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Base Ball Bear「ドライブ」と1.11「新春ベースボールベアーちゃん祭り2021」

毎週欠かさず観ている「モヤモヤさまぁ〜ず2」のエンディングテーマが1/10よりBase Ball Bearの新曲「ドライブ」に変わった。若手ミュージシャンの起用が多い番組ゆえ(ネバヤンとかバレーボウイズはこの番組で知った記憶)、長いこと愛聴しているバンドの曲が聴けるなんてびっくりで嬉しいし、何より本人たちが喜んでるコメントもとても良いな、と。タイアップは時に諸刃の剣に成り得るというのは新人ミュージシャンの共通認識だろうけど19年活動してきた上で自分たちの好きな番組の曲を歌えるなんて喜びしかない。ここまで築いてきたベボベのスタンス、在り方を慮っても完璧な抜擢だと思う。

そして何より曲の素晴らしさだ。曲調はメロディアスなミドルバラード。前作『C3』のリード曲がバラード「Cross Words」だったことを考えると、今聴かせたい側面はこちらなのだろう。穏やかで暖かみのあるサウンドも冬にぴったりだだ。また、歌詞の面では『C3』のラストを飾った「風来」に近い、生活感のある描写にも目を惹かれる。「風来」と違うのは、家の中の描写が多い点。恐らくはコロナ禍を反映した不安定な気持ちが漂っている。部屋着、入浴剤、ゴミ出し、、様々なアイテムで描き出したぽつんとした気分は極めて写実的でかつてないほど、今にフォーカスした筆致に思えてくる。

<生きている音がする>で開放に向かうサビへの運びも見事だ。家の中でも心は自由だ。星野源が「うちで踊ろう(大晦日)」の中でひとり生きることを軽やかなダンスナンバーに乗せたように、小出裕介(Vo/Gt)もまた静かな心の移ろいをドライブという言葉に託した。"運転"や"動かすこと"を意味するDriveのほか、"生きる"を意味するDo Liveなど、題意は現時点でも様々に考察されているが、個人的に推したいのは「ド・ライブ」の説。ド級とかド直球とかの弩。弩ライブ。めっちゃ生きてる、みたいな意味で、"どLIVE"。小出文法的に、なくはないはず。ここ、今回のnoteで一番言いたかったところです。

張り詰めた心を軽くし、そっと気ままな旅へと連れ出した最後に来る<ちょっと愛してるよ>の説得力たるや。この世界、というよりは自分自身に向けたこの言葉。かつての楽曲「愛してる」では、<愛してる>とサビで連呼しながら、その用い方に悩む人物の姿が描かれていた。今回はどうだ。<ちょっと>だろうとも、この<愛してるよ>には確かな実感が滲んでいる。この世界を生きることを誓い、心の中でそっと誓うような<ちょっと愛してるよ>の強さは計り知れない。すぐさま始まる1分近くに及ぶ長い長いギターソロは曲の余韻というよりもこの日々に寄り添うような力があるように思う。


そんな楽曲が解禁された日、配信ライブ「新春 ベースボールベアーちゃん祭り2021」がZepp Divercityで開催。元々は有観客の予定だったが、ご時世もあって無観客に変更。フォーマルな衣装に身を包んでの挨拶からステージに上がりそのまま演奏というレアなスタイルもこのタイミングならでは、か。近年のナンバーとこれまでの鉄板曲を織り交ぜた、20周年を迎える年の幕開けに相応しい選曲たち。新成人に贈る、というニュアンスを付随して届けられた「メタモルフォーゼ真っ最中」は小出祐介が10代の時に書いた曲のはずだが、今なおすこぶるフレッシュに響くの、つくづく奇跡のようなバンドだ。

新曲「ドライブ」は中盤に披露された。直前のMCで、小出が曲を持って行った時の関根史織(Ba)、堀之内大介(Dr)のリアクションの良さでシングルカットが決まったという裏話もあった。小難しくなく、気張らずにリラックスしてやれる曲が選ばれるというバンドのモードを知ることができる一幕だった。「ドライブ」はじっくりと噛み締めるような曲だと思ったし、また現場で会うための約束のようにも思えた。続けざまに「新呼吸」が鳴るのも胸を打つ。東日本大震災の年、自らの生活に向き合い夜明けを描いたアルバムのタイトル曲がこうして強靭なまま今に届く頼もしさたるや。心震える曲順。

そして「changes」。節目で何度も、ここぞのタイミングで鳴らされてきた重要な1曲。「ドライブ」から続いてきた"朝"のモチーフ、再生のイメージ、そして「メタモルフォーゼ真っ最中」で示されていた変化のシーンが辿り着く先として「changes」はこのライブを象徴しているように思った。変わりゆく世界の中、バンドの思うように動かせずとも、変わること変わらないことを同時に肯定しながら進んでいくベボベの姿はやはり追いかけていきたくなる。ラストの「祭りのあと」は現場の懐かしさを思って寂しさもあったけど、最後にハンカチを舞い踊らせた堀くんの姿を見ると笑えてきたし、まぁまたいつか、と思った。久々にベボベを観なかった2020年を超え、2021年はきっと!。それまで心は軽くし、調子良さげにドライブさせながら待とう。

<setlist>
1.ポラリス
2.すべては君のせいで
3.いまは僕の目を見て
-MC-
4.メタモルフォーゼ真っ最中
5.short hair
6.Stairway Generation
7.「それって、for 誰?」part.1
-MC-
8.ドライブ
9.新呼吸
10.changes
-MC-
11.祭りのあと



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