十六夜紫煙

ADHDと解離性同一性障害と境界性パーソナリティ障害治療中の死ぬまでさめざめガール 性…

十六夜紫煙

ADHDと解離性同一性障害と境界性パーソナリティ障害治療中の死ぬまでさめざめガール 性悪メンヘラクソビッチ (アイコン画像は笛田サオリさんに許可を頂いて使用しています)無断転載❌

記事一覧

「それでも生きなくちゃ」(28)

アタシは風俗嬢を辞めて10年以上経っていた。 地元の風俗は廃れているから、とりあえず5日間キャストとしてちょっと地方に遠征してみる事にした。 夜の喫煙所で久しぶりに…

1

「それでも生きなくちゃ」(27)

君の腕の中でアタシは初めて「女の子に生まれてきてよかった」と思えた。 これが、君との最後のセックスだとしても…… 君の体温、君の情熱的なキス、君の指先に自分の指を…

十六夜紫煙
1か月前
1

「それでも生きなくちゃ」(26)

君のLINEにメッセージを送った。 『アタシね、クズで最低なオンナなの、だから軽蔑して、嫌いになって』 メールの最初の文章を今も覚えてる。 アタシが君へのLINEに込めた…

十六夜紫煙
2か月前
1

「それでも生きなくちゃ」(25)

アタシはずっと、ずっと、君からのLINEを待ち続けていた。 君のアイコンがいつも1番上に来るように設定して、赤いマークが着くのをずっと待っていた。 「おはよう」と「お…

十六夜紫煙
2か月前

「それでも生きなくちゃ」(番外編2)

1月、冬休みの間に、アタシは1人新幹線に乗っていた。 「縁結び」で有名なお寺を目指して…… 特定の誰かとの縁を願ってはいけないことを知りながら、アタシは君との縁とア…

十六夜紫煙
4か月前

「それでも生きなくちゃ」(24)

冬休みが終わって、また、いつもの仕事を淡々と繰り返す日々。 君が、前ほど遊びに来なくなった事も気づいていたけど、新しく作る外部倉庫に関するプロジェクトに君がメイ…

十六夜紫煙
4か月前

「それでも生きなくちゃ」(23)

会社の冬休みに入ってから、アタシには朝の日課が1つ増えた。 毎日、起きて直ぐに体温を図る。 生理が遅れていた。 元々不順だし、来ない時は半年なんて長い期間生理が止…

十六夜紫煙
4か月前
2

「それでも生きなくちゃ」(22)

あの日から、また君は毎日、以前のようにアタシの部署に遊びに来た。 アタシは別に君の彼女でもなく、君もアタシの彼氏でもないのに、お互いの距離が近づいていたようにア…

十六夜紫煙
5か月前
1

「それでも生きなくちゃ」(21)

君が、アタシの部署に久しぶりに顔を出した日。 あの日は、多分そんな状態になる事は二度とないくらい、本館のラインが動かず、その為、アタシの工程もほぼ作業がストップ…

十六夜紫煙
5か月前

「それでも生きなくちゃ」(20)

君が、アタシの部署に来ることが無くなって、どれくらいの日々が過ぎただろう。 悲しみと怒りとが綯い交ぜになった気持ちを抱えたまま、やらなきゃいけない仕事のルーティ…

十六夜紫煙
5か月前

「それでも生きなくちゃ」(19)

アタシは君と「普通」の恋愛がしたくて、ただそれだけで、君に、アタシの我儘を押し付けてしまっていた事、今ならわかる。 君は、まだスタートラインにもいなかったのに、…

十六夜紫煙
5か月前
2

「それでも生きなくちゃ」(18)

君とベッドでセックスをした。 「イきそう?」 「ん…………薬……飲んでるから……イきにくい…………」 安定剤の副作用で、セックスでの感度が鈍くなっていたけど、君の…

十六夜紫煙
5か月前

「それでも生きなくちゃ」(17)

家に着いて、君をリビングに招き入れた。 入院した、おかーさんからのびっしりと書き込まれた書き置きが、テーブルの上一面に広がっていた。 赤いペンで、ゴミ出しの日、冷…

十六夜紫煙
6か月前
1

「それでも生きなくちゃ」(16)

帰りの車の中。 「ね?今度デートしよっか?」 君がどんな言葉を返すのか、どんな反応をするのかわからなくて、車を運転する君の横顔をアタシは、じっと見つめた。 「デート?…

十六夜紫煙
6か月前
1

「それでも生きなくちゃ」(15)

女子更衣室裏での、あの出来事が何でもなかったかのように、アタシはその日も仕事を終え、女子更衣室に着替える為に向かった。 見覚えのある君の車が駐車場にとまっていた…

十六夜紫煙
7か月前

「それでも生きなくちゃ」(14)

君は、アタシのお腹から、手を離して胸ポケットの中のタバコを取り出すと、1本抜き取り口に咥え、火をつけた。 沈黙が続く中、アタシは君の横顔をじっと見つめていた。 …

十六夜紫煙
7か月前

「それでも生きなくちゃ」(28)

