【マークの大冒険】 最後の選択 〜カッシウスという男〜
【前回までのあらすじ】
前44年3月15日。マークはカエサルの暗殺現場を前にして、歴史の改竄と分かっていてもブルートゥスらの計画を阻止しようとする。だが、ブルートゥスはローマの神アポロと契約を交わしていた。ローマの伝統である共和政を死守しようとしていたのだ。一方、マークも対抗するべくウジャトの封印を解き、ホルスを降臨させるのだが......。
ホルスは振りかざした黄金の拳をアポロ目掛けて勢いよく放つ。拳は炎を纏い、肩甲骨からは何本もの黄金の羽が勢いよく突き出す。
だが、次の瞬間、眩い閃光とともに爆音が地面を揺らした。
ホルスの拳は、アポロの顔面直前で停止している。拳に剣が貫通し、動けなくなっていた。
マークが前方を見るとカッシウスから稲妻のような電撃が出ていた。そして、彼も身体中に紋章が表れている。
「なに......!カッシウスも契約者なのか!?剣の降神陣が身体中に出ている。まさか、マルスッ!?まずい、ローマの始祖の神が彼らに味方している?」
拳を剣で封じられ、身動きが取れなくなったホルス。その首を巨大なマルスが、もう一本の大剣で突きつけていた。
マルス
戦いを司るローマの男神。ローマの建国者ロムルスの父。ローマでは最も偉大な神の一柱。
「ダメだ......さすがに二対一じゃ勝ち目がない。やっぱり歴史は変えられないのか......」
マークが傍を見ると、カエサルは爆風の衝撃で気を失っていた。
「クソう、これじゃ身動きが取れない。ここまでなのか......」
「マーク!!俺たちの邪魔をするなら、お前にも死んでもらう」
カッシウスが身体中に稲妻を放ちながら叫ぶ。
「すまんな、マーク。旅人のお前を巻き込みたくはなかったが、共和政はローマの命。共和政の創始者ブルートゥス氏族の名にかけて、俺はここで諦めるわけにはいかないんだ。お前が契約者だったのは想定外だった。だが、アポロの予言で今日の計画に邪魔が入ることは事前に分かっていた。だから俺らはあらゆる想定外を考慮して、この計画を練った。誰にも崩せない計画をな。マーク、残念だよ。どうやらお前は国に帰れそうにないからな」
ブルートゥスは、プギオの先端をマークの方に向けて言った。
「ここでボクの冒険もおしまいなのか......」
砂まみれのマークは、勝算がないことを悟りうなだれる。
ブルートゥスとカッシウスが、プギオでとどめを刺そうとマークとカエサルの方に近づいてくる。
すると突如、目の前に幾多もの光線が上空から降り注いだ。
驚きのあまりマークは一瞬、何が起きたのか理解できなかった。眼中には、周囲を真っ赤な長槍で囲まれて動けなくなっているブルートゥスとカッシウスがいた。それは、まさに檻だった。二人は全力で槍を蹴飛ばすが、びくともしない。上を見やるとアポロとマルスも同じように槍の檻で身動きが取れなくなっている。
「護封槍?伝説には聞いたことはあるが、見るのは初めてだ。だけど、誰のものだ?ホルスのものじゃない。とすると......いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。ひとまず撤退だ。この状況は不利すぎる」
瞳がマークに近づいて来て、安否を確認する。
「大丈夫?カエサル、死んじゃった?」
「いや、気絶してるだけだ。何が何だかわからないが、奴らが足止めを食らっている間に撤退しよう」
「オッケー!」
「カエサルを運ぶのを手伝ってくれる?」
「もちろん」
「タイムドライブ!!ここから撤退する。ハッチを開けてくれ。気絶したカエサルを自分たちで運んでたんじゃ、相手に追いつかれる。でも、キミに三人乗るのは無理だから、とりあえずカエサルを乗せて匿っていてくれ。集合位置は後で座標を送る」
「推奨できないが、了解」
タイムドライブの音声と同時にコクピットのハッチが開く。マークたちはカエサルをタイムドライブに乗せると、元老院議場から脱出する。
「行こう、瞳。ここはあまりに目立ちすぎる。いったん身を隠そう」
「うん」
マークと瞳は全力で駆け抜けた。背中からはブルートゥスとカッシウスの呼び止める叫び声が聞こえる。だが、マークたちは一度も振り返らなかった。
To be continued...
Shelk 詩瑠久 🦋
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