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7.15 UNISON SQUARE GARDEN「USG 2020 “LIVE (in the) HOUSE”」

5月に開催が決定してからというもの、セトリをファン投票を元に決めるとか、通販でフードやグッズを販売したりとか、種々の催しを仕込んで期待を高めてきたこのライブ。オンラインでもやっぱり告知は早い方がいいのかも、とか考えてしまうくらいには開催前からかなりのワクワクをくれるライブである。20:00に開演の暗転が画面で起こり、お馴染みのSEが流れ始める。


イズミカワソラ「絵の具」がかかる中、舞台裏で待機する3人の背中が映し出される。順番にステージに向かっていき、セッティング。最終的に「絵の具」はフルサイズでかかったのだが、これは節目のライブの時にのみ行われる演出である。彼らにとって、記念すべき初のオンラインライブ、そう考えると納得のオープニング。SEが切れた瞬間に、「mix juiceのいうとおり」のサビが放たれる。ライブという彼らにとっての通常営業を止められたこの4カ月、その逡巡や葛藤を蹴り飛ばす魔法を自らにかけるような幕開けだ。


斎藤宏介(Vo/Gt)の「お待たせ!」から「オトノバ中間試験」のカラッとした音色が贈られる。まさに<楽しいを答え合わせ>な時間の後、間髪入れずに「桜のあと(all quartets lead to the?)」だ。ライブでは会場のボルテージを一段階引き揚げたり、大団円に繋げる曲として機能するが配信ライブでもそれは同じ。観客のクラップはなく、3人の歌声だけで聴くこの曲のコーラスは実に新鮮である。そしてやはり<今 目の前の君が明日を生きれるくらいには>というフレーズは心を打つ。何度も聴いてきた言葉は一層強く響くのだ。


「MCなし!」という斎藤の一言の後、刻まれるビートが「きみのもとへ」に繋がっていく。この記事でも書いた通り、やはり距離を超えて届くというこの状況にしっくりくる。多幸的なムードを引き継いだまま「君の瞳に恋してない」はもうクライマックスか?と思わせる祝祭感に溢れる。田淵智也(Ba)のステップはソーシャルディスタンスを保ったり、保たなかったりしながら、曲の高揚感を体現する。斉藤のギターソロ前の田渕との謎の小競り合いも楽しい。客がいようがいまいが、勝手に楽しくやるのがユニゾンなのだ。


聴き慣れないイントロから、鈴木貴雄(Dr)のドラム乱れ打ちを経ての、すごく聴き慣れたイントロへ、、「オリオンをなぞる」である。寂しい夜にポジティブな鼓舞が駆け抜けるような1曲、これもこの状況だからこそ伴う意味がある。田淵の「最高ロマン!」の叫びがいつもより強調されていたのもそのエネルギーを引き立てていた。アウトロまで昇り詰めた後、「I wanna believe、夜を行く」へ!「TIGER&BUNNY」にちなむ繋ぎだ。ヒーローが不在ならば心に宿せと言わんばかりに眩しいアンセムが降り注いでいく。


MCはなく、真っ暗なステージの上でそれぞれが音を確かめるユニゾンのライブ特有の時間もオンラインで再現されていたことに少し感動する。あぁ、これこれ、この緊張感!と嬉しくなる。そしてここから少し引き込むゾーンに。斉藤が弾き語りで1番を歌い切った「スカースデイル」は、3人のスポットライトが当たる中で穏やかに演奏。アッパーな部分もあるが、この日は優しさ成分が多めだったように思う。クールに空気を変える「静謐甘美秋暮抒情」も配置が見事。本当に、実際のワンマンライブの構成とよく似ている!


そう、配信は代替ではなくユニゾンならではのワンマンライブの見せ方の1つなのだ。定番のドラムソロも勿論ある。配信という形式を活かし、鈴木目線でその怒涛のプレーを目撃できるという演出も!期待感を高める中、セッションを経ての「Phantom joke」では彼らのカオティックなグルーヴが露わになる。この曲からバックスクリーンが登場。映し出されるサイケデリックなグラフィックとともに1音1音をじっくり聴くと、とことんまで摩訶不思議な展開を持った1曲だと思う。これが入る次のアルバム、どうなっちゃうんだ?


しゅわしゅわとした水の映像がバックに映される。ライブでは6年ぶりの披露となる「to the CIDER ROAD」は清らかに轟く。クレーンカメラを用いたスケール感ある映像も相まって、久しぶりの披露ながら堂々たる聴きごたえだった。鈴木がカウントを2回絶叫した後、ライブでの大熱狂が目を浮かぶような「場違いハミングバード」を投下。汗だくな田淵と鈴木に、涼しげな斎藤という、ライブ終盤に馴染みある光景が広がる!興奮の果て、「シュガーソングとビターステップ」のポップな肯定感には思わず感極まりそうになった。


ユニゾンのライブ美学を歌ったとも言える「箱庭ロック・ショー」では手持ちカメラがステージへ。3人それぞれを接写した後、ステージ上で演奏する3人をすっぽりと1つの画角で収める。<小さな箱庭だってほら、無限を解き放って 現実に負けないスケールで 新世界が描けるなら>というラインをそのままトレースしたような演出!ここにある新世界から放たれるラストナンバーは彼らの原点、完全無欠のロックンロール「フルカラープログラム」だ。ラスト、3人の背中越しにNHKホールのがらんどうの客席が映される演出。この風景の中に、自分をねじ込む想像力を彼らは信じてくれていたんだと思う。


しばしの小休止の後、斎藤がアルバム告知とともに、高音が出づらかったことを悔しそうに話す(確かに「桜のあと」の終盤は気になったがそれ以外はそんなに感じなかった)。それをフォローする2人の姿もとても素敵だし、来月のリベンジを誓う斎藤の凛々しさったらなかった。そしておまけとして歌われたのが9月30日リリースの新アルバム『Patrik Vegge』より「弥生町ロンリープラネット」。少しファニーなイントロから洒落たコード、リズムへ、そして寂しげに歌い上げるバラードへ、、と展開を続ける劇的な1曲であった。最後に<春が来る>と歌った後、ラストナンバー「春が来てぼくら」へと繋がる流れはもう劇映画である。アルバムの曲順もこの通りなら、いいな!


「春が来てぼくら」のインストverが流れる中でエンドロール。大勢のスタッフとともにこの日のステージを作り出していくドキュメントが映される。本編部分はファン投票のトップ30から全て選ばれており(トップ10は全曲披露)、珍しく我ら"物好き"に向けてくれたセットリストであったが、その曲順や見せ方には彼らチームの拘りが結集していた。リスナーとバンドで作った、とか言うと怒られそうだけど、そんなことすら思ってしまうくらい、気持ちよくあるべきところに欲しい曲がある、素晴らしいワンマンだった。


-setlist-
1.mix juiceのいうとおり
2.オトノバ中間試験
3.桜のあと(all quartets lead to the?)
4.きみのもとへ
5.君の瞳に恋してない
6.オリオンをなぞる
7.I wanna believe、夜を行く
8.スカースデイル
9.静謐甘美秋暮抒情
10. mouth to mouse(sent you)
-ドラムソロ-
11.Phantom joke
12.to the CIDER ROAD
13.場違いハミングバード
14.シュガーソングとビターステップ
15.箱庭ロック・ショー
16.フルカラープログラム
おまけ
17.弥生町ロンリープラネット(新曲)
18.春が来てぼくら


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