アタシは風俗嬢を辞めて10年以上経っていた。 地元の風俗は廃れているから、とりあえず5日間キャストとしてちょっと地方に遠征してみる事にした。 夜の喫煙所で久しぶりに夜職の女の子達とここでは書けないようなキャスト達の本音トークで盛りあがったりもした。 SNSで情報を拾うと「今」が見えてくる。 稼げる、稼げる、稼げる……スカウト達の胡散臭いツイート。 夜職キャストである事をプロフィールに書いてアピールする女の子達がこんなにいるとは思ってもなかった。 風俗業界に足を踏み入れるハ

「それでも生きなくちゃ」(27)

君の腕の中でアタシは初めて「女の子に生まれてきてよかった」と思えた。 これが、君との最後のセックスだとしても…… 君の体温、君の情熱的なキス、君の指先に自分の指を絡めて、アタシとのセックスに溺れていく君をアタシは一生忘れはしないだろう…… これから、風俗嬢として生きていく事になっても、君とのセックスを何度でも、何度でも頭の中に思い描くだろうし、もう二度と君に会えなくなっても、アタシはこの日君と過ごした時間を死ぬまで忘れない。 結局最後のセックスでも君はコンドームをつけやし

「それでも生きなくちゃ」(26)

君のLINEにメッセージを送った。 『アタシね、クズで最低なオンナなの、だから軽蔑して、嫌いになって』 メールの最初の文章を今も覚えてる。 アタシが君へのLINEに込めた想いが伝わるだろうか…… 『いきなり何?どういう意味?』 アタシは震える指先で君にアタシの過去の仕事が、なんだったのかLINEで送った。 『カラダ売って生きて来たの、アタシ風俗あがりなんだよ。汚れてんのアタシ、君に出逢うずっと前から……』 『別に風俗やってたから、汚れてるとは思わないけど?俺だって、風俗で遊ん

「それでも生きなくちゃ」(25)

アタシはずっと、ずっと、君からのLINEを待ち続けていた。 君のアイコンがいつも1番上に来るように設定して、赤いマークが着くのをずっと待っていた。 「おはよう」と「おやすみ」だけでよかったのに、それすらも来なくなってアタシは、ベッドの中で死んだように眠っていた。 テーブルの上に置いたままのノートには、最後に君から「おはよう」のLINEが来た日から何も書いてない。 生きているのか、死んでいるのかもわからないまま、アタシはベッドの上で布団にくるまっていた。 左手首に残る無数の

「それでも生きなくちゃ」(番外編2)

1月、冬休みの間に、アタシは1人新幹線に乗っていた。 「縁結び」で有名なお寺を目指して…… 特定の誰かとの縁を願ってはいけないことを知りながら、アタシは君との縁とアタシのお腹にいるのかどうかもまだ、わからない君との子供の縁を願った。 叶うはずがなかった。 欲張り過ぎている事も理解していた。 だけど、その時のアタシは、君と、君とアタシの子供との、3人の未来を願っていた。 そのお寺の御守りを3つ買った。 1つはアタシ。 1つは出産を控えた姪っ子。 そして、肩の手術後、リハビ

「それでも生きなくちゃ」(24)

冬休みが終わって、また、いつもの仕事を淡々と繰り返す日々。 君が、前ほど遊びに来なくなった事も気づいていたけど、新しく作る外部倉庫に関するプロジェクトに君がメインで関わっている事は君から聞いていた。 久しぶりに君の姿を見つけた。事務所から出てきた君とアタシはエンカウントした。 君はおいで、とでも言うように、アタシを手招きする。 倉庫の出入口まで、アタシは、君に着いていった。 「また来る?」 君は何も言わず、アタシの胸に手を伸ばした。 「もう!会社でそういう事しないでよね?

「それでも生きなくちゃ」(23)

会社の冬休みに入ってから、アタシには朝の日課が1つ増えた。 毎日、起きて直ぐに体温を図る。 生理が遅れていた。 元々不順だし、来ない時は半年なんて長い期間生理が止まることもあったけど…… 大晦日に君とセックスをしてから、アタシは夢の中の住人だった。 高温期が続いていた事…… 怠さと、軽い吐き気が止まらなかった事…… 妊娠初期の症状にどういうモノがあるのか、アタシは携帯で色んな検索ワードで調べながら、淡い、淡い夢を見ていた。 2週間…… 本来の生理の予定日より遅れたら

「それでも生きなくちゃ」(22)

あの日から、また君は毎日、以前のようにアタシの部署に遊びに来た。 アタシは別に君の彼女でもなく、君もアタシの彼氏でもないのに、お互いの距離が近づいていたようにアタシは感じていた。 いや、そう錯覚していたのかもしれない…… もしくは、そうであれば良いと思いたかったんだ…… 寒い冬の日、秘密の喫煙所でまた、君と2人きりになった時、君はアタシが着ているダウンジャケットの首元に手を伸ばしてきた。 アタシは君の手が冷たいから、寒いのかな?なんて思って、そのまま君の手をダウンジャケッ

「それでも生きなくちゃ」(21)

