見出し画像

あなたはスマホ中毒ですか? 〜本の紹介:『Newton スマホと脳の最新化学(2023年1月号)』〜

スマホには中毒性がある

あまりこまで断言している記事や特集がないのは気のせいだろうか。

スマホは確実に中毒性のあるもので子どもの生育への影響についても懸念が残るものなのだが、あまりそのような議論が保育・教育業界で盛り上がっていないのが不思議だ。教育現場で感じるのは、子どもたちの日常生活におけるスマホとの距離感がとても近いこと。果たしてこのままでいいのだろうかと考えさせられる一冊が、この『Newton スマホと脳の最新化学(2023年1月号)』である。

電車に乗れば、一目でわかる。
座席にいる人のほぼ全員がスマホを片手にし、食い入るように操作している。昨今では当たり前の光景かもしれないが、客観的に見ればかなり異質な光景である。ひどい人はスマホを持ちながら歩いたり自転車を漕いだりと、それほど夢中である。

私はここに断言する。

スマホには中毒性がある

電車でスマホしかいじられない人は、スマホ中毒者である。

スマホにどれほど中毒性があるかは、乳幼児の行動を見ていれば明らかだ。泣いている赤ちゃんにスマホを与える親がいるが、与えた途端に赤ちゃんは泣き止む。そして、ずっとスマホを眺め続ける。移動するからということでスマホを取り上げると、また泣き出す。大人が食べてもおいしいと感じるアンパンマンの煎餅をあげても泣き止まないのに、スマホだと簡単に泣き止み、こちらも食い入るようにじっと眺めるのである。これは何かかしらの特殊な理由わけがあると考えて間違い無いだろう。そして、この本からはそれがただの「癖」ではなく「中毒」であることが見えてくる。

大人も子どももどうしてスマホに夢中になるのか。一度自らの生活を振り返って、考えてみたいトピックである。

狩猟時代からの「人間の脳」

人間の脳は狩猟時代から変わっていないらしい。結局のところ、スマホ中毒の理由の大部分がそこで、私たちは「報酬系」というものに行動を左右されている。

いわゆるドーパミンという物質。これが私たちの進化を手助けしてきた。
かつては生きる環境がとてつもなく厳しかったこの地球上に人間は生を受け、未知の世界を生き抜く必要があった。例えばカロリーなんてのは生存のためには必須要素で、高カロリーな食べ物を食べるほど生存の可能性が高まった。

カロリーを摂取すると脳が喜び、またカロリーを探したいという衝動に駆られ、道なき道をいくことによってカロリーを得られる。

高カロリーのものを食べるとドーパミンが放出されるのはこの脳の仕組みのおかげであり、生き抜く原動力を与えてくれるドーパミンのおかげで私たちは命を繋いできた。その「カロリーがあるかもしれない」という期待感からドーパミンが放出される仕組みは狩猟時代から変わっておらず、カロリーあふれる現代において肥満が問題とされるのは、ある意味当たり前なのかもしれない。

スマホも同じで、「新しい情報が得られるかもしれない」「いいねがもらえるかもしれない」というような情報やSNSなどへの期待感があふれており、私たちはスマホを触らずにいられない。InstagramやTwitterなども、スクロールすればするほど新情報が常に入ってくる。「もっとおもしろいものはないだろうか」と期待し、ドーパミンが出て、見つけるとより活性化され、さらにスクロールする。

この無限ループから、私たち人間は抜けられずにいる。

集中力を削ぎまくるスマホのリアル

科学雑誌のNewtonには必ず参考文献が示されており、さまざまな研究結果や実験結果が載せられている。ゆえに彼らの説得力には凄まじいものがあり、読むたびに自らの行動を考えさせられる。

今回の雑誌の中で取り上げられている実験の中には、集中力にまつわるものもある。詳しくは実際に雑誌を手に取って読んで欲しいのだが、とにかくスマホと紙媒体では読んだ時の脳への情報の入り込む量が異なるらしい。実験によると紙媒体で読んだ方が情報がよりインプットされており、タブレット端末等で読む行為に一石を投じる形になった。スマホ等の端末からの刺激は私たちが考える以上のもので、私たちが知らないだけで、スマホの破壊力はとてつもない。(本vsタブレットは一長一短で、要は使い分けである。)

