見出し画像

コラボの魅力 ~積丹の海に思う

 もう四半世紀も前のことですが、アンデルセンのメルヘン大賞をいただいたとき、イラストレーターの山口はるみさんが私の作品に素敵なイラストを描いてくださいました。

 テキストだけだった私の作品が、他の方の手によってビジュアル化され、それまでは私の脳内にしかなかった世界が、美しいイラストとして目の前に顕現した……その感動は、いまも深く胸に残っています。

 そのときすでに、私は雑誌の編集者としてキャリアがあったので、仕事では自分の書いた文章と、カメラマンさんが撮影した写真を合わせて表現する、ということを数多く経験していました。
 でもそれは、雑誌の取材記事。カメラマンさんと一緒に取材に行って、現場で同じものを見聞きし、写真と原稿という役割分担のもとに表現する、というシステムです。

 それに対して、文章による創作の場合は、作品世界のビジュアルイメージが、はじめは作者のなかにしかありません。私は小説を書いていて、脳内にある「絵」をそのまま共有できれば、どんなに楽だろうかと思うことがあります(笑)。結局、私はそうした「脳内の絵=作品世界のイメージ」をなんとか伝えようとして、文章表現で四苦八苦しているのです。
 それを、山口はるみさんが美しいイラストにしてくださったときは、奇跡を目の当たりにしたようでした。

 もちろん、私の脳内イメージとまったく同じではないのですが、むしろ同じではないから感動的だったいえます。自分とは別の存在である山口はるみさんの解釈やイマジネーション、そして素晴らしい表現技術が加わって、作品の世界がより豊かなものになったと感じました。
 これは、歓喜でした。

 ひと言でいえば、コラボレーションの魅力、ということになります。

 noteでも、それに似たものをたびたび覚えることができ、ここは可能性のあるメディアだなあと考えています。

 みんなのフォトギャラリーも、そのひとつですね。
 この記事では、scoop_kawamuraさんの作品を見出しの写真に使わせていただいています。北海道の、積丹半島のあたりの海の写真です。
 札幌に住んでいて、オートバイに乗っていた20代前半のころ、私は積丹へよく日帰りツーリングに行きました。
 海の青さと、岩の色、形……この写真を拝見すると、いまから30年も前に積丹半島で感じた光や風、空気の匂いや温度までもが甦ってきます。

 その写真をnoteのシステムのなかで(難しい手続きなく)使わせていただくことができ、こうして文章を書くというコラボが実現する。それってすごいことだなあ、としみじみ思います。

 いまは地理的な距離は関係なく、クリエイター同士が直接つながって、さまざまなコラボができる時代。
 私も、もっといろいろな形のコラボを楽しんでいけたら素敵だなと考えています。
 たとえばnoteでは、私は自分の原点である「書く」という表現に注力しています。「書く」に注力していると、「編む」とか「描く」とか「撮る」とかは、自分ではあまり力を入れられません。仕事では何度も、自分がライティングを担当してそれを自分で編集する、という経験をしましたが、これはけっこうつらくて、疲労困憊するものでした。

 他の方の表現や解釈、イマジネーションが加わるから、化学変化があって面白い。コラボってそういうものですし、そんな、よい意味での化学変化を生み出していけるひとつのプラットフォームとして、noteを活用していけたらいいなと思っています。

◇見出しの写真は、みんなのフォトギャラリーから、scoop_kawamuraさんの作品を使わせていただきました。ありがとうございます。

この記事が参加している募集

noteでよかったこと

noteのつづけ方

ありがとうございます。みなさまのサポートは、詩や文章を生み出すための糧として、大切に使わせていただきます。また、お仕事のご依頼はページ下部の「クリエイターへのお問い合わせ」からお願いします。キリスト教メディアの出演・執筆依頼も歓迎です。