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【マークの大冒険】 ブルートゥスとカッシウスの追跡

前回までのあらすじ
命からがらブルートゥスとカッシウスから逃れたマークと瞳は、カピトリヌス丘に位置する神殿に身を寄せ、打開策を練っていた。その頃、ブルートゥスとカッシウスは何者かの邪魔によって、マークらの追跡を足止めされていた。


しばらくすると、ブルートゥスとカッシウスを閉じ込めていた赤く堅固な長槍は灰のように崩れて風に飛ばされていった。


カッシウス「槍が消えていく……」

ブルートゥス「なあ、カッシウス、見たか?」

カッシウス「ああ、ウィクトリアが飛翔していた」

ブルートゥス「なぜローマのウィクトリアが旅人のアイツに味方するんだ?」

カッシウス「さぁな。だが、非常にまずい状況だ。勝利の女神の加護か。よりによって、一番厄介なヤツがあの女神の力を持っているのか。それも、おそらく自覚なしにだ。このままだと計画どころか、俺たちすら危ういかもしれない。何としてでも、アイツからあの力を奪わないと」

ブルートゥス「そうだな。それにウィクトリアの力を手に入れれば、俺たちは生涯無敵になれる」

カッシウス「神とダイレクトに契約した結果、降神陣が身体から浮き出る俺たちと違って、アイツの場合は間接契約に見える。だとすれば、契約の証の何かを身に付けているはずだ。それを奪えばいい」

ブルートゥス「契約の証、か。デカいハヤブサを呼んだ時は、片眼の護符を持っていたよな」

カッシウス「それに似た何かを持っているはずだ」

ブルートゥス「そういや、アイツ、カエサルとかアントニウスによく引っ付いてコインをくれっていってなかったか?それもただ単に金を要求してるんじゃなくて、まるで集めている感じだった……。そうだ!確か同じデナリウス銀貨でも絵柄が違うのがほしいとか、変な給料のもらい方をしてたな」

カッシウス「もしやコインの中にウィクトリアを味方につける特別な一枚が入っている?意図的に使っていたウジャトと違って、自覚がないとなると、その可能性が高いな」

ブルートゥス「だろ?」

カッシウス「コインは流動的なものだが、アイツがそれを集めているとしたら、きっと市場なんかでは使わない。だが、万が一使われて他の者の手に渡っても、計画遂行の上で支障が出る可能性もある」

ブルートゥス「ああ、だとすれば、すぐにでも追いかけないとな。ただ、契約できるのは一人一柱の神までじゃなかったのか?」

カッシウス「わからん、その辺については全くの謎だ。一人で二柱以上の契約ができるなると、それもかなり厄介だ。一番問題なのは互いの同意がなくとも、契約が自然に結ばれている可能性があるってことだ。間接契約の場合は、互いの同意がなくとも、契約の証となる物を所持しているだけで、一方的な加護が受けられるのかもしれん。神の力は人知を超えている。だから、これも推測にしか過ぎない。だが、ブルートゥス、臆することはない。俺らが二人とも契約者で、同じ志を持っていることは最大の武器だ。マルスとアポロの加護がある限り、先のような不意打ちがなければ、ローマ内での戦いはほぼ無敵と言える。だが、ローマから出た場合はそうとも限らない。神域から遠くなるほど、神の力は弱まる。あいつのホルスもここがエジプトでないから、本領が発揮できていないだけなのかもしれない。それこそ、エジプトに逃げ込まれたらまずい。あいつがローマ市街から抜け出す前に何としてでも決着をつける必要がある」

ブルートゥス「こうしてる間にも市街から離れているかもしれない。先を急ごう」

カッシウス「あの風貌じゃ、どこに行っても目立つ。すぐに見つかるさ。町中に目撃者がいるだろう。そいつらを金で買えばいいのさ、いくらでも吐いてくれる。だが、力づくでは先の二の舞になる。最初は和解を持ちかける振りをしよう。アイツの狙いはカエサル の救命だ。そこを逆手に取って欺こう。仮に力づくになっても、二度も同じ手は食らわないさ。あの槍が繰り出される瞬間、ものすごい光と熱が発生していた。アポロの予知の力があれば、次はかわせるさ」

ブルートゥス「さすがは、ガイウス ・カッシウス・ロンギヌス。狡猾だな。頼りになるぜ」


Shelk 詩瑠久 🦋



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