スマホがポケットの中にあるだけでも集中力が削がれるという記事もある。やはり新しい情報が気になってしまい、つい3分もしないうちにまたスマホを開けてはスクロールしてしまう。そんなドーパミンの衝動に駆られて勉強がはかどらない経験は、誰しもが持ち合わせているのではないだろか。

実際、私も高校時代から勉強をする際、スマホはどこか見えないところに置くようにしている。目の前にあると気になるし、文字通り「気がつくと」いつの間にか触ってしまっている。当時はそういう癖(=習慣)がついてしまったのではないかと考えていたが、現代科学が紐解くにそれはドーパミンという報酬系の影響らしい。スマホという意識が生まれるだけで、私たちはどうしてもそちらに気がいってしまう。

それはどうしようもなく、脳の仕組みの影響なのだ。

だから集中したければ、スマホはどこか目の届かない、離れた場所に置くべきだろう。通知はもちろんOFFにして、気が散らない環境を整える必要がある。

スマホといかに付き合うか

今回紹介している『Newton スマホと脳の最新化学(2023年1月号)』には、スマホの脳への影響だけではなく、スマホとの付き合い方について提案をしてくれている。どうしても使いすぎてしまうスマホだが、それを抑制する策は意外にもたくさんあるようだ。

色々な提案の中でも私が実践したいと思って現在も続けている策がある。それは、スマホの画面の色をモノクロにする方法だ。スマホの鮮やかな色の画面はスマホに夢中になる原因の一つであり、現に私たちは刺激をたくさん受けている。だが、その色鮮やかな画面をモノクロにするだけでもなんだかスマホを使うのが退屈になり、別のことをしようと思うのだ。

実践してみるとわかるのだが、画面がモノクロになるとSNSや動画視聴が特におもしろみに欠ける。色がないので、写真なり動画なりに写っているその光景や物がはたしてどんなものなのか、なかなかわかりづらい。現に私も、隙間時間などにスマホを開こうという瞬間が減ったように感じる。何せ、スマホを開けばそこには初期のテレビのような光景が広がっており、おもしろみはあるのだが、色鮮やかなスマホほどのおもしろみは確かに無い。スマホをどうしても使ってしまう人には、おすすめの抑止方法と言えるだろう。

ちなみにiPhoneやAndroidで画面をモノクロにする方法は以下の通り。

まとめ

今回紹介した雑誌には、この記事で触れたスマホの負の影響の他にも、様々な影響をまとめている。それは人間の脳そのものへの影響のみならず、睡眠や人間関係など、私たちの生活の身近でかつ欠かせない部分への影響など、幅広い物がある。読めば必ず自らを省みるきっかけになるので、今後のスマホとの付き合い方を考えるためにもぜひ手に取って欲しい。

また、この雑誌ではスマホを使うことによるポジティブな影響や人間の新たな進化についても触れている。スマホと人間というテーマで考えたとき、どうしても負の関係性ばかりに目がいってしまうが、それだけではないという新たな視点を提供してくれたのは興味深い。とはいえ、その点を踏まえたとしてもやはり負の影響が大きいのがスマホという存在であると私は感じた。

「スマホの使い方について考える=時間の使い方について考える」ことだ。

だからこそスマホとの付き合い方を改めて考えるべきだし、自分自身の人生をしっかりと歩みたい人であれば、なおのこと一考する価値がある。

また、大人がスマホ中毒になっているのだから、子どもはもっと中毒になりやすいはずである。脳がまだ成長段階であることを考慮して、私たちはスマホと子どもたちの距離感について考え直さなければならない。確かに、子育てにおいてスマホやタブレット端末がなす技は素晴らしい。子どもの注意を簡単にそこに向けられるからだ。だが、そんな甘い話には裏があるわけで、使いすぎていないか一度振り返って欲しい。

一般家庭のみならず、保育・教育現場においてもスマホやタブレットを使いすぎていないか省みる価値がある。それらの現代の道具を使うことは簡単だが、先生たちにはぜひ現場の先生たちの技量を使って保育・教育にあたってほしい。

そんな感じで、「スマホ=中毒性のあるもの」という議論が盛り上がるきっかけや人々に新しい視点を与えられたらと思い、この雑誌を紹介した。この雑誌の他にも「スマホ脳」というような他の本もスマホとの付き合い方を考える上でおもしろい視点が得られるので、ぜひこちらも手に取って欲しい。

2023.01.26
ShareKnowledge(けい)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?