のもとしゅうへい

Poet・言葉の移動/本『いっせいになにかがはじまる予感だけがする』(2023)/執筆…

のもとしゅうへい

Poet・言葉の移動/本『いっせいになにかがはじまる予感だけがする』(2023)/執筆、イラストレーション、デザインなど/ご連絡shuunomo@gmail.com

マガジン

  • きんからきん日記たち

    金曜日から金曜日までの、1週間の日記をここに書いています。あまりがんばりません。2024年6月14日から。

  • エッセイ集『海のまちに暮らす』(2024年6月下旬、刊行)

    2022年に大学を休学し、真鶴町へ移り住んだ時の生活のことを書き残しているエッセイ集『海のまちに暮らす』。ここでは現在制作中の原稿を公開しています。2024年6月下旬に出版、発売予定です。

  • 週報『海のまちにくらす』(2022-2023)

    2022年春から大学を休学して東京を離れ、新しい土地で生活をしています。相模湾に面した小さな半島です。ここではじぶんは土地を通過していく観光的旅行者でも、しっかり根をおろした恒久的生活者でもなく、わずかに宙へ浮いたような位置にあります。 生活をしているといろいろなことを考えます。できごとも起こります。そのつど生まれる心象をスケッチのように書き留めておくことで、形あるものに置き換えておくことで、じぶん自身が今どのあたりにいるのかを立体的にわかってゆけるような気がしています。感じたことを書くだけなので、あまり努力もせず、その時書けることをただ書いています。不定期発行の週報のような連載です。

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    道ばたでみつけた草花の絵と短い言葉が記録されたイラスト集です。実物は120mm×120mmのCDサイズと呼ばれる判型で、手のひらで持つことのできる控えめなサイズの中綴じ本に仕上がりました。画用紙にも似たラフな紙に、草花をめぐる絵と言葉をおさめています。フルカラー24ページ。(2024年・セルフパブリッシング)
    ¥1,000
    のもとしゅうへい
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    どこかへ行けなくてもどこかへ行けるといい

    どこへも行けなくてもどこかへ行けるといい、と弱々しく願っていた2020年の秋に、小さな部屋で食器を洗いながら、衣服をたたみながら、いつも目に入っていたのは一枚の透明な窓だった。コロナ禍である2020年に制作された〈窓〉のドローイング作品群を、一冊のアートブックに編集しました。Google ストリートビューという架空の窓によってもたらされた移動の記憶を、色彩と線で再構成するアーカイブです。(2024年・セルフパブリッシング)
    ¥1,540
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    道ばたでみつけた草花の絵と短い言葉が記録されたイラスト集です。実物は120mm×120mmのCDサイズと呼ばれる判型で、手のひらで持つことのできる控えめなサイズの中綴じ本に仕上がりました。画用紙にも似たラフな紙に、草花をめぐる絵と言葉をおさめています。フルカラー24ページ。(2024年・セルフパブリッシング)
    ¥1,000
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    どこかへ行けなくてもどこかへ行けるといい

    どこへも行けなくてもどこかへ行けるといい、と弱々しく願っていた2020年の秋に、小さな部屋で食器を洗いながら、衣服をたたみながら、いつも目に入っていたのは一枚の透明な窓だった。コロナ禍である2020年に制作された〈窓〉のドローイング作品群を、一冊のアートブックに編集しました。Google ストリートビューという架空の窓によってもたらされた移動の記憶を、色彩と線で再構成するアーカイブです。(2024年・セルフパブリッシング)
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    ポストカード_Voyage sur la table

    画像のポストカード5種類(合計5枚)が入ったセットです。《卓上の旅》をあらわす題になぞらえて、生活空間を占める小道具や建造物などを絵の中へ収集していくライフワーク。ふとしたときに日常へ立ち上がる不思議な感情を、詩的な風景のように感じることがあります。
    ¥1,100
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最近の記事

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[profile] / 2024.08.

Biography / CV のもとしゅうへい / Shuhei Nomoto 詩人。1999年高知県生まれ。神奈川県在住。2022年より『ユリイカ』(青土社)や『現代詩手帖』(思潮社)に新人作品として詩が掲載され、2024年、芸術総合誌『ユリイカ』による現代詩の年間新人賞「ユリイカの新人」に選出される。同年4月より東京藝術大学大学院美術研究科修士課程に在籍。企画・執筆・編集・装幀までのすべてを個人で手がけるセルフパブリッシングの活動を続け、詩や小説をはじめとする文学に携わ

    • きんからきん日記 8/9から8/16

      8/10 2023年に撮りためていた28枚のフィルムを、思い立って近所のカメラ屋へ持っていった。これは、およそ一年前に撮影されたKodak社のフィルムだ。そこに記録された写真のなかには、何となく出来事や場所、人物や音や匂いと共に思い出せるものも含まれているが、大半がもはや記憶に残されていない、一つの前の夏の瞬間たちである。そして自分は恥ずかしながら、フィルムをちゃんと現像に出したことがない。それ以前に、フィルムカメラを使って写真を撮ったことがほとんどない。だからつまり、この

