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マークの大冒険 古代ローマ編 | 選択の代償 Chapter:4


前回のあらすじ
神殿の破壊に共にない、ヘラクレスとウェヌスを討伐したマークたち。だが、敵の切り札であるユピテルの力は強大なものだった。ユピテルの落雷により、マークたちはマルスとアポロを失った。残るは間接降神で呼び出したホルスのみ。圧倒的に不利な状況下に怯むカッシウスとブルートゥス。マークは彼らを鼓舞し、唯一残されたホルスのステータスを最大限に引き上げるため、エジプトの降神を提案する。ホルスの本来の力を発揮するため、彼らはローマにエジプトごと呼び寄せる大挙に出たのだが......。

▼前回のストーリー▼
マークの大冒険 古代ローマ編 |選択の代償 Chapter:3


「ローマにエジプトごと呼び寄せるんだ!そうすれば、ホルスの本来の力を発揮できるかもしれない。神域ローマからは他の地域の神々が能力を発揮し辛いジャミングがどうやら出ているようだ。それがホルスの行動を邪魔している」

「させるか!!」

「アントニウス!?」

アントニウスが勢い良くマークたちのもとに飛び込んできた。何とか三人は彼の攻撃を交わしたものの、刃が衝突した地面には大きな裂け目ができていた。その攻撃力の恐ろしさを感じさせる。当たったら、ひとたまりもないだろう。

「お前らに勝ち目はない。諦めろ」

カエサルが冷淡に言い放った。

「ふざけるな!」

カッシウスが怒鳴る。

「父のように思っていた!それなのに!」

ブルートゥスは、カエサルに苛立ちをぶつけた。

「ユピテルの前に散れ」

オクタウィウスが冷笑を浮かべながら、マークたちを見ていた。

カエサル、アントニウス、オクタウィアヌスの三人が剣を振りかざして突進してくる。

「カッシウス!ブルートゥス!戦いながら今からボクが指示する通りに降神陣を描くんだ」

「無茶言うな!コイツらの相手をするだけで精一杯だ!」

「キミらならできる!頼む!」

「マーク、早く!」

ブルートゥスがカエサルとつば迫り合いをしながら、マークの方を向いて叫んだ。

「お前の相手は俺だ、カッシウス!」

アントニウスが笑いながら、カッシウスを剣で狙う。

「アントニウス!俺はお前が前から気に食わなかった。力自慢だけが取り柄の木偶の坊が!!」

「同感だねえ、俺もお前が嫌いだよ!貴族出身のあまちゃんが」

アントニウスがカッシウスに唾を吐いて言った。

「剣の先で地面を削って降神陣を描くんだ!まずは円を描き、その中に太陽と三日月を上下にそれぞれ描く。そして、最後に円の中央にピラミッドを、その中にウジャトの眼を描くんだ。円は大きいほど効果が期待される。この広場全体にボクら三人でエジプトの降神陣を描くんだ!媒体としてボクら三人の剣を捧げる」

「お前はいつも無理なお願いばっかだな!クソ、どけ!アントニウス!今はテメェの相手をしてる場合じゃねえ!」

カッシウスがマークの指示に怒鳴りながら、アントニウスに抵抗する。

「お楽しみのところで邪魔して悪いな。だが、早く死んでくれないか?」

アントニウスがカッシウスの会話を遮るように攻撃を繰り出す。

「ブルートゥス、なぜ私に背く?」

カエサルはブルートゥスと剣を交わしながら問うた。

「あなたが王になろうとしているからだ!共和政こそ、ローマの真髄。それをあなたは壊そうとした。あなたはローマにとっての脅威だ」

「ふん、何も分かっていないな。お前は大きくなっても、まだまだガキだ」

「ユニウス氏族の名にかけて、あなたをこの手で葬る」

「お前の攻撃など全て読める。私がお前に教えたのだからな」

カエサルの強力な一撃により、ブルートゥスは剣を落とした。そして、次の瞬間、カエサルがブルートゥスの腹部を思いきり蹴り上げる。ブルートゥスは勢い良く吹き飛ばされていった。

武器を失ったブルートゥスはカエサルから距離を取りつつ、拾った瓦礫でマークが指示した通り降神陣を描いていく。

「悪あがきは寄せ、ブルートゥス」

「黙れ、悪魔の化身が!」

「お前が一度ポンペイウス側についた時、私はお咎めなしでお前を助けてやったというのに。その恩がこれとは、随分と薄情な人間に育ったものだな」

カエサルはゆっくりとブルートゥスの方に迫り、追い詰めていく。

「マーク、どうしてボクがここにいるのか?不思議そうな顔をしているね。アポロニアで留学中だったんじゃないかって」

「……」

「キミはすぐに感情が表情に出る。自分で思っているよりも、分かりやすいもんだよ」

「オクタウィウス、やっぱりキミが選ばれし者なんだね」

「そうだ、だからキミらは大人しくここで死んだ方がいい。キミらはもうローマに必要のなくなった役者なんだ。早く退場してはくれないか?」

「その皮肉さと冷淡さは、文献通りだな」

「まあ、何を言ってるのかよく分からないが、図書館でお勉強ばかりじゃ、世界は変えられりゃしないよ。だからキミらは選ばれない。神々から選ばれたのは、ボクらの方なんだ」

