(特に清流)があって、とても好みの地域だった。とは言え、一人旅だっただけにどこか空虚な寂しさも覚えていた。

いつも一緒に旅をしているはずの夫がいない。今回は隣にいない。

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一人旅の寂しさを抱えていた時、一気にそんな気持ちを解消できたタイミングがあった。それが、とある鍾乳洞を訪問した時だった。

「すごい……すごい……すごすぎる」

鍾乳洞はこれまでに見たことがないくらい雄大な景観で、とことん圧倒された。

鍾乳洞入口付近を流れる美しい川、川を取り囲む森、木々を照らす太陽の光、ゴーゴーと流れ出る湧き水、真っ暗で神秘的な洞内、どうしたらこうなるのか全く意味が分からない形の岩々。

目の前に広がる大きな自然に「すごい」しか発せられなかった。

鍾乳洞が素晴らしすぎて独り言でブツブツ言っちゃった話を後から夫に告げると「一人だったからやばい人に思われたんじゃない?」と言われた。確かに少し頭がおかしい人に思われてしまったかもしれない。早朝に訪問したとはいえ、間違いなく数名の人とすれ違っていた。

そうこうしているうちに、鍾乳洞へ向かう時に感じていた「寂しさ」からは解放されていた。

信じられないくらいワクワクしたり、信じられないくらい感動すると、人は寂しさを忘れることができるのかもしれない。分かりやすく言えば「興奮」になるだろうか。

いつも自然には驚かされて、そのたびに神秘を感じ、とんでもなくワクワクする。そして一人でいることさえも忘れてしまう。外界と自分の境界線がパッと無くなったように錯覚する。

きっと人にはいろいろな興奮センサーが備わっている。センサーが発動すると寂しさや虚しさと言ったマイナスの思考が働く余裕はなくなり、とにかく対象に感動し、追求したくなるものだ。

私の場合それがたまたま「自然」であったわけで。もしかしたら父はそれがビールであって、全国津々浦々のビールを追求している時は、寂しさなどとは程遠い感情を抱いているのだろう(ビールを目の前にすると明らかにワクワクしている)。

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一人旅は基本的に気楽でいいものだけれども、時々寂しさが襲ってくるのも事実。

そういう時に寂しさを感じないよう工夫をするならば「興奮すること」がありそうな場所を選ぶといいと思う。

普通に生きている時でも、なんだかパッとせず掴みどころのない寂しさを抱いているならば、マイナスの感情を一気に吹っ飛ばせるくらいウキウキできるものにありつけると、あっという間に解決できるかもしれない。

ヲタクになるのはとてもいいことだ。


そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。