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多様性のある組織を作るためには偏見は持たず、客観的にリスクを見て、アセスメントと対策を講じることが大切だ。

面接は途中まで順調に進んでいた。
最後に候補者が口を開く。

「あの、実は私、精神疾患があって、たまにパニックになってしまうことがあるんです。そういう時は急遽休ませていただかないといけなくなりそうなのですが..」


弊社の社内公募制度の面接中の話だ。
外資系では外から人を引っ張ってくることもあれば、社内に募集をかけて役職を埋める事もある。

今回は管理職ではなく、現場を回す監督のような役割の面接だ。


途中まで面接が順調で、僕の中ではほぼ確定していただけに、少し驚いた。
ただ、「精神疾患」と言っても色々ある。

いくつか明確にしたかった。

・発作が起きる頻度
・発作が起きるきっかけ
・想定される、業務への具体的な影響
・発作が起きたときに周りに与える影響。(誘導する懸念)


最後の点は現在の上長に話を聞くとして、それ以外について具体的に聞く。

・月に一度程度
・普段と全く異なる状況に出くわすと起こりやすい
・業務を休むことになる

ということがわかった。

そして「在宅勤務をすることにより、症状は軽減できそうだ」とのこと。
この仕事はPC上で状況をモニターして、指示出しをするのがメインの業務になるので、在宅は問題ない。

最後に質問した。

「新しい業務は、あなたの症状に対して良い影響を与えると感じますか?」
彼女は「そう思う」とハッキリと答えてくれた。


彼女の上司に聞く。
「彼女に発作が起きた時、周りの人を引っ張ってしまうようなことはなかったか」と。

僕は精神疾患に対して特に偏見はないつもり。
ただ以前、うつ状態にいる人の周りの人が、引っ張られてうつになっているケースを見た。だからそこは気がかりだった。

「それはない」との回答。
よかった。


彼女を採用するにあたり、想定した懸念点は3つある。

・急な欠勤
・周りのチームメンバーの理解
・発作時に、周囲を巻き込むかどうか

一方で思いついたメリットは3点。
・彼女の知識、経験、責任感はかなり強力に機能する。
・様々な背景の方が組織で活躍することで、さらに強固なチームになる。
・環境が変わることで、彼女自身の病状が改善する可能性がある。

懸念点は、条件を付けることでコントロールできる可能性があると感じた。



彼女に選考の結果を伝えた。
うれしそうな表情が広がる。今にも泣き出しそうな笑顔を見せてくれる。

続けざまにお願いをする。リスクを低減する口約束だ。
「欠勤が多い場合は、こちらの方で継続はムリだと判断して、元の役職に戻ってもらうかもしれない」

それでも彼女の笑顔が絶えることはなかった。

「病気のことがあるから、絶対にムリだと思っていました。周りに迷惑をかけてしまいそうだと思ったら、自ら異動を申し出たいと思います」。

と言ってくれた。


最後に質問。
「今回話してくれた病気に関することについて、チームメンバーに僕の方から伝えてほしいことはありますか?」

チームメンバーに病気を伝えるのかは、本人が決めること。けど僕から伝えた方がいいこともあるかもしれない、と思った。

「少し考えさせてください」。
ということで結果を伝える面談を終えた。


自分の不利益になりかねないことを、自ら告白するのは勇気がいることだ。
でも正直に話してくれることで、現実的なリスクの洗い出しと、対策を講じることができる。何よりもその人に対して深い感謝と信頼の心が芽生えることに気付いた。

偏見で頭から拒否するのではなく、適切にリスクマネジメントすることができるなら、それはリスクでもなんでもない。様々な背景の方が加わることで、組織には新しい目線が付与される。こちらにとってもありがたい話だ。

彼女と組織がどのように変化していくのか、楽しみで仕方ない。


しめじ
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