見出し画像

「もう会うのはやめよう」

大切だからこそ友人と離れることを決めた。それが13年間の唯一の友人でも。

私は無性愛者で、他人へ恋愛感情を抱き辛い。それでもそれは恋愛においての感覚で、友人や家族に対しては「大切」という感情を強く抱いている。その少ない私の感情だからこそ、絶対に今手の中にいる人達は手放さないと決めて生きてきたのは大袈裟に聞こえるけれども大真面目の本心だった。それでもこの決断を自分から提案したのにはちゃんと訳があって、今、心がとても苦しいから、ここに記録しておく。いつかこんな事もあったなと、笑いたい。


〜〜〜

男女の友情をいくら唱えて言い聞かせても、そこにいたのは男女だったし、付き合いが長い友人だからこその楽な関係が心地良く見て見ぬふりをしてきた。要は似たもの同士、二人してズルかったのだ。それに気がついていながらも、私達は手を繋いできた。「あなたのことが大切よ」と特別な言葉を囁きながら。

それでもどちらかに恋人が出来ると「自分のなのに」とお互いの恋人に嫉妬していた。そこに恋愛感情がなくても自分のものを奪われた、と言うよりも取り上げられた気持ちになる事が苦しい。だからもっと特別な言葉で繋ぎとめてきた。「何があってもそばに居続ける」と。それなのに正義感は皮肉にも存在していて、相手の恋人に「会ってお酒を飲む」それだけのことも秘密にする様になり、特にここ1〜2年申し訳なさを募らせ「もうやめよう 」を繰り返してきた。


私は彼の人生プランを何度も何度も聞いてきた。結婚する前に必ず2年同棲して、何歳に結婚して、何歳までには子供が欲しい。したいことや住みたい場所。そういう話をすることが好きだったけど、その話をする中で将来のビジョンにお互いはいなかった。もうすぐで私は26歳になる。彼は彼の恋人と同棲して2年が経つ。そろそろタイムリミットの様だ。


制服姿から今スーツ姿に変わるほど長い時を過ごしてきた。でもこれ以上一緒にいても、私は彼の足を引っ張るただの古くからの友人になってしまう。彼の願いを叶えてあげられない。むしろ足枷にすらなってしまう。それを一番に避けたいと思ったことが今回この決断につながった。大切だからこそ邪魔をしたくない、だって私は彼に何もしてあげられないから。だから自分の訳のわからない友人としてのプライドや、いつもそばで繋いでいてくれた手を手放そう。彼は誰より正直者で優しいから、幸せにならなくてはいけない。私でなく他の子と家庭を築き幸せになってほしい、そう思う。

「もう会うのをやめよう」と連絡をした。彼からの返事はまだない。私の震えながら送ったメッセージなのに既読スルーだったら怒る。とはいえ今回、いくら自分から「離れる」と決めたとしても、体の中の凄く重要・大切なパーツを無くしてしまったくらいの虚しさで、悲しくて寂しい。でも今は苦しくても何年後かには良かったと思えるはずだ。だから今は耐えよう。ここで関係は途絶えるけれど、友人になれて良かった。


恋愛が羨ましい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?