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「保健室経由、かねやま本館。」シリーズが子どもたちに大人気の松素めぐり先生にインタビュー(1)

 子どもたちに大人気の「保健室経由、かねやま本館。」シリーズ。

作:松素めぐり/イラスト:おとないちあき 

 いろいろな悩みを抱えてちょっと疲れた中学生たちが、第二保健室で出会った怪しいオバサン、銀山先生に導かれて向かった先は、美しい小夜子さんと明るいキヨが営む中学生専門の湯治場「かねやま本館」。

 そこで、いろいろな人と出会い、交流する中で、中学生たちが自分自身の悩みに向き合っていく心温まる物語です。

 5月25日には新しい展開を迎える、第6巻が出版されました。

物語のワクワク感を引き出す表紙にも要注目です!

 子どものころは、「絵を描くことと、作文と、人を笑わせることだけがとにかく好きで、漫画家か、小説家か、お笑い芸人になりたいと思っていました」と話す、シリーズの作者である松素めぐり先生は、子どものころからの夢をかなえ、作家になりました。

 そんな先生の子ども時代や、夢をかなえるまで、そして物語をどうやって書くかや、作品への思いなど、「少年写真ニュース」5月28日号の取材でたっぷりと伺いました。3回に分けて掲載いたします。

 1回目となる今回は、松素めぐり先生が作家になるまでのお話をお届けいたします。

【第1回】作家になるまでの道のり


─松素めぐり先生の小学生時代について教えてください。

「小学生の時は勉強がまったくできなかったんですけれども、絵を描くことと、作文と、人を笑わせることだけがとにかく好きで、漫画家か、小説家か、お笑い芸人になりたいと思っていました。自作の漫画や小説を勝手に学級文庫に置いたり、お笑いのネタ見せを企画したりと、あたたかい先生やクラスメイトのおかげで、ノリノリで楽しみまくった小学生時代でした」

─ノリノリの小学生時代から、中学生になると、作品(第1巻)でサーマが経験するような、しんどい体験をすることに。

「私立の小学校から公立の中学校に進学したので、知り合いが一人もいない中学校に通うことになりました。小学校のノリのままでいたのですが、調子に乗りすぎていたのかもしれません。なかなかうまくいかないことばかりで。しんどかったですね」

─そんな時はどうしたのですか?

「たくさんの小説を読みました。『私だけじゃなくて、みんないろいろ悩んでいるんだ』って気づくことができて、『一人じゃない』と励まされました。中3にもなると、自分も周りも成長して、おだやかに毎日を過ごせるようになりました。そこに至るまでに本当にたくさんの本に支えられました」

─先生は美術大学で絵の勉強をされていますが、進路を決めたのは高校生の時ですか?

「高校に入ってから、画家になりたいという気持ちが強まりました。ある日、祖母と美術館に行った際に、祖母が、ある画家の絵を見て泣いたんです。子どものころに見た星空が、その絵にまったく同じように再現されているって。その時に、絵って、人の思い出の中にあっても写真には残せないものを再現できるツールなんだなって思って。人の思い出の昇華に寄り添えるような絵を描きたいという思いが生まれました。絶対に合格したかったので、放課後は毎日ひたすら石膏デッサンをして、美大受験専門の予備校にも通って、英語や国語の勉強にも力を入れました」

─そして念願の美術大学へ。ですが、新卒で就職したのは、美術系ではない会社だったんですよね?

「大学2年生までは、画家になるという夢をしっかり持っていたのですが、本格的に勉強するうちに自分の作品に意味を見いだせなくなってしまいました。なんとなくいい絵は描けても、人の心を揺さぶるような絵は、その時の私には描けなくて」

─どう解決したのですか?

「尊敬する油絵の先生から、『いつかは画家になるにせよ、まずは社会経験を積みなさい』と言われました。『悩んで成長して、いつかその経験を糧に、納得できる絵を描けるようになればいいじゃない。私もこの歳(当時84歳)になったからこそ、描けるものがあるの。あなたが何を選ぼうと応援する』って。そこで美術系にこだわらず、就職活動をしました」

─社会人になってから、どのような経緯で作家になったのですか?

「新卒採用された会社では、人事部に配属されました。そこで書いていた新卒採用向けのブログがほめられて、学生さんにも好評だったんです。文章を書くのが好きだなあと改めて思って、趣味で小説を書くようになりました。内容は、社会人経験を生かしながらのお仕事小説。自分の理想をぶつけて、サクセスストーリーを書いていました。ただ、毎日の仕事でいっぱいいっぱいだったので、小説家になるなんて夢のまた夢、さすがに無理だろうなって諦めていました」

─その後、ご結婚され、お子様も誕生し、転職されます。

「パートやアルバイトで、いろいろな仕事を経験し、自分の知らなかった世界を知ったり、出会う人たちがとてもおもしろかったりしたんです。そんな毎日の出来事を日記に書くのが趣味でした」

─まさに第2巻のアツみたいに?

「そうですね。アツは日記ではなく『ネタ帳』でしたが、私の日記にも、そういう要素があったと思います」

─そして作家になりたいという気持ちが強くなる出来事が。

「子どもたちに毎晩読み聞かせをしていたのですが、いっしょになって絵本を読んでいると童話を書きたい気持ちがムクムクとわいてきました。ある日、『物語の続きを知りたい』と言われて、アドリブで作ってみたんです。『お話を作るのってこんなに楽しんだ、私はこれが好きだったんだ!』と」

─子どもの時の気持ちを思い出したのでしょうか?

「人生の中で苦しい時、悩みの中にいる時も、本を読んで物語や登場人物たちから力をもらっていました。『この本がなかったら今の自分はいない』という本がいくつもあります。読み手として作者と対話するような気持ちで読んでいたので、自分も書き手になってみたいと思うようになりました」

─作家になることを夢見て、どんなことをしましたか?

「毎日たくさんの本を読みました。見よう見まねで書いてみて、書けたら新人賞に応募!」

─作家になることを意識して作品を書き始めたんですね。

「最初は絵本のテキストを書いて応募していましたが、やっぱり長編が書きたくて、毎日、夜中に作品を書いては応募。落ちたら悔し泣きをして」

─そして、やっと念願のデビュー!

「そこから3年。この『保健室経由、かねやま本館。』で第60回講談社児童文学新人賞を受賞して、デビューできました」■

(第2回「『保健室経由、かねやま本館。』への思い」へ続きます)

(聞き手:少年写真ニュース編集部)


松素めぐり(まつもとめぐり)

1985年生まれ。東京都出身。多摩美術大学美術学部絵画学科卒業。『保健室経由、かねやま本館。』で第60回講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。同シリーズ1〜3巻で第50回児童文芸新人賞を受賞(シリーズは現在第6巻まで刊行中、この冬に第7巻刊行予定)。アンソロジー短編集『1話10分 謎解きホームルーム』(新星出版社)第4、5巻にも作品が収録されている。そのほかの作品に『おはなしサイエンス 宇宙の未来 パパが宇宙へ行くなんて!』(講談社)がある。


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