      • きんからきん日記 8/2から8/9

        8/4 朝起きて原稿を書く。最近は夜眠る前にアイスを食べることをやめ、その夜食べるはずだったアイスを、翌朝へ持ち越して食べるようになった。これはただ自分に我慢を強いているわけではなく、そのほうがなんとなく美味しいという真実に気がついたのだ。アイスは朝に食べたほうが美味しい。起き抜けのぼやけた頭とこの酷暑には実にありがたい冷たさだし、アイスを食べられる朝なら早く迎えてしまいたいという意識のせいか、目覚めてからの体の動きも素早い気がする。自分はこの朝の間に、いつでもアイスを食べ

        • きんからきん日記 7/26から8/2

          7/28 この日は図書館の最後の出勤日だった。大学を休学して真鶴へ移った2022年の春から働いていたので、ぜんぶで2年半ほどいたことになる。帰りに司書のUさんがプレゼント的なものをくれて、開けてみると中身は上品なボールペンだった。Uさんは20代の頃、ブックオフ系列の高価買取専門店でアルバイトをしていたらしく、高価な取引が生じる客商売の現場では、客へ差し出すボールペンの銘柄一つとっても重要だという訓示をいただいたのだという。のもとくんもこの先そういう大事な取引があるかもしれな

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        マガジン

        • きんからきん日記たち
          9本
        • エッセイ集『海のまちに暮らす』(2024年6月下旬、刊行)
          9本
        • 週報『海のまちにくらす』(2022-2023)
          35本
        • エッセイ『カタツムリと悪癖』初稿
          10本
        • 個人発行の出版物について
          5本
        • 詩集『南緯三十四度二十一分』
          9本

        記事

          きんからきん日記 7/19から7/26

          7/20 この日はブックマルシェの出店日だったので、イノシシくらいの大きさのキャリーケースを引いて、下北沢へ向かう。中には本がぎっしり詰まっている。バスに乗り込む時に入り口の段差を越えるのも一苦労で、側面の取手と上部の取手を両手でつかんで一気に持ち上げるのだが、本当に取手だけすぽんとちぎれそうなくらい重たい。キャリーケースを引いていると、普段は気にかけないような微妙な段差やちょっとした階段の存在が大きな障害として自分の移動に立ちはだかる。特に渋谷駅で乗り換える時は大変だった

          きんからきん日記 7/19から7/26

          きんからきん日記 7/12から7/19

          7/13 Iと岩海岸へ向かう途中、右手の小道を灰色の猫が横切ったので、ついていく。両脇を花のあふれた民家に挟まれながら急な坂を下るのだが、猫は見当たらず、下まで降りるとそこは古びたコンクリートの建物だった。横浜国立大学臨海環境センターと書いてある。たぶん何かしら海の研究をするための施設なのだと思う。前方は緑色のフェンスに阻まれていて、この道からは海岸へ降りられないらしい。もう一度来た道を上って引き返す。7月ともなると、岩海岸には子どもが増え、沖合には見たこともない大型の遊具

          きんからきん日記 7/12から7/19

          きんからきん日記 7/5から7/12

          7/8 その日は昼過ぎにオンライン打ち合わせの予定が入っていたので、上野から自宅へ帰る途中に横浜駅で途中下車することになった。わざわざ横浜駅で降りたのには理由がある。横浜駅に連結された商業施設の並んだ通りの、カメラ屋にフィルムを買いに行くのだ。 ちょうど1年前に、映画を撮っている友人にもらったフィルムカメラは、一台に4つぶんのレンズ穴が開いた可愛らしいおもちゃのような代物で、当初セットしたフィルムの上限は24枚だった。それをちょうど使い果たしたため、新しいものを一つ選ぶ。

          きんからきん日記 7/5から7/12

          きんからきん日記 6/28から7/5

          大学の帰りに神田で乗り換え、吉祥寺で降りる。今週はまた一段と湿度が高く、けっこう嫌な気持ちのする暑さだから、身体に熱がこもって変な汗をかく。黒い文字で吉祥寺駅、と書かれた高架のある交差点で信号を待っていると、七階建てのユニクロから太い冷気が町中へ漏れ出ていた。この時間の吉祥寺は、歩いている人がほとんど笑っているように見える。 改札へ向かう途中、バス通り前で何かを配っている自分と同じ歳くらいの女の人がいた。その人は少し恥ずかしそうに声高に何かの宣伝をしながら、透明なフィルムに

          きんからきん日記 6/28から7/5

          きんからきん日記 6/21から6/28

           畑のソヤさんから自家製パンをもらう。これはゼッポリーニというイタリア式のプチ揚げパンを、自宅のパン焼き器で再現したものらしく、見た目は食パンに近いのだが、小山のように膨らんだ生地に鼻を近づけると、潮風にも似た香ばしい匂いがするのだった。ソヤさん曰く、焼き上げてからオリーブオイルに付けるのが最もおいしい食べ方だという。家へ帰ってキッチンに立つ。普通の三徳包丁でやわらかなパンを切り分けようとしてみると、手応えが曖昧で、断面がぎこちなくなってしまった。こういう時のためにギザギザの

