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Maison book girl Solitude HOTEL【Streaming+(配信)】

まさか1週間のうちに2度も解散ライブの感想を書くことになるとは、と動揺している。と書き出してはみたものの、4月の全曲披露ライブの頃からTwitterやホームページで漂っていた不穏さを考えれば薄々は分かっていたことでもある。ライトファンな僕でさえそうなのだから、ヘヴィリスナーたちはそんな現実に戸惑いつつ、拒否しながらも受け入れる姿勢を整えていたんじゃないかと思う。何を仕掛けるか分からない活動スタンスがその辺りを曖昧にしていた部分もまたあると思うし、Maison book girlという在り方を最期まで徹底していたんだな、と思える。“ブクガ削除”に至るまでの2時間のラストライブは6/2までアーカイブ配信で目撃することができる。この機会に感謝だ。

ワントーンな世界観だったり、緊張感あるパフォーマンスだったり、ブクガの作品性の高さは普段自分が愛聴しているアーティストと比べるとやや距離があるように思うが、ここ数年では間違いなく最も夢中になったグループの1つであった。この理由を語るならばそれはブクガが「喪失と回顧」を繰り返す音楽を志していたから、という点だろう。2017年、生涯推すと思っていたアイドル、私立恵比寿中学の松野莉奈が急逝して以降、心は新たな推しを求めながらもどこかで松野莉奈を安心して置ける場所を求めていたように思う。それが僕にとってはブクガだった。少女と”失うこと“を書き綴ってきたブクガの世界の中に、いつも松野莉奈の存在を見出しながら聴いてきた。こんなこと書くとブクガファンに怒られるのは違いないので隠してきたが、ブクガを聴く/観るという瞬間は松野莉奈の記憶を思い出して反芻することを許してくれる時間であった。ブクガで推しを決めなかった理由もそれだ。

”削除“に至る理由などは明かされていないが、少女性をコンセプトの基幹としていることは1つ大きな部分としてあると思う。長く続ける素晴らしさ、ライフステージが変わってもアイドルを辞めない美しさ、当然ある。メンバーだってそういう思いはあったかもしれないが、Maison book girlという作品はそれを拒絶した。始まった時からそもそも有限なものとして存在しており、終わりに向かっていくことがブクガの活動だったのではなかろうか。前時代的だ、という声もあるかもしれないが、時代無関係に作家が作り込むものも紛れもなく芸術だ。プロデューサー・サクライケンタが成し遂げたMaison book girlという壮大なインスタレーションの結実がこの“削除”だ。

削除という結末を抜きにしたとて、驚くべき演出に満ちたライブであった。まず序盤30分は2017年12月に行われた「Solitude HOTEL 4F」と全く同じ曲順ということ。しかもそれは実は事前に収録された映像で、会場でそれに気づく人も僅かだったというから、ブクガがいかに幻影と現実を混濁しながら生きてきたかが見て取れた。「karma」であり「river」だったあの曲のバックトラックが流れる中、白い煙の中に現れたうずくまる4人は14年間零号機に取り残されていた綾波レイのようで随分と長い時間そこにいたんだな、と思い涙がこぼれた。あれは何を表現していたんだろうか。思うようにアーティストとしてステップアップができずに活動が終わったことの悲しみのメタファーなのか、この場所に2017年から閉じ込められたままそこに居続けたという世界線のブクガなのか、削除の前に僕らに姿を見せてくれた姿なのか。

「Solitude HOTEL 4F」は時を遡行したり、時空を移動して並行世界をも行き来しながらひとつのエンディングに向かっていく公演だった。だからこそ、何が起きてもそこに何が現れてもおかしくない場所として選ばれたのだと思う。「レインコートと首の無い鳥」で登場した過去の衣装を身に纏ったペストマスクの4人の少女、回転し続ける円形ステージの中で繰り広げられたポエトリーリーディングでの"物語は巻き戻った”の一声、涙声で話しているように聴こえた「non Fiction」の長い朗読、聴いたことあるクラップと聞いたことのない歌詞が交差する「bath room:改」。そして真っ暗なステージの中で、突然終わった最後の1曲の名は「last scene」。あまりにも呆気ない幕切れ。この瞬間、この世界のブクガは消えた。データの束として記憶と作品だけが残ることになった。それを反芻し、思い出すことしか出来なくなった。喪失と回顧を表現してきた彼女たちが在るべき場所に収まったとも言えるかもしれない。何度も思い出し、この虚無を心に押し付けるしかないのか。

<setlist>
1. sin morning
2. rooms__
3. lost AGE_
4. end of Summer dream
5. veranda
6. bed
7. karma ~ river
8. 海辺にて
9. レインコートと首の無い鳥
10. townscape
11. 言選り_
12. 闇色の朝
13. 眠れる森(ポエトリーリーディング)
14. 長い夜が明けて
15. 狭い物語
16. 夢
17. blue light
18. 十六歳_
19. snow irony_
20. Fiction
21. non Fiction(long ver. / ポエトリーリーディング)
22. bath room:改
23. last scene


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