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[配信]3.13 ASIAN KUNG-FU GENERATION『25th Anniversary Tour 2021 Special Concert “More Than a Quarter-Century”』パシフィコ横浜

最高の新アー写とともに3/30の新アルバムリリースを控えたアジカン。昨年の結成25周年ツアーの追加公演という形で地元横浜で開催されたアニバーサリー公演をZAIKOの配信にて視聴。結論から言ってしまうと圧巻だった。記念碑的な位置づけとしても、音楽的探究の形としても、このうえなく理想的。願わくばこの座組でアリーナツアーでもどうですか、と言いたくなるような贅沢な2時間半である。以下、良かった点をざっくばらんに記載する。


まずステージ上の様子が明らかにいつもと違う。バンドセットの後ろには4段におよぶ客席が用意。ステージ上観覧席というファンクラブ会員のみに用意された座席だが、想像以上に人数が多い。さながら「リライト(2016)」の景色の再現である。消防法的にこんなにステージに載って大丈夫なのかと心配になったが、オーディエンスの熱狂がアジカンのバックに映るだけで1つの演出として機能している点があまりにも見事。こういった節目の公演ではファンに感謝を述べることが多いバンドだが、今回は演出面においてもそんなサプライズを用意していた。ファンを誇る、というバンドの姿勢のようで。

また、ステージ上観覧席の観客たちは皆白いシャツを身に纏っており、それは結果として映像演出を映し出すスクリーンとしての役割も果たしていた。さながら2015年の『Wonder Future』のツアーを彷彿とさせる、見事なプロジェクションマッピングが演奏とともに機能。「アフターダーク」の無機質なライティング、「ダイアローグ」での文字投影、アンコールの「遥か彼方」では歴代のライブ映像など多彩な演出。人が集まる、ということ自体が眉をひそめられるようになったこの数年。MCでも言及があったが、場に集まり分かち合うという意義深さを美しいステージ演出で表現し尽くしていた。


そして本公演には多彩なゲスト陣が出演。2010~2011年の大規模なツアーにサポートキーボードとして参加し、この時期に解散寸前の状況だったアジカンを繋ぎとめていた重要人物、フジファブリックの金澤ダイスケとともに「夕暮れの紅」と「ケモノノケモノ」をプレイ。「ケモノノケモノ」はゴッチがスタンドマイクとタンバリンを披露するなど、さらりと新たな一面を開示していた。また、長年サポートを務めた下村亮介も後半は全て参加。特に彼がアレンジを行い、ライブでは同期音と演奏されている「エンパシー」にシモリョーが生演奏で音を添える姿は感慨深く、格別な時間だった。

アジカンと同世代、少し下の後輩とともに、アジカンをリスナーとして聴いてきた世代のミュージシャンがゲストボーカルとして参加していたのも25年という歴史の重みを感じる。羊文学の塩塚モエカは、「ソラニン」でバンドを続けることを決めたという聴くとし、Homecomingsの畳野彩加は、後にホムカミを組むことになる福富優樹から「君の街まで」が入ったMDを借りたことがバンドを組むきっかけになったという。そんなエピソードを思い浮かべながらそれぞれがゲスト参加した「触れたい 確かめたい」、「UCLA」を聴くと、彼女たちのストーリーとも重なって否応なしに胸が熱くなった。

そして最新作にはROTH BART BARONより三船雅也がゲスト参加。雄大なコーラスワークを付与し、途方もないスケール感を持つ新曲「You To You」を完成させた。ギターロックのど真ん中を引き受けつつ、オルタナティブな感性とインディーロックへの目配せ、そして何より後進の才能をフックアップし続ける姿勢がこれらの見事なコラボワークをもたらし、アジカンを常に先鋭的なバンドとして存在させ続けているのだろう。新作『プラネットフォークス』には更にOMSBやアジカンのヘヴィリスナーとして知られるchelmicoのRachelの参加も発表済だ。きっとまた新しいアジカンに出会えるはず。


前半には特大ヒット曲を連発する時間が用意されており、それだけでもお腹いっぱいになるようなセトリだったのだが、コラボレーション曲にまざって織り込まれた楽曲たちのセレクトにも今この瞬間だからこそ鳴らしたい想いが滲んでいるように思えた。11年目の3月に送る「夜を越えて」はこの10年間アジカンが走り続けた源泉のような想いが刻まれているし、「転がる岩、君に朝が降る」はこの閉塞し不安が漂い続ける日々にそれでもロックンロールを歌うことの矜持が輝いていた。そんなライブが「今を生きて」で締められること、その温かみ。この世界に立脚するバンドの躍動があり続けた。


音楽的な面で言えば、村田一族ストリングスとTurntable Fimlsの井上陽介を迎えた「フラワーズ」と「海岸通り」は圧巻だった。繊細に重ねられたアンサンブルと柔らかな祈りが響く「フラワーズ」はアジカンの最新のバラードとして深く印象づいたし、大名曲「海岸通り」は季節感も伴い、またアコギの響きも折り重なって過去随一の名演だったように思う。青き日々の淡い願いを歌ったこの曲が今なお艶を増しながら圧倒的な1曲として君臨し続けているのもこの25年、常に更新を続けてきたバンドだからだろう。6月には名古屋で実に3年ぶりにアジカンを観れる予定だ。震えて待とうと思う。

<setlist>
1.センスレス
2.Re:Re:
3.アフターダーク
4.荒野を歩け
5.ループ&ループ
6.リライト
7.ソラニン
8.君という花
9.シーサイドスリーピング
10.夕暮れの紅 with 金澤ダイスケ(フジファブリック)
11.ケモノノノケモノwith 金澤ダイスケ(フジファブリック)
12.夜を越えて
13.迷子犬と雨のビート with 下村亮介(the chef cooks me)※以下、本編ラストまで参加
14.エンパシー
15.触れたい 確かめたい with 塩塚モエカ(羊文学)
16.UCLA with 畳野彩加(Homecomings)
17.ダイアローグ
18.転がる岩、君に朝が降る
19.You To You with 三船雅也(ROTH BART BARON)
20.フラワーズ with 村田一族ストリングス、井上亮介(Turntable Films)
21.海岸通り with 村田一族ストリングス、井上亮介(Turntable Films)
-EN-
22.遥か彼方
23.今を生きて


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