          きんからきん日記 6/21から6/28

          きんからきん日記 6/14から6/21

          6/14から)  14日から個展がはじまって、会期の初日は金曜日だったので、果たしてどのくらい人が来てくれるのだろうかと考えながら3号店に向かった。ギャラリーに在廊してお客さんと会話をするのは、以前からそれほど得意ではない。人前に立つことには慣れないままだ。でもたぶん、展示を観に来てくれた方と話をするのはうれしい。得意ではないがうれしいこと、上手くできないが大切だと感じることを、今年はなるべく避けずにやってみようと思う。 ・  20日の夕方にInstagramをみると、

          きんからきん日記 6/14から6/21

          『海のまちに暮らす』 その9 箱根一人旅

           箱根の仙石原に湿原の植物がみられる園のようなものがあり、行ってみることにした。箱根湿生花園というところだ。この日は丸一日予定がなかった。  目覚めて少し仕事をしたあと、洗濯物を干し、軒先のプランターに水をやる。電子レンジに凍った炊き込みご飯の包みを入れ、二分間温めて朝食をとる。それから荷物をリュックサックにまとめた。これはずいぶん前に無印良品で買ったものだが、今ではもうところどころブラックが褪せて赤みが出てきている。それでもまだしばらくは丈夫に使えそうなので、こういうラフ

          『海のまちに暮らす』 その9 箱根一人旅

          『海のまちに暮らす』 その8 ねこ先輩

           ねこ先輩に会ったのは春の午後だった。真鶴出版の二階で布団を干していたら、隣家の屋根の上に小さな獣が寝そべっているのがみえた。はたしてそれがねこ先輩だった。  ねこ先輩はトタン屋根の上に全身を伸ばして横たわっていた。体の表面積をなるべく広げるようにして、少しでも多く太陽の光を受け止めようとしているみたいに平べったく溶けかかっていた。ふくよかな白饅頭が勢い良く叩きつけられたら、あのような形になりそうだなと思う。  がらがらと音を立てて二階の障子窓を開ける。ねこ先輩は顔だけを

          『海のまちに暮らす』 その8 ねこ先輩

          『海のまちに暮らす』 その7 港を歩く

           来る夏を迎え撃つためにエアコンを設置することにした。作業が済んだのは午前十一時、スマートフォンの天気予報アプリは二十二度の最高気温を示している。外はさわやかな陽気で、寝室から覗く海はきらびやかな点滅を繰り返していた。  これまでは海と対面するために、わざわざ朝から電車に乗ったり、それなりの距離を移動しなければならなかった。しかしここに住みはじめてからは、わりと簡単に海を覗きにいくことができる。ちょっと思い立てば青い水平線を拝むことができてしまう。それはこの町へ来て与えられ

          『海のまちに暮らす』 その7 港を歩く

          『海のまちに暮らす』 その6 畑をはじめる

           目覚めると顔を洗い、風通しの良い服に着替える。つばの広い帽子と長靴、軍手、麻紐。玄関を開け、背の低い自転車の荷台にそれらを放り込む。これから畑に向かうのである。五時半。そのまま勢いをつけて坂を下り、駅前を過ぎて、まだ一面に青い道路を海側へ滑りながら背戸道へ入る。  真鶴出版の裏戸口に音を立てずに自転車を停め、細い路地の先へ抜ければ、一段高くなった三角地に出る。開けた頭上には丸みのある雲が浮かび、周囲の住宅を抜けてきた風が土と若草の匂いをかき混ぜていく。  この小さな共同

          『海のまちに暮らす』 その6 畑をはじめる

          コミティア148に参加します

           タイトルの通りのお知らせなのですが、5/26(日)に開催されるコミティア148にサークルで参加します。コミティアのことを知ったのはとても最近です。  今年の1月に雑誌『ユリイカ』(特集=panpanya)を読んでいて、panpanyaさんがデビュー前に手製本の冊子をコミティアで売られていたという記事を目にしました。その後インターネットでコミティアのことを調べて、コミケや文学フリマ等のいくつかの即売会が定期的に開催されていることを知ります。これまでそのような会場へ足を運んだこ

          コミティア148に参加します

          『海のまちに暮らす』 その5 掃除をする

           海上を移動する雲の様子がなんとなく湿っぽいので、洗濯物は干さないことにした。こういう時の勘はよく当たる。昼食を食べに出る前にひとまず掃除機をかける。  掃除機の順路はアトリエとして使っている作業部屋から始まり、次いで寝室、それから台所、浴室、玄関となる。作業部屋は床板の色が暗いため汚れが目立たないが、ここでは絵を描いたり紙を切ったりと細かい作業を行うので、なるべくこまめに掃除をする。  ついでに机の上も片付ける。知り合いにはアトリエがごった返していても一向に平気、という

          『海のまちに暮らす』 その5 掃除をする