『海のまちに暮らす』 その2 19歳と東京と生活の記憶
真鶴に来て、東京のことをより多く考えるようになった。不思議なことに東京で暮らすあいだはほとんど東京のことを考えなかった。東京がどんな町であるかということの前に、自分はもう東京という場所に含まれていて不可分で、忙しくやらなければならないことや出来事が数多くあった。自分が今どのような町に住んでいるのかという問題はあまり重要でないように思えたし、誰もそんなことを訊ねなかった。それよりも誰とどんなことをしたか、その時何を言っていたかという瞬間的な情報が鮮やかな価値を持っていたような