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夕空しづく/詩人・小説家
2024年5月6日 16:05
「明日さ」「うん」「デートしよう」「いいよ どこで?」「きみがいれば どこでも」「そういうことじゃないでしょう」「ごめん」………「もう夜になるね 夕ごはん どうしようか」「わたし なにかつくるよ なにがいい?」「きみがつくるものなら なんでも」「それが いちばん困るんだって」「ごめん」………「ねえ」「うん」「明日 どうしようか」「
2023年12月31日 11:39
年末、というのはどうしてこんなにも、人生を直視せざるを得ないんだろう。あの頃のわたしが生きていた部屋で、ひとり呆然と、時計を眺めている。人間がつくりだした概念の手のひらで、私たちは否応なく、「来年」というものに向かわされている。小説家になりたかった。小説家になれなかったら、私の人生に意味などないと思っていた。書いて書いて書いて書いて、40分に一本しかない電車を待って、
2023年4月16日 12:32
桜の花びらが美しいのは、神様が破り捨てた恋文の破片だかららしい。数多の恋で星は汚れて、清掃業者は日々過労。恋を失ったような顔で、恋に恋して恋い焦がれる、少女たちの向かう地獄。花が咲き乱れる地獄。「愛してる」のエネルギーで自転は起こる、と唱えた研究者が死んだ。遺書の代わりに残されていたのは、未投函のままの恋文だった。相手は10年も前に、別の男と愛し合い、一人で死んでいた。「尚、愛して
2023年3月24日 23:36
東京へ逃げたい、と一度でも思ったことがある人とは、深い関係になれると信じている。行きたい、ではない。逃げたい。正確に言語化するなら、「ここではないどこかで救われたい」。家出しても、行き場所なんてどこにもなかった頃。ネカフェは徒歩圏内にはなくて、コンビニすら遠くて、泊めてくれる人もいなくて。街灯のない夜道を、涙を流すのも忘れて徘徊していた頃。私は東京に行きたかった。ほんとうに行きたかった