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8.22 UNISON SQUARE GARDEN「USG 2020 “LIVE (in the) HOUSE 2”」

ユニゾン、2度目のオンラインライブ。前回公演はファン投票トップ30、そして今回は41-70位からセトリが組まれた。田淵智也(Ba)のブログでヒントこそあったものの、シークレットな選曲に期待で胸が躍る。アイコングラフィックが映し出される中、SEのイズミカワソラ「絵の具」がかかる。そしてライブステージがお目見え。今回は事前にライブハウスからの発信と告知があったが、セッティングはなんと3人が向き合うような仕様。新鮮な画に驚いている内に、1曲目「マスターボリューム」のイントロが耳をつんざく。揺れるカメラが臨場感を醸し出し、さながらMVのような接写の数々が迫力を持つ。この時点で前回とは全く違う視聴感。2曲目「MIDNIGHT JUNGLE」のハードスカなリズムが熱帯夜にぴったりな狂騒を生み、どんどん体を踊らせる。

3曲目「fake town baby」まで攻撃的な楽曲の投下を止めない。向かい合う3人の音のぶつかり合いが可視化されているかのよう。今日はホールでは見せなかったカオスで破壊的なユニゾンを見せつける日なのか。しかし「今日もMCなし!」の一言で始まるのはポップな「フライデイノベルス」で、3方を黒幕に囲まれたセットの全貌が見える。幕に埋め込まれた照明が眩しくバンドを照らし、その煌びやかな音色を彩る。しっかりとポップサイドのカッコ良さを打ち出しつつ、インディーズ時代の「ライトフライト」を今の屈強なサウンドでリブート。展開/音数は少ないが紛れもなくユニゾンイズムが宿り、セットリストでも浮かない。次曲「サンポサキマイライフ」も1st収録だが未だに瑞々しく色褪せない。どの時代にも前傾姿勢な恰好良さがある。

鈴木貴雄(Dr)がヘッドフォンをつけると同期サウンドが流れる曲が始まる。本日は「like a coffeeのおまじない」。ホーンセクションの音色に小気味いいリズムが折り重なる軽やかなナンバー。しっかりと序盤の熱をスマートなノリに変換しつつ、デジタル時計が「23:25」の時刻を示して、同曲のインパクト大のイントロへ間髪入れず繋げる。このセッティングでは田淵も動きづらいかと思いきや、全く気にせず狭いフィールドを動き回る。斎藤宏介(Vo/Gt)は風に吹かれながら涼しげに歌い上げる。そういえば前回は喉の不調があったようだが、今回はキレキレのハイトーンボイス。天井から光の柱が降り注ぐ演出で、まるでクライマックスのようだったがまだまだ中盤。しばらくの暗転を挟むと、田淵と斎藤が椅子に座り楽器を抱える珍しい形態に変わる。

ここからはアコースティックコーナー。普段のワンマンライブでは行わない試みも、セットチェンジも自然に行えるオンラインならば出来るのだろう。多数のキャンドルに囲まれたセットの中でまずはライブ未披露のカップリング曲「ぼくたちのしっぱい」。前傾姿勢な演奏も当然最高だが、こうやってじっくりと音を紡ぐユニゾンも別次元のカッコ良さだ。切々と後悔の念を募らせる斎藤の歌声もスッと染み入る。続いてはアコギによる新アレンジが施された「チャイルドフッド・スーパーノヴァ」。ファニーで突拍子もない原曲だが、穏やかな響きを携えて新装。斎藤は途中でホイッスルを吹き、ほっとする時間。同セットでの終曲は斎藤が座ってエレキを弾く「未完成デイジー」。溢れんばかりの幸福感を画面越しに届けた後、再び暗転。

斎藤が残る1本のキャンドルを吹き消して(実にセクシー)、鈴木によるドラムソロ。所謂ぶっ叩きまくるプレイではなく、こんなところも打楽器に?!というようなユニークなアプローチで仕掛けるドラムソロ。これもまた手持ちカメラが近距離で映し続ける気迫たっぷりのプレイであった。そのままバンドインし、新たに付け加えられた妖しげなイントロから「マイノリティ・リポート(darling,I love you)」。スイングし続けるグルーヴがじわじわと熱を高め、爽快なドラムイントロへとパスされる。ギターが唸り、斎藤が歌い出すのは「何かが変わりそう」。幕も外れ、カラフルなライティングが希望を描き出す。どんな瞬間でもアイデアとユーモアを持って、この今を自分たちの為に輝かせようとするユニゾン3人が声を合わせて歌うラスサビ頭、鳥肌だ。

「10% roll,10% romance」では冒頭で田淵があまりにも予想外の動きをしたからか斎藤が笑いながら歌い出す場面も。こういうリアリティしかない瞬間が思いがけず収められてしまうのもライブの醍醐味だ。複雑のキメから即座に「Catch up,latency」の鮮やかなアルペジオへ。勢いを止めないことにかけてはユニゾンの間合いはあまりにも優れすぎている。そしてリアルライブでもガチャガチャしまくる1曲「crazy birthday」で無茶苦茶になりまくる。鈴木は目イキっぱなしで野性を迸らせてるし、田淵は斎藤との距離を縮める。果ては斎藤のマイクスタンドを奪い、勝手に向きを変えてしまう。しかしそれは普段のセッティング通りで、客席の方を向いていたのだからなかなかグッとくる。田淵は最終的にマイクを倒し、寝そべってコーラスをしていたけれども、照れ隠しに見えちゃう。シメにちゃんと、こっちを向いてくれた。

通常営業のステージセッティングに変わって演奏される最後の1曲は「オーケストラを観にいこう」。ユニゾンの中でも屈指のもどかしい恋慕を描いた曲だが、客席に向けて歌われている、と思えば何だか強い信頼を寄せてくれているのでは?と勘違いしそうになる。やすっちい愛や絆を蹴っ飛ばして突き進む彼らが時に見せるストレートなメッセージ。<一瞬の連続が最高の楽譜になるように>の願いを真に受け止めてしまいそうになる。いや、もう受け止めてしまっていいんじゃないか、と。勝手にそうさせてもらいます。

オンラインでの対バン公演「fun time HOLIDAY ONLINE」を9月19日に行うという告知の間、チューニングの音が聴こえ続ける。もしや?と思って待機すると、「おまけ!」の一言と共に「Phantom joke」が。ファン投票1位の最新シングルをさながら1曲目のようなアグレッシブさで届けて閉幕。90分間、ストイックな演奏のみで全く飽きさせない時間。ロックバンドの現在地として、あまりにも強烈で真似できない境地。涙がこぼれそうな夜だ。

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-setlist-
1.マスターボリューム
2.MIDNIGHT JUNGLE
3.fake town baby
4.フライデイノベルス
5.ライトフライト
6.サンポサキマイライフ
7.like you a coffeeのおまじない
8.23:25
9.ぼくたちのしっぱい
10.チャイルドフッド・スーパーノヴァ(Acoustic)
11.未完成デイジー
12.マイノリティ・リポート(darling,I love you)
13.何かが変わりそう
14.10% roll,10% romance
15.Catch up,latency
16.crazy birthday
17.オーケストラを観にいこう
-おまけ-
18.Phantom Joke

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