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オンラインライブを観た⑮(8.11 Maison book girl/8.15 lyrical school)

8.11 Maison book girl「孤独な箱で」(アーカイブ8.31迄)

前回の配信ライブがとても好きだったので今回も購入。揺れるハンドカメラが渋谷WWWに入り込むと、「bath room」のクラップが打たれ始め、点滅する照明の中、ステージにはブクガ4人の姿が、、と没入感をたっぷり高めるオープニング。美しいハーモニーを聴かせる「bath room_」のバージョンを届けた後、「end of Summer dream」で夏の匂いを漂わせる。ブクガは夏を描いた曲が多いがそのどれもがべっとりとした死の余韻と冷たい質感に満ちたものが多く、日本の夏には実にしっくり来る。彼岸を見つめる歌ばかりだ。

「rooms_」は照明効果と一体となったキメを連発。白線がちらつくエフェクトなど、徐々に独自の演出が画面を侵食していく。「faithlessness」では歌詞の一部を音飛びかのごとく繰り返し歌い続けた後、Tomgggによる同曲のRemixを披露。メルヘンチックな曲調に即したエフェクトがかかる画面の中、コショージメグミと矢川葵は手でハートを作る、和田倫が笑顔を振りまく、井上唯もクールさを排した振る舞い。これが<2度目の朝>が許された世界なのか、それともライブ全体を覆い尽くす"夢心地"の象徴なのだろうか。

不意に流れるエンドロールは朗読曲「14days」をバックに巻き戻る。野菜や卵を切ったり剥いたりする手だけが映し出されるムービーと共に、別エンドへと向かうべくライブは中盤へ。フロアに降りて披露された「影の電車」のシリアスな響きは<絡まった夢の続き、ひとり知らないままで>と結ばれる。再び夢へと引き戻されたまま、不穏で艶やかな「悲しみの子どもたち」、そして「十六歳_」が瑞々しく歌い上げられる。トラウマへと触れる多くのブクガ曲たち、物語はその中核へと迫るように終盤へと向かっていく。

朗読曲「教室」。学校の机がフロアに置かれ、コショージが座る。ステージでは他3人が歌詞に合わせて動きをつけていく。退廃とした学園の感情が綴られた後、コショージは机に突っ伏す。近づいて3人が歌い出すのは「夢」。覚めた記憶を手探りするようにゆったりと進む楽曲を終えた瞬間、シャッターが切られる。眠りにつく4人を捉えたチェキが「YUME(inst)」をバックに炙り出された後、チェキは本の間に挟まれる。その撮影時刻20:56を井上唯がメモし、ろうそくの火で焼き落とす、、保存されることなく曖昧化された情景、しかし物語の中に確かに息づく、と解釈すればこれはブクガが歌い連ねてきた夢やトラウマと合致する。難解だが核を貫いていく美しい演出である。

ラストは「karma(Mii Remix)」。このライブはここに全てがあったと言っても過言ではない。メンバーの体を埋め尽くす様々なデジタルエフェクト、終盤にビートが加速していく中で、過去のライブ映像や様々なシーンをカットアップして高速で織り交ぜていく。目を奪われざるを得ないドラッギーでスリリングな映像である。最後はステージを降りた4人が自身の過去衣装を混ぜたり投げたり、、アウトロを引きずりながら渋谷の街へと4人が駆け出して終幕。業=カルマと決別するかのように、"孤独な箱"から外へ向かう、、意外にもここで彼女たちが見せたエンディングは爽快なように思える。虚構から現実へ、そんな流れは一方でループ構造も持ち、それもまたブクガの持ち味だ。彼女が次にどの地点へと立ち、何を喚起させてくれるのか。待つのみ。

-setlist-
1.bath room_
2.end of Summer dream
3.rooms__
4.faithlessness
5.faithlessness(Tomggg-Remix)
6.14days
7.影の電車
8.悲しみの子供たち
9.十六歳_
10.教室
11.夢
12.YUME(inst)
13.karma(Miii-Remix)


8.15 lyrical school oneman live『真夏の絶好球』(アーカイブ8.22迄)

リリスク、5カ月ぶりの有観客ライブ。上野恩賜公園野外ステージ(水上音楽堂)で50%の集客にて実施されたとのことだが、炎天下の外に人がいる光景というのはそれだけで失われた夏、という趣。さて、DJ BIG-Dの登場とブザー音で開幕は「HOMETENOBIRU」→「OK!」。ライブでかかる機会は少なかったはずだが、一気に盛り上がっていく様が観て取れる。稀代の名曲「プチャヘンザ!」で完全にいつものモードへと切り替わった感じ。基本、メンバーの振る舞いはフリーフォームなリリスクだけど、この曲で時たま振り付けが混ざっていく様はまた丁度良く、その場のグルーヴを感じさせてくれる。

「DANCE WITH YOU」など観客へ向けて放たれる様子が可視化される曲はやはり楽しい。リモートライブにおける終始カメラ目線という発明のようなアングルも素晴らしかったがやはり現場の指差しには敵わない。「Dance The Night Away」、「enough is school」といったドープめな楽曲も心地よい。そして「Last Summer」のチルなムードが季節を味方につけてセンチメンタルに届いてしまう。<楽しいこと楽しいだけやったら楽しい>なんて言葉がこんな切実に響く世界、勘弁だなぁ。MCでも気ままなやり取りを繰り広げた後、怒涛の夏曲ブロックへ。「Avec Summer」「High5」など幅広い年代の楽曲を連ね、毎年のように夏曲を投下してきたリリスクの歴史を感じる。

「秒で終わる夏」、新曲「YABAINATSU」とエキゾチックでトロピカルなモードを提示、ほとんど熱帯気候な日本の夏へとジャストで刺さっていく。無茶苦茶に熱狂を巻き起こした後、コール&レスポンスを排してコブシで語り合う姿。もどかしさもあるが、その中でも多幸を溢れさせていく様はクールすぎる。新たなメロディアスアンセム「Bring the Noise」と「LAST DANCE」が柔らかく会場を踊らせる。「NOW!」でもう一段階、熱狂を引き上げた後、新曲「Summer Trip」でシメ。つくづく夏の野外が似合うクルーだ。ただ正直、himeとrisanoの顔の赤さとバテ具合が心配になってたので、もう少しMCを挟んでもいいかもしれない、楽しいより心配が勝っちゃ仕方ねえです。


-setlist-
1.HOMETENOBIRU
2.OK!
3.プチャヘンザ!
4.DANCE WITH YOU
5.Dance The Night Away(feat. Kick a Show)
6.enough is school
7.Last Summer
-MC-
8.Avec Summer
9.High5
10.秒で終わる夏
11.YABAINATSU
12.LOVE TOGETHER RAP
13.Bring the Noise
14.LAST DANCE
15.NOW!
16.Summer Trip

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