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和菓子をどうぞ

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すこやかに、しあわせにー。今も昔も変わらぬ願いを込めてつくり味わい、伝えられてきた日本のお菓子。今この時をともに迎えられた喜びに、この先もつつがなく過ごしてゆけるよう祈りを重ねて… もっと読む
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#志田円

3/13〜19 啓蟄のお菓子② 『佐保姫 -さほひめ-』

3/13〜19 啓蟄のお菓子② 『佐保姫 -さほひめ-』

3/13〜19 啓蟄のお菓子② 『佐保姫 -さほひめ-』
薯蕷きんとん(山の芋使用)|備中白小豆粒餡

ひと雨ごとに桜色がにじみ出してくる頃の霞につつまれる春の山をきんとんにしました。佐保姫は奈良時代、平城京の東にあったといわれる佐保山に住まう春を司るうら若き女神。佐保川沿いは桜の名所、染めや織りが得意な姫が野山をやわらかな春色に染めていくとされ、たなびく霞は姫の薄衣の裾だそう。

季節によって豊

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2023/3/5〜12 啓蟄のお菓子①『さわらび』

2023/3/5〜12 啓蟄のお菓子①『さわらび』

3/5〜12 啓蟄のお菓子① #さわらび
黄味時雨|よもぎ餡・丹波大納言小豆粒餡

春の雨やあたたかな陽光で柔らかくなった土から早春の山菜、わらびが顔をのぞかせようとする様子を黄身時雨でおつくりしました。よもぎ餡と丹波大納言の粒餡を重ねて包んでいます。

啓蟄は冬籠りしていた土中の虫が外へと這い出てくること。実際、鉢植えから出てきた虫たちに遭遇しやすい時期です。

枝枝には新芽が覗き、花の蕾は日に

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2/19〜3/5 雨水のお菓子『初音 -はつね-』

2/19〜3/5 雨水のお菓子『初音 -はつね-』

提供: 2/19〜3/5 (2/27お休み)
菓銘: #初音 -はつね-
薯蕷練切(山の芋使用) | 小豆こし餡

梅とともに春を告げる風物詩、うぐいすを薯蕷練切でおつくりしました。中は小豆のこし餡です。

初音は鳥や虫の、その年の季節の初鳴きを指しますが、特にうぐいすの別名にもなっています。有名なホーホケキョという鳴き声は繁殖期のオスのつがいを求める声で、それ以外の時期は笹鳴きと呼ばれる地鳴き

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2/4〜18 立春のお菓子『雪うさぎ -ゆきうさぎ-』

2/4〜18 立春のお菓子『雪うさぎ -ゆきうさぎ-』

提供: 2/4〜18
菓銘: #雪うさぎ
羽二重餅(卵使用) | 黄味餡

節切りという暦の考え方では立春から一年がはじまります。今年の干支「癸卯 みずのと う」にちなんで雪うさぎを求肥にメレンゲを練り混ぜた羽二重餅でおつくりしました。中は玉子の風味がやさしい黄味餡です。

「卯」は本来「ぼう」と読まれ、うさぎ(兎)の意味ではなく、草木が茂る様子を意味します。二十四節気の月では3月上旬の啓蟄から春

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1/20〜2/3 大寒のお菓子 『雪中花 -せっちゅうか-』

1/20〜2/3 大寒のお菓子 『雪中花 -せっちゅうか-』

提供: 1/20〜2/3
菓銘: 雪中花 -せっちゅうか-
薯蕷練切(山の芋使用)| 金柑餡

寒中に凜と咲く水仙、別名 雪中花 を薯蕷練切でおつくりしました。中は金柑の蜜煮を練り混ぜた餡です。

水仙が眠りを覚まし花咲かせるには地温10度以下の日が3週間以上続く必要があるそう。先頃ずいぶんせっかちに春の暖かさが訪れた今年は一大群生地の淡路島の水仙も開花が遅れ、これからが見頃だそう。

異例の冷え

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12/22〜30 冬至のお菓子『寒牡丹 -かんぼたん-』

12/22〜30 冬至のお菓子『寒牡丹 -かんぼたん-』

提供: 12/22〜30
菓銘: #寒牡丹 -かんぼたん-
薯蕷練切(山の芋使用) | 柚子餡

冬枯れの中ひっそりと咲く寒牡丹を薯蕷練切でおつくりしました。中は柚子餡です。

花の王とよばれる牡丹の中には晩春と冬の二度咲くものがあり、寒牡丹は葉をほとんど落として小ぶりな花を咲かせます。雪囲いされ葉も茂らせて立派な花をつけているのは人の手で春と錯覚させて咲かせている冬牡丹なのだそう。

冬将軍が雪

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12/7〜21 大雪のお菓子 『松の雪 -まつのゆき-』

