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卑弥呼伝 by Dr.Shu

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記事一覧

卑弥呼伝第十八章

卑弥呼伝第十八章

【新しき世のはじまり】

*1425 文字

「これ、ここへトヨを呼ぶがよいぞ」

「はは」

「おお、トヨよ、今宵は大切な話があってな。この卑弥呼も年老いたと思う」

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卑弥呼伝第十七章

卑弥呼伝第十七章

【卑弥呼の巫女養成ものがたり】
*1069文字

卑弥呼は、時を失うことが最も愚かだと、教えていました。

時の記憶をな無くせば、予言は成り立たないと、卑弥呼は常々巫女たちにこう語っていました。

いい? 暦を描くのよ。過去の歴史をできるだけたくさん覚えて、私の霊能力はそこからくる。

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卑弥呼伝第十六章

卑弥呼伝第十六章

【闇の世界の神フクロウ】*1575 文字

その年は、異様に野ねずみが増えておりました。

「なに!それほどに野ねずみが増えたか!」

「はは! 我らの大切な食料の米を、貪り尽くしております。サツマイモも、ニンジンも、はや底を突きかけておりまする」

「そうか、もっと詳しく話を聞かねばならぬ。そうじゃ、大人(たいじん)のカムロを呼ぶがよい」

「はは!」

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卑弥呼伝  第十五章

卑弥呼伝  第十五章

【トヨの野焼き】*925文字

その頃、邪馬台国では、日照りが続いておりました。

「卑弥呼様」

「わかっておる。こう日照りが続いては、民の苦しみがヒシヒシと伝わってくる。トヨ、良い知恵はあるか?」

「はは、しばらく考えてみまする」

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卑弥呼伝 第十四章

卑弥呼伝 第十四章

【ヌシの無益な殺生】*953文字

ドアを叩く音

「卑弥呼様、南方でまた、ヌシという大人(たいじん)が下戸(げこ)めを始末いたしました」

「なんだと、よい、ヌシをここに呼ぶがよい」

「卑弥呼どの、ヌシにございまする」

「おぉ、いつもいつも、熱心に仕事をしてくれるな」

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卑弥呼伝 第十三章

卑弥呼伝 第十三章

【カムトの進言】*984 文字

卑弥呼は熱病に罹っておりました。

「イキミよ、なにやら熱が下がらぬ。カムトを呼んでくれないか」

「承知いたしました」

「これカムト、卑弥呼様の熱が下がらぬ。

我ら医師はあらゆる方法を試みたが、何としても熱が下がらぬのじゃ。

そちは医術に通じ、霊能力にも通じておる。

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卑弥呼伝   第十二章

卑弥呼伝   第十二章

【龍蛇族の誇り】 *1196 文字

ドアを叩く音

「大変でございまする! 卑弥呼様!」

「どうしたのじゃ」

「かの狗奴国めが、またまた生口(せいこう)を送ってまいりました」

「何人送ってきたのじゃ」

「それが十名という、いまだかつてない人数でございます」

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卑弥呼伝  第十一章

卑弥呼伝  第十一章

【音による攻撃】*705 文字

ドアを叩く音

「誰じゃ」

「卑弥呼様、いよいよ、魏の使者のおもてなしをしなければなりませぬ」

「そうじゃな、タケミコ」

「卑弥呼様、これにつきまして、どのようにおもてなしをすればよいか、

指針を与えていただきとうございまする」

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卑弥呼伝 第十章

卑弥呼伝 第十章

【眼に見えぬ敵】*1187 文字

戸を激しく叩く音

「卑弥呼様、お開けくだされ!」

「どうした、こんな夜遅くに」

「ははあ! 今しがた見張り番のものが申すには、

見たこともない、他国の軍勢がこの邪馬台国に押し寄せて参ったと」

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卑弥呼伝  第九章

卑弥呼伝  第九章

【卑弥呼の笛】*405 文字

卑弥呼は、殊の外、笛がお好きでございました。

満月に向かって、鹿角で出来た笛をお吹きになるのが、

お気に入りでございました。

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卑弥呼伝   第八章

卑弥呼伝   第八章

【統率者シテ】*612 文字

「卑弥呼様、このたび、部族長のシテが大きな手柄を立てましてございまする」

「そうか、どんなことじゃ」

「はは! 部族長のシテは、このたびシャチに襲われた少年を助け、さらにこのシャチを追い戦って勝ちましてございまする。何卒このシテにご褒美を」

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卑弥呼伝 第七章

卑弥呼伝 第七章

【過去を癒すものたち】*1858 文字

卑弥呼が力を入れておりましたことのひとつに、教育というものがございました。

「これ、オドよ、ここへ参れ」

「ははあ!」

「どうじゃ、そなたに人を教えるという重責を担わせたが、ことは順調に運んでおるかえ?」

「卑弥呼様、ただいまその義につきまして、大いに悩んでおりまする」

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卑弥呼伝 第六章

卑弥呼伝 第六章

【迫りくる火】*1983 文字

さて、豪族を束ね、女官たちを束ね、人の上に立ちて七年。

やっと人心の安定を見た卑弥呼でありました。

さてもさても、その年は、大変な不作の年でございました。

幸い卑弥呼は、備蓄というものを奨励しておりましたので、邪馬台国の中では、比較的食べるものには困らぬ様子でございました。

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卑弥呼伝 第五章

卑弥呼伝 第五章

【鬼道ー祈りびとの思い】*1358 文字

「タケミコ、鬼道をはじめる。私の道具をここへ」

「ははあ」

「きょうは、どのような卦が出まするか」

「そうだな、では参るぞ」

卑弥呼は、やおら鹿の肩甲骨を取り出し、それを小さな斧で五角形に型取りました。

「ところで卑弥呼様、何ゆえに鹿の肩甲骨を用いるのでございましょう」

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