君が、アタシの部署に久しぶりに顔を出した日。 あの日は、多分そんな状態になる事は二度とないくらい、本館のラインが動かず、その為、アタシの工程もほぼ作業がストップ状態だった。 手待ちの時間は、なるべく他の仕事をするアタシも、さすがにする事がなくなり、掃除でもするしかないな……なんて思っていた。 作業途中で、1つ確認したい事があったのをアタシは思い出して、ADHDの障害があるアタシに、1番わかりやすく説明をしてくれるAさんの工程に向かった。 アタシがAさんの工程で、Aさんと

「それでも生きなくちゃ」(20)

君が、アタシの部署に来ることが無くなって、どれくらいの日々が過ぎただろう。 悲しみと怒りとが綯い交ぜになった気持ちを抱えたまま、やらなきゃいけない仕事のルーティンを淡々とこなす事だけに集中するしか無かった。 手が空いた時間に、押し寄せる苦しみ。だけど、仕事中だから、脳裏から追い払う為に、感情を殺すしか無かった。 休憩時間に他の人と会話をする事も辞めた。 アタシはアタシの中にあーちゃんが居ることを前よりも強く感じていた。 あの記憶にないメッセージ…… あーちゃんがどう

「それでも生きなくちゃ」(19)

アタシは君と「普通」の恋愛がしたくて、ただそれだけで、君に、アタシの我儘を押し付けてしまっていた事、今ならわかる。 君は、まだスタートラインにもいなかったのに、アタシは君の手を引いて一緒にゴールテープを切ることだけをただ夢見ていた。 タイムリミットが近づいていたから、アタシは「普通の幸せな人生」を手に入れたくて仕方がなかったのかもしれない。 だから、君が「あんまり、俺に、本気になるなよ?」ってメッセージを送って来た時、一瞬でアタシの夢見た世界が崩れ落ちて、アタシは、自分

「それでも生きなくちゃ」(18)

君とベッドでセックスをした。 「イきそう?」 「ん…………薬……飲んでるから……イきにくい…………」 安定剤の副作用で、セックスでの感度が鈍くなっていたけど、君のカラダに触れているだけで、アタシは満たされていた。 「あっ……待っ……て……」 不意に、忘れていたあの感覚が蘇る。 子宮の奥が苦しくなる、あの感じ。 君のカラダも気がついていたね? 「どうした?」 君はわかっていたクセに、悪戯をしたくてたまらない子供みたいな顔してワタシを見た。 君が、両手で支えていたアタシの腰を激し

「それでも生きなくちゃ」(17)

家に着いて、君をリビングに招き入れた。 入院した、おかーさんからのびっしりと書き込まれた書き置きが、テーブルの上一面に広がっていた。 赤いペンで、ゴミ出しの日、冷蔵庫のドアを閉め忘れるな、玄関の鍵をかけろ、事細かく書かれた紙を見てアタシは、軽くため息をついた。 (いつまで、この人は、アタシを何も出来ない子供の様に扱うんだろう) そんなアタシを、君は黙って見つめていた。 君の手がアタシのカラダを後ろから抱き寄せる。 アタシの服を脱がそうとする君の手を、アタシは振りほどく事すら出

「それでも生きなくちゃ」(16)

帰りの車の中。 「ね?今度デートしよっか?」 君がどんな言葉を返すのか、どんな反応をするのかわからなくて、車を運転する君の横顔をアタシは、じっと見つめた。 「デート?」 「うん。デートしたいな」 君はアタシの顔をチラリと見つめる。 「デートって何するの?」 アタシは普通の女の子達のように、好きな人と、ご飯を食べたり、映画をみたり、手を繋いで歩いたりした事が1度もなかった。 だから君の問いの正解がわからなかった。 「……デートって、一緒にご飯食べたり、映画みたりとか?……デート

「それでも生きなくちゃ」(15)

女子更衣室裏での、あの出来事が何でもなかったかのように、アタシはその日も仕事を終え、女子更衣室に着替える為に向かった。 見覚えのある君の車が駐車場にとまっていた。 (?こんな時間に、こっちに来るなんて珍しいな) アタシが、君の車の前を通り過ぎようとすると同時に、君は車のドアをあけた。 「どうしたの?こんな時間にこっちに来るの珍しいね?」 「あ、いや、弁当箱忘れたんだよ」 「そっか、ぢゃあ、また、来週……違うか、再来週だね」 「そうだね。おつかれ」 「うん。バイバイ、またね

「それでも生きなくちゃ」(14)

君は、アタシのお腹から、手を離して胸ポケットの中のタバコを取り出すと、1本抜き取り口に咥え、火をつけた。 沈黙が続く中、アタシは君の横顔をじっと見つめていた。 沈黙を破ったのは君からだった、 「あ、あれから、あのストーカーどうなった?」 もう、誰もが、忘れているであろう事なのに、君だけが、アタシをずっと気にかけていてくれた事が、嬉しかった。 こんな醜い、汚いアタシを…… 素直になれない。 素直な、普通の女の子になりたかった。 好きになったら、好きな人に、 「好きだ