「確かにそれは間違いない。神はキミらに未来を託した。それでも、ボクはこの運命を変える」

「無駄なことだ。まあ、せいぜい最期を楽しめよ」

オクタウィアヌスはそう言うと、マークに向けて剣を振り下ろした。マークはアムラシュリングで出現させた盾で剣を防ぐ。

「ほう、面白いものを持っているね?ボクにも見せてくれないか?」

「ふざけるな!」

「それじゃ、ボクのオモチャも見てくれよ」

オクタウィウスが宙を剣で切ると、電撃がマークを目掛けて飛んでいった。電撃に当たったマークの盾は、木っ端微塵になって消滅した。

「ユピテルの力の一部を自身でも使用できるのか?」

「ボクは選ばれし者だからね。そうそう、神々から聞いたよ。このボクが、将来ローマの全てを手にする皇帝になるってね」

「なぜそれを!」

「神も意外とお喋りだよな」



−1ヶ月前−



「カッシウス、こっちだ」

マークとカッシウスは深夜のマルス神殿に忍び込んでいた。

「すばしっこさだけは、ピカイチだな」

「それ褒めてんの?」

「さあな」

二人は裏口の窓から神殿に侵入した。内部は薄暗いが、月明かりによって歩行できるぐらいには明るい。

「お、デナリウス銀貨か?」

マークは神殿の祭壇でチラリと光っていた銀貨を一枚手に取った。

「お前、何やってるんだ!神殿の奉納物に手を出すな。呪われるぞ」

「盗みじゃない、ちょっとだけ借りるんだ。研究のためため!レジェンドをちょいと読んで、成分を調べたら返すよ」

「お前、こんな場所でもふざけんなよ。ほら、返せ、この野郎」

「分かった、返すよ、カッシウス。そう怒るなって。未来の研究のためを思っただけだ」

「神殿のものを盗むのはヤバい。バレたら死罪になる可能性だってあるんだぞ」

「分かった、分かった。銀貨はちゃんとここに返したから。ほら、これで良いだろう?キミは変なところで真面目だよな」

「キチガイには付き合いきれん」

カッシウスはマークに呆れ、神殿の奥に一人で進んでいった。



To be continued...



【Route:ΔΛΦOI 3.141592 第二次中間報告書】

現時点で判明している事項を下記に報告する。

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アムラシュリング
古代イランの特権階級が使用していた守りの指輪。「剣の指輪」「盾の指輪」の二つが存在する。所有者は自身の周りに十二本の剣、十二枚の盾をそれぞれ瞬時に呼び寄せることができる。


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ウェポンツリー
アムラシュリングの力によりマークが呼び寄せることができる12本の剣。
「古代ローマ編」では、ヘラクレスを討伐する際に一部が使用された。
左から順に剣の名称と特徴を明記していく。

プギオ
古代ローマで使用された短剣。木の葉状の形が特徴。身幅が広いため、小型だが高い殺傷力を誇る。携帯性に優れ、土木作業にも使用された。

グラディウス
古代ローマで使用された鋼の剣。切れ味が良く、小回りも利く優れた中型剣。木製の盾や薄い鉄製プレートの防具なら余裕で貫通する攻撃力を持つ。

ピルム
古代ローマで使用された投槍。敵方に再利用されないように一度投げると壊れる精巧な造りになっている。相手の盾を使用不能にするために使う。

ケペシュ
古代エジプトの鎌状に刃が湾曲した剣。凄まじい切れ味を誇り、相手の防具を容赦なく叩き切る。クセがある剣で、扱いに慣れるまで時間がかかる。

サイズ
中世西洋の騎士たちが使用した刀身が長い剣。リーチが長く、戦況を有利に展開できる。マークは「ナイト」の愛称で呼んでいる。

レイピア
フランスが開発し、スペインが改良した針のように細い刺突専用の片手剣。軽量なため、素早い攻撃が可能で、体格を問わず使用できる。

クレイモア
スコットランドの大型剣。剣の名がそのまま「大剣」を意味している。物凄い重量だが、一撃で相手に致命傷を与えられる強力な一本。

日本刀
日本で独自に発展した強力な刀剣。重量があり、両手で使用する必要があるため、盾を持つことができない。全パラメーターを攻撃に寄せて特化した造りのため、戦い方に高度なテクニックが要求されるが、世界の刀剣の中で最も高い切れ味を誇る。

レガリア
「継承」を意味する架空剣。柄にレールが付いており、刀身の付け替えが可能な造りになっている。剣の造り自体が世代交代を象徴している。

ヘリテージ
「遺産」を意味する架空槍。軽量で強力な刺突が繰り出せる優れた長槍。その名を象徴して、宝石の象嵌など華麗な装飾が施されている。

レックス
「王」を意味する架空剣。柄がライフルの持ち手のような特殊な形状をしている。剣と銃が組み合わさったような形は、富と栄光という王権を象徴しているかのようだ。

オリエンタルウィンド
「東の風(困難)」を意味する架空剣。刃が二つに分かれた珍しい造りになっている。どんな困難も二人なら乗り越えられることを象徴し、刃がひとつの柄に二本付いている。

マークは世界中の様々な剣をコレクションしているようだ。最後の四本の剣、「レガリア」「ヘリテージ」「レックス」「オリエンタルウィンド」は、これまで報告がなかった架空剣であり、マークが独自で開発あるいは冒険の過程に起こった何らかの出来事で手にしたものと思われる。


Shelk 詩瑠久🦋

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