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【文字創作】夜を注ぐ

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この世の裏で密かに営まれる"夜"を巡る物語。
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#創作

【夜を注ぐ①】

【夜を注ぐ①】

路地裏にある小さなバー。ネオンを放つ看板の下には、小さなベルのついた、これまた小さなドアが中から怪しげな香りを漂わせている。

その様を遠目に眺める、スーツ姿の女性がいた。

その女性はよろめきながら店に近づき、店の前でただ呆然と立ちつくしていた。

「…なんら?…このバー…」

ふやけた視界でネオンをとらえると、次の瞬間には、そのドアに手をかけていた。よろめく足音と可愛らしいドアベルの音だけが、

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【夜を注ぐ②】

【夜を注ぐ②】

1話→ https://note.com/shimishmidaikon/n/nc7bd95a9dea0

「このグラスに入っているのは"夜"。ほら、中で光っているのが星よ。これは星雲。星が入ったものは珍しいから、取り寄せるのに苦労したの」

カヤさんは、よく通る声で楽しげに言葉を紡ぐ。私がキレイだと言った"夜"は、カヤさんがグラスを回すのに合わせて踊り、様々な模様を浮かび上がらせた。

「すごい

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【夜を注ぐ③】

【夜を注ぐ③】

2話→ https://note.com/shimishmidaikon/n/n00a8dbabcd71

帰りたい…。酒の勢いでこんなところまで来てしまった自分を責めながらも、ミサトの頭はどうやってこの場から逃げるか、口封じの追跡を免れるか、とキリキリと回り続けていた。

しかしどう考えても逃げることも追跡を免れることもできない。同じく酔った勢いでミサトの職場、出身、住所がカヤに開示済みだったの

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【夜を注ぐ④】

【夜を注ぐ④】

前話→ https://note.com/shimishmidaikon/n/n731dcfb51f20

カヤがミサトの手をぐいぐい引きながら歩くと、急に開けた場所に出た。鬱蒼とした木々は途切れ、草原と満点の星空が広がっていた。

ただ、広がっていた。

そこにはおおよそ酒造の出来るような施設も、建物も無かった。ミサトは裏切られたような気分になったが、あまりの肩すかしに言葉も出ない。

「ここ

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【夜を注ぐ⑤】

【夜を注ぐ⑤】

前→ https://note.com/shimishmidaikon/n/nc2ba17ab2d24

果てなく続くと思っていた夜空は、ぐにゃりとその表面に波をつくり、ひずみを徐々に広げたと思えば、やがてその中心から一筋の"夜"が涙のように、音もなく降り注いだ。

ぱたっ ぱたっ

頬にあたった"夜"は生温かい。ミサトが頬にさわった指を見ると、空を写し取ったような満天の星星が指を染めていた。

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【夜を注ぐ⑥】

【夜を注ぐ⑥】

あらすじ  夜が落ちてきました。

1話から→https://note.com/shimishmidaikon/m/m0311c6be2e90

空から一つの筋となって滑り落ちてくる夜は、草原中央にある机に置かれたポットの中へ一直線に注がれている。

「これは、何なんですか?」

ミサトはさっきの言葉をもう一度聞いてみた。

ここまで来たら、何も聞かないほうがアホらしい。知らないことはとことん聞

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【夜を注ぐ⑦[終]】

【夜を注ぐ⑦[終]】

今までのもの→https://note.com/shimishmidaikon/m/m0311c6be2e90

春の風が草をなで、二人の間を音もなく抜けていく。その冷たさが妙に堪えて、ミサトは体を縮めた。そして満天の星を眺めながら、ぽつぽつと言葉を落とした。

「私お酒って好きじゃないんです。苦いし、喉痛くないですか?」

入社したての私は、周りに促されてレモンサワーを初めて飲んだ。消毒でも飲ん

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