12/7〜21 大雪のお菓子 『松の雪 -まつのゆき-』

*アーカイブとしてupします
提供: 12/7〜21
菓銘: #松の雪 -まつのゆき-
薯蕷きんとん(山の芋使用) | 小倉餡
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街にも雪が舞い始める頃。常緑の松にかかる純白の雪、清冽で身が引き締まるこの季節らしい風情を薯蕷きんとんでおつくりしました。中は丹波大納言小豆の小倉餡です。
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冬でも凛と美しい緑のまま不変である松葉は不老長寿の象徴。吉祥のモチーフ松竹梅の筆頭であり「常盤」「千歳」「千

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11/22〜12/6 小雪のお菓子『落ち葉焚き -おちばたき-』

11/22〜12/6 小雪のお菓子『落ち葉焚き -おちばたき-』

提供: 11/22〜12/6 *11/28休み
菓銘: #落ち葉焚き -おちばたき-
きんとん(小豆・山の芋) | 焼き芋餡

紅葉シーズンもたけなわ。昨今なかなか目にすることがなくなった落ち葉焚きを小豆と山の芋を使ったきんとんで映しました。中は焼き芋餡です。

 ♪ かきね(垣根)の かきねの まがりかど
  たきびだ たきびだ おちばたき ( 唱歌「たきび」 )

ちょっとした空き地が身近だ

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11/7〜21 立冬のお菓子「亥の子餅」

11/7〜21 立冬のお菓子「亥の子餅」

提供: 11/7〜21
菓銘: #亥の子餅
求肥製(黒胡麻・胡桃入り) | 漉し餡(栗の甘露煮入り)

千年以上にわたって冬のおとずれを告げてきた、猪の子うり坊を模したお菓子「亥の子餅」。亥の月(陰暦十月)、亥の日、亥の刻(午後9〜11時)にこの餅を食べると無病息災を望めるという古代中国から伝わった行事食で「源氏物語」にも登場します。のちに猪の多産にあやかって子孫繁栄の願いや豊かな収穫を祝う風習と

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【アーカイブ】10/23〜11/6 霜降のお菓子「里づと」

【アーカイブ】10/23〜11/6 霜降のお菓子「里づと」

提供: 10/23〜11/6
菓銘: #里づと
薯蕷練切(山の芋使用) | 赤こし餡
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お茶とも縁の深い秋のみのり、柿の実を山の芋をつなぎにした練切でおつくりしました。中は小豆のこし餡です。
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陰暦十月、今では十一月に入ると茶道では炉を開き、その年摘まれたお茶を初めて抹茶に挽いていただきます。江戸時代、将軍の命によって朝廷や江戸幕府へ献上されたお茶は宇治で茶壺に詰められ、甲州の山中で夏を越して

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【アーカイブ】10/8〜22 寒露のお菓子「稲雀」

【アーカイブ】10/8〜22 寒露のお菓子「稲雀」

提供:10/8〜22
菓銘:稲雀
薯蕷練切(山の芋・胡麻使用)| 栗餡
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稲刈りが済んだ田んぼに群れるすずめの姿を山の芋をつなぎにした薯蕷練切に映しました。中は秋のみのり、栗の餡です。
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「稲雀」とは本来は稲が実る頃に群れを成してついばみに来る雀たちのことだそうで、農家にとってはようやく収穫の時を迎えた実りを食い散らかす厄介者。それではどちらも気の毒で、ここではおこぼれをもらいに来る雀として稲

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9/23〜10/7 秋分のお菓子「みのり」

9/23〜10/7 秋分のお菓子「みのり」

【アーカイブ】9/23〜10/7 秋分のお菓子「みのり」
提供:9/23〜10/7
菓銘:みのり
栗きんとん | 小倉餡
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今年も栗の季節を迎え、世界農業遺産のひとつ宮崎・高千穂郷から「ひのかげ栗」が届きました。糖度が高くなるのに必要な寒暖差の大きい山間部、傾斜のついた水はけの良い土地で育った大粒の栗を蒸してなめらかなきんとんにしました。中は丹波大納言の小倉餡です。
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縄文時代にはすでに栽培種

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菓葉暦「白秋」リリースしました

菓葉暦「白秋」リリースしました

絵葉書を入口に二十四節気の読みものをWEB上でお届けする「菓葉暦」、新作は「白秋」です。炎暑たけなわに迎える「立秋」から紅葉が始まる「霜降」までを、季節の和菓子を入口に綴ります。

残暑が後を引く時期だからこそ、暑さ寒さだけではない時の移ろいに目を留めたい季節。「白秋」のケアは夏の疲れを和らげること、秋のからだを守ること、冬の寒さに備えること、いずれにもつながっている三得のケアを、しっとりとした風

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6/22〜30 夏越のお菓子『水無月 -みなづき-』

6/22〜30 夏越のお菓子『水無月 -みなづき-』

提供: 6/22〜30
菓銘: #水無月 -みなづき-
吉野羹(吉野本葛・寒天使用) | 丹波大納言の蜜漬け
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夏至を迎え、今年も一年の折り返しのタイミング。古くより陰暦六月三十日には半年の穢れを払い、無病息災や厄除け、家内安全を願い、茅の輪をくぐって禊ぎをする夏越しの祓の風習がありますが、京都では三角の形で氷を模したういろうを食べる習わしがあります。
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かつて宮中や江戸幕府では氷の節会または

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