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【番外篇】(その2)いい加減な発音「表記」で子どもの国語教育が危機!?

司法書士・行政書士の佐川です。
今回は、前回の「番外篇」の続きです。

「文語体」の発音の仕方がおかしい、ということでつらつら書いてきました。歴史的仮名遣いは、現代仮名遣いに慣れ切ったわたしたちからみると難しいの一言です。
大人でもわからない点が多々あるわけですから、子供たちはますますわからなくて当然です。
だからこそ、丁寧にかつ真摯に、読み方を教示してもらいたかった(暗誦・朗誦文化の復活を唱えるわけですから一層のこと)のですが、そこがあやふやであった本、それが『声に出して読みたい日本語』だったわけです。

ちなみに、その正反対に位置している本が
『光村の国語 わかる,伝わる,古典のこころ②
 短歌・俳句・近代詩・漢詩を楽しむ 18のアイディア』
(監修 工藤直子・髙木まさき 編集 青山由紀 小瀬村良美 岸田薫 2009年1月13日 第1刷発行 光村教育図書)です、実に素晴らしいです。
(別にわたしは光村教育図書の”回し者”ではありません)

筑波大学附属小学校や神奈川県の市立小学校の先生が編集をされていらっしゃるみたいですが、やはり現場の先生の生の声が反映されている本は違いますね。

前回指摘した箇所である
 「行きかふ年もまた旅人なり」には
 「ユキコートシ モ マタ タビビトナリ」と、
 「老いを迎ふる者は」には
 「オイヲ ムコール モノハ」と、
きちんと小学生に指導できるよう(先生が迷わないよう)にルビが振ってあります(権利の関係上、内容を写真等でご紹介できないのが残念です)。採録されているそのほかの文語体の名文も、どのように読んだらよいかわかりやすくルビを振って教えてくれています。
『声に出して読みたい日本語』とは違って、良書であります。


一方、『声に出して読みたい日本語』と同レベルが『声に出して楽しんで読もう 6年生』(監修 青山学院大学教授 小森茂 2006年3月31日 4刷発行 学習研究社)です。同じく「おくのほそ道」冒頭、おなじみの箇所は

行かう年もまた旅人なり」
「老をむかうる物は」

と、しっかり『声に出して読みたい日本語』を”踏襲”しています。楽しんで読めないため、もう少し考えて内容を構成しなければならない本です。

齋藤先生が編著の『(子ども版)声に出して読みたい日本語6』(2011年9月20日 第6刷発行)も相変わらず、です。
「行きかふ年も又旅人也」を
ゆきかうとしも また たびびとなり」
と、言わずもがなですね。しかもはっきり(子ども版)と掲げているところに余計に残念さを感じてしまいます。


これまで『おくのほそ道』の冒頭ばかり焦点を当ててきましたが、別の言葉
ではどうしょうか?
例えば、「たまふ」(給ふ)、これは「タモ―」と読みます。

『声に出して読みたい日本語3』(2004年4月30日 第1刷発行)では、「堤中納言物語(虫めづる姫君)」(72頁)
「親たちかしづきたまふ」が
「たまう」と読むようにルビ振ってありますが、
正しい読み方は「タモ―」です。

前出の『光村の国語 わかる,伝わる,古典のこころ② 短歌・俳句・近代詩・漢詩を楽しむ 18のアイディア』では島崎藤村の「初恋」の最後の部分
「問ひたまふこそこひしけれ」が
「トイタモ― コソ コイシケレ」と
適切にルビが振ってあります、やはり考えて下さっています、
脱帽!さすが!

NHKの学校放送のHP上では「たまふ」どうでしょう。
歌舞伎「勧進帳」がテーマのものです。

画像1

HPはこちら https://bit.ly/3aYiWgQ

5分5秒の箇所ですが
「笈に目をかけたまふ」を
「オイニ メヲ カケタモー」と
12代目市川団十郎さんが言っています(画像のルビの通りですね)。
歌舞伎役者が「タモ―」と舞台で堂々と発音しているわけですから
「たまう」は適切な発音ではないですね。


さてさて、変わりまして、『声に出して読みたい日本語4』では
「箱根八里」(170頁)が採録されています。

「前に聳え後に支う」という歌の文句が書いてありますが
「まえにそびえ しりえに さそう」と
読むようルビが振ってあります。

あれっ、「支える」は「ささ える」ですよね、読み仮名は「ささ」です。「さそ」ではありません。読み仮名通りですと「ささう」ですが、
そのように読ませておりません。

なぜ「さそう」と『声に出して読みたい日本語4』のこの箇所では表記したのでしょうか。(これは「サソー」と読むのが適切ですが、ここで急に正確なルビの振り方をするとは解せません)

おそらくですが、この歌は現在でも歌われておりますから、きっとその発音に依って「さそう」としたと推理しています。
もし、「箱根八里」に滝廉太郎による旋律がついていなかったら、齋藤先生は(今までの傾向からすると)「ささう」と表記するはずです。
*既述のNHKの動画も団十郎さんが「タモ―」と発音しているから、「たまふ」を「たもう」とルビを振ったのかもしれませんね。もし、きちんと理解した上でしたら、前回の「おくのほそ道」動画冒頭の”ちぐはぐ発音”にはならないはずです(もしくは動画作成者が違うからでしょうかね?)。


「ゆきかう」「むかうる」「たまう」と記していたかと思うと
そのように歌で発声しているからと「さそう」と記しています。
どうも、ますますいい加減な印象を感じるのは、わたしだけでしょうか?


「将来を”担ふ”(ニノーと読みます)子どもたち・賢明な読者の方々のために」と一生懸命きちんと考えて作った本と、(たぶん)「こんなもので、まあいいや」「トレンドで売れて儲かればそれでいいや」で作った本。
じっくりと、よく観察しながら読むとこのようにはっきりと
その本の本当の価値がわかってくるのでは、と勝手に考えています。

「この程度のことも知らないようでは、人として信用できない…言葉の間違いは、そう思わせてしまうのです。」
(『常識として知っておきたい日本語ノート』齋藤孝著 
 2021年9月15日第1刷 青春出版社 7頁”はじめに”)
アカデミックな世界で、日本語(国語)の教育に携わっており、
相応の発言力があるわけですから、わたしたちよりも一段と重大な責任が
ある(はずです)。


今回はここまであります、
お付き合いいただきましてありがとうございました。

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