もしかしたら全てが夢なのかも…皮肉の効いた痛快なラストが素晴らしい!「ファンタズムⅡ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(527日目)
「ファンタズムⅡ」(1988)
ドン•コスカレリ監督
◆あらすじ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
不気味な葬儀屋:トールマンの悪夢から7年。──未だにその悪夢と兄の死を引きずっているマイクではあったが、親友:レジーの助けもあり、次第に立ち直っていた。そんなマイクは、夢の中でエリザベスという女性と交信しており、彼女もまたトールマンの悪夢に悩まされていた。トールマンへの復讐を誓うマイクは、トールマンがエリザベスの元にいることを知り、レジーと共にエリザベスが住むぺリゴードという街へ向かうのだった・・・。しかしその街は、ゴーストタウン化しており、ただならぬ雰囲気が漂っていた!!(DMMTVより引用)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
先日鑑賞した「ファンタズム」(’79)の続編で、前作から7年後の出来事を描いており、監督は前作から引き続きドン•コスカレリ氏が務め、脚本と製作も兼任しています。
作品的には前作から9年経過しているため、特殊メイクや特殊効果のクオリティが数段上がっています。
ちなみに「死霊のはらわたⅡ」や「プレデター」にも携わり、その後、「スクリーム」や「ミザリー」など主にホラー映画における特殊メイクや効果を担当することになる超大御所のロバート・カーツマン氏が特殊メイクアップ効果コンストラクターとして参加しています。
前作の夢と現実の境目が曖昧になる幻想的な作風から打って変わって、今作は爆発や銃撃戦、カースタント、がっつりのグロ描写等など、アクション多めで派手な演出が特徴となっています。
◇前作から7年後、トールマンを命からがら倒したマイクでしたが、それらは全て彼の見た夢であり、精神病を疑われた彼は精神病院に収容され、20歳を迎える。
脳内に響く声に導かれるまま、あの出来事は全て夢であることを認め、退院するマイク。
しかし、兄や両親の命を奪ったトールマンへの復讐心に突き動かされた彼は友人のレジーと共にトールマン討伐の旅に出ます。
そしてマイクの夢に度々現れる女性•エリザベスもまた、トールマンに見初められてしまい、彼女の周囲では恐ろしい出来事が頻発する。そして、何かに導かれたマイクとエリザベスは東の町ペリゴードで出会い、葬儀場にてトールマンたちとの壮絶な戦いに挑む…
といった内容となっています。
『これはマイクの夢なのかはたまた現実なのか』
という前作の良かった部分は無くなってしまいましたが、大枠で考えるならば『本編の出来事は全てマイクの夢で、マイクはまだ精神病院に収容されている』とも考えられるので作品の根幹みたいな部分は変わっておらず、前作よりも派手なアクションを増やしてエンタメ寄りにした感じなんだと思います。
『トールマンに連れ去られたエリザベスを救うべく、マイクとレジーが葬儀場に乗り込む』
という終盤からの盛り上がりは凄まじく、あらゆるところに伏線を張っているため、それが回収されていく様子が非常に心地良いです。
また、塩酸入りの防腐液を投与されたトールマンが悶え苦しみながら溶けていくシーンは思わず目を背けたくなるほどの凄惨さで素晴らしかったです。
前作から引き続き登場の不気味な葬儀屋•トールマン、死体から作り出したドワーフ、空飛ぶ銀玉•シルバースフィアなどは更にパワーアップしており、より魅力が増しています。
前作の大ヒットもあり、今作の予算はかなり潤沢で、だからこそ特殊メイクや特殊効果に予算を注ぎ込めたのではと思っていました。しかし確認したところ、製作費は30万ドルと前作と変わらずでした。
ラストも非常に秀逸で
◇トールマンを倒し、葬儀場に火を放って逃げるマイクたち。そこへレジーと良い感じのサブヒロイン•ケミーが車で駆け付け、全員で逃げ出す
という「良かった!大団円だ!」と思わせ、油断させてからのあのオチだったので完全に喰らってしまいました。
確かにケミーは多少ぽっと出のキャラで違和感あったんだよなとも思いながら最後まで何もなかったので不意打ちでした。その後、レジーが殺害され、車の外からはドワーフたちの無数の手がマイクとエリザベスに忍び寄ります。
ここでマイクは自分の身に現在進行系で降り掛かっているトールマンの脅威を全て“夢”だと発言します。
この発言がエリザベスを落ち着かせるためなのか、それとも自分を落ち着かせるためのものなのか、はたまた死に直面したことで気が動転して飛び出しただけなのか定かではありません。
しかし、それまで自分の身に起きた出来事を誰にも信じてもらえず、精神病院にまで入れられてしまったマイクが最後はこの一連の出来事を自ら夢だと発言する演出は非常に皮肉が効いていて最高でした。
全編に渡って遊び心も満載で、砕いた遺骨を入れる袋にラベリングされている名前がサム・ライミだったり、絶対に必要ないレジーとケミーの濡れ場があったりとしっかり笑わせてくれるとともに、トールマンはもちろんのこと、序盤に登場するエリザベスの偽物の背中から飛び出すクリーチャーなどは相当レベルが高いです。
あと、旅の途中で時間の経過を表すためにマイクとレジーの無精髭が少し伸びてるという演出にも感動させられました。こういう細かいところにまで拘るところにコスカレリ監督の良さが出てると思います。
個人的にこの2作ともかなりハマったので近々また続きも見ていこうと思います。
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?