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卑弥呼伝 by Dr.Shu

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#物語

卑弥呼伝第十六章

卑弥呼伝第十六章

【闇の世界の神フクロウ】*1575 文字

その年は、異様に野ねずみが増えておりました。

「なに!それほどに野ねずみが増えたか!」

「はは! 我らの大切な食料の米を、貪り尽くしております。サツマイモも、ニンジンも、はや底を突きかけておりまする」

「そうか、もっと詳しく話を聞かねばならぬ。そうじゃ、大人(たいじん)のカムロを呼ぶがよい」

「はは!」

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卑弥呼伝 第十四章

卑弥呼伝 第十四章

【ヌシの無益な殺生】*953文字

ドアを叩く音

「卑弥呼様、南方でまた、ヌシという大人(たいじん)が下戸(げこ)めを始末いたしました」

「なんだと、よい、ヌシをここに呼ぶがよい」

「卑弥呼どの、ヌシにございまする」

「おぉ、いつもいつも、熱心に仕事をしてくれるな」

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卑弥呼伝 第十三章

卑弥呼伝 第十三章

【カムトの進言】*984 文字

卑弥呼は熱病に罹っておりました。

「イキミよ、なにやら熱が下がらぬ。カムトを呼んでくれないか」

「承知いたしました」

「これカムト、卑弥呼様の熱が下がらぬ。

我ら医師はあらゆる方法を試みたが、何としても熱が下がらぬのじゃ。

そちは医術に通じ、霊能力にも通じておる。

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卑弥呼伝   第十二章

卑弥呼伝   第十二章

【龍蛇族の誇り】 *1196 文字

ドアを叩く音

「大変でございまする! 卑弥呼様!」

「どうしたのじゃ」

「かの狗奴国めが、またまた生口(せいこう)を送ってまいりました」

「何人送ってきたのじゃ」

「それが十名という、いまだかつてない人数でございます」

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卑弥呼伝  第十一章

卑弥呼伝  第十一章

【音による攻撃】*705 文字

ドアを叩く音

「誰じゃ」

「卑弥呼様、いよいよ、魏の使者のおもてなしをしなければなりませぬ」

「そうじゃな、タケミコ」

「卑弥呼様、これにつきまして、どのようにおもてなしをすればよいか、

指針を与えていただきとうございまする」

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卑弥呼伝 第十章

卑弥呼伝 第十章

【眼に見えぬ敵】*1187 文字

戸を激しく叩く音

「卑弥呼様、お開けくだされ!」

「どうした、こんな夜遅くに」

「ははあ! 今しがた見張り番のものが申すには、

見たこともない、他国の軍勢がこの邪馬台国に押し寄せて参ったと」

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卑弥呼伝  第九章

卑弥呼伝  第九章

【卑弥呼の笛】*405 文字

卑弥呼は、殊の外、笛がお好きでございました。

満月に向かって、鹿角で出来た笛をお吹きになるのが、

お気に入りでございました。

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卑弥呼伝 第七章

卑弥呼伝 第七章

【過去を癒すものたち】*1858 文字

卑弥呼が力を入れておりましたことのひとつに、教育というものがございました。

「これ、オドよ、ここへ参れ」

「ははあ!」

「どうじゃ、そなたに人を教えるという重責を担わせたが、ことは順調に運んでおるかえ?」

「卑弥呼様、ただいまその義につきまして、大いに悩んでおりまする」

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卑弥呼伝 第六章

卑弥呼伝 第六章

【迫りくる火】*1983 文字

さて、豪族を束ね、女官たちを束ね、人の上に立ちて七年。

やっと人心の安定を見た卑弥呼でありました。

さてもさても、その年は、大変な不作の年でございました。

幸い卑弥呼は、備蓄というものを奨励しておりましたので、邪馬台国の中では、比較的食べるものには困らぬ様子でございました。

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卑弥呼伝 第五章

卑弥呼伝 第五章

【鬼道ー祈りびとの思い】*1358 文字

「タケミコ、鬼道をはじめる。私の道具をここへ」

「ははあ」

「きょうは、どのような卦が出まするか」

「そうだな、では参るぞ」

卑弥呼は、やおら鹿の肩甲骨を取り出し、それを小さな斧で五角形に型取りました。

「ところで卑弥呼様、何ゆえに鹿の肩甲骨を用いるのでございましょう」

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卑弥呼伝   第四章

卑弥呼伝   第四章

【女官たちの反乱】*760 文字

「卑弥呼様」

「女官達より、卑弥呼様よりも霊力が上だと申すものがおります」

「そうか」

「この上は卑弥呼様、そのものより卑弥呼様がはるかに上回るという印を、是非ともお示しくだされ」

「わかった、わらわの前にその者を呼んでたもれ、ここへ引き連れよ」

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卑弥呼伝   第三章

卑弥呼伝   第三章

【タケミコの迷い】*1350 文字

さて、卑弥呼のもとには、タケミコと申す、歳は若いが決断力に富み、実行力のある武将がおりました。

「卑弥呼様 只今より戦いに出かけまする」

「おお、早朝より大儀じゃのう。きょうは霧が殊の外深い」

「はい」

「霧は双方を遮る、心の迷いじゃなあ」

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卑弥呼伝   第二章

卑弥呼伝   第二章

【帝王としての資質】*1600 文字

さて、徐々に帝王としての資質を現しはじめた卑弥呼でございました。

必要なことは、誰かから学んだというよりも、ひたすら天之御中主神に祈りを捧げているうちに、自然と卑弥呼の脳髄に浮かんできたものを頼りとし、

一つ浮かんでは一つ試し、そしてまた修正しながら、一歩ずつ一歩ずつ統治の資質を現してまいりました。

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卑弥呼伝   第一章

卑弥呼伝   第一章

【龍の試練】
*1951 文字

「私に、この倭国大乱を鎮める役があると...

しかしこの私には、学も無くなんの力もない

果たしてこの私に、大和三十ヶ国を治めることができるであろうか」

そこへ村人たちが集まり、少し変わり者の卑弥呼に言葉をかけます。

「よう、お前、神の子だっていうじゃないか、証拠を見せろよ!」

「そうだ、そうだ!」

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