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どちらかのファンに贈りたいベボベ×アジカンプレイリスト〜2022.8.26 Zepp Osaka Baysideに寄せて

2022年8月26日、Base Ball BearとASIAN KUNG-FU GENERATIONの対バンがZepp Osaka Baysideで開催される。このニュースが駆け巡った日の衝撃は忘れがたい。TLも上半期で一番ざわついていた。

このライブはベボベが2018年から開催している対バンツアーシリーズの第3弾「LIVE IN LIVE〜I HUB U 3〜」のファイナルとして行われる。この組み合わせはマイツートップバンド同士。そりゃ歓喜なのだ。


上に載せた通り小出裕介と後藤正文は硬軟まぜこぜに互いをツイートやブログで言及し、ツイッターにはラフなリプライの記録も残っている。それぞれナンバーガールを影響源と公言し、また四つ打ちとギターロックを掛け合わせたサウンドの基礎と発展を担った同士という点でも関連は深いがアジカンが世代的にひと周り上ということもあって今回までツーマンライブという機会がなかったのだと思う。


前置きはこのぐらいで。今回そんな世紀の対バンに向けて昂ぶりすぎた結果、どちらかのファンだという方にレコメンドする用のアジカン×ベボベのプレイリストを作ってみた。ゼロ年代の曲は皆知ってるだろうし、2010年以降の楽曲を中心に。ロックを鳴らすことの意義、そこで何を歌うかということ、そして変化の歴史。それぞれ15曲、全30曲を2曲ずつ区切りながら、そのゆるやかな共振を辿っていく。

※奇数トラックがアジカン、偶数トラックがベボベの楽曲です。

1.解放区
2.L.I.L

ライブという現場をイメージする2曲。「解放区」は広い意味での魂の解放を丁寧な情景描写で積み上げていく曲だ。ラストの咆哮とライブのイメージが重なり合ってグッとくる。「L.I.L」はツアータイトルのLIVE IN LIVEを連想させる曲で、その通り“ライブの中で生きる”という想いを濃く刻む1曲。クラップを煽るビートも肉体的で楽しい。どちらも生きるということと音楽的快楽を結びつけた楽曲だと言える。


3.You To You(feat.ROTH BART BARON)
4.プールサイダー

「輪」がテーマの2曲。アジカンに関しては音楽を通して繋がり合っていくことを初期から常に歌ってきたが、最新アルバムのリードトラックでより温かなフィーリングでそのイメージを歌った。ベボベはどちらかと言えば、輪から外れた自意識を歌い続けていたが、昨年夏に投下したこの曲は積極的に大きなうねりに入っていくこと“も”楽しみ始めたことが分かる。この対バンの意義にも通じている気がする。



5.ダイアローグ
6.DIARY KEY

コミュニケーションにまつわる2曲。<難しいのはいつだって承知の上>と始めながらも言葉を手繰り寄せながら歌う「ダイアローグ」と<見つけて 隠した鍵をいつか君に渡せたらいいな>と想いをしまっておくことも疎通の選択肢として描く「DIARY KEY」は真逆なようでどちらも切実な言葉や想いとの向き合い方だ。骨太なロックンロールサウンドの追求という点でもこの2曲は共通しているように思う。


7.荒野を歩け
8.ポラリス

何となく、今のアジカンとベボベの代名詞的な2曲かと。「荒野を歩け」はざらついた質感と同時代を生きる者を鼓舞するエネルギーを持つど真ん中のパワーポップ。「ポラリス」は”3“にちなんだワードを盛り込み、メンバー3人がボーカルをとり、3ピースサウンドをアピールした大喜利的な要素もある。角度は違えどもバンドシップであったり、自分達がどういうモードで音楽に臨むかについてを刻んでる。


9.エンパシー
10.すべては君のせいで

どちらもバンドの変わり目で生まれた挑戦的な1曲。「エンパシー」は長年サポート鍵盤を務めた下村亮介(the chef cooks me)が離れた2021年に下村にプロデュースを依頼した初の外部編曲。刷新されたグルーヴが新たなアンセムを産んだ。「すべて〜」は元ギターの湯浅将平脱退後の2017年に4ピースサウンドに拘ってきたベボベが初めて能動的にシンセを取り入れた曲。変化を逆手に取る姿勢は共通点か。


11.触れたい 確かめたい feat.塩塚モエカ
12.不思議な夜

バンドのロマンチックな側面が打ち出された2曲。アジカンは青春の匂いがする楽曲も作っているがこちらは羊文学の塩塚モエカとデュエットした大人びたテイストのロストラブソング。「不思議な夜」は小出が得意とする文学性を抑えて写実的に恋の一歩手前を歌った爽やかな1曲。アジカンは離れた2人を歌い、ベボベは始まりそうな予感や恋の渦中を歌う。この両極端なタッチはとてもユニークな違いだ。


13.UCLA
14.The Cut(feat.RHYMESTER)

Hip Hopとの接近を試みるという共通点がある2組。アジカンはゴッチがソロのほうでトライアルをしてきたが「UCLA」ではビート感や歌唱にトラップの雰囲気を交えるなどギターロックとの融和を獲得。ベボベはHipHopラバーな小出が牽引しながらテン年代初期から呂布などともラップ×ギターロックを追求してきたが大ボスを召還したこの曲は今、小出自身が放つラップによってライブ必殺の曲になっていた。



15.Dororo
16.「それって、for 誰?」Part.1

社会風刺を音楽として表現することはアジカンがゼロ年代後半から続けてきたことで、「Dororo」はタイアップ曲としてその世界観にも合わせつつ間違いなく今の時代を撃ち抜く表現に仕上がっている。一方ベボベは社会を歌うことは慎重だが先述の「The Cut」やこの曲を出して以降は積極的に世間への疑義を投げかける曲を届けている。様々な切り口で問いかけを果たしていくのもロックが担う一側面だ。



17.Standard/スタンダード
18.PERFECT BLUE

少女というモチーフが登場する「スタンダード」。ゴッチがこの曲で登場させた<少女>は誰しもが持ちうる純真のメタファーだろう。何かを強く願うことの覚悟を歌ったような1曲だ。ベボベは多くの楽曲で記憶や憧憬としての存在として少女を描いてきたが、「PERFECT BLUE」はこれまで歌ってきたイメージを最も神格的に、そして悲しみと隣り合わせで歌った曲。何をどう切実に歌うのか、の良い対比。



19.新世紀のラブソング
20.十字架You and I

2010年前後は両バンドとも変革期だった。アジカンは『マジックディスク』をゴッチがデモを作りこむスタイルで制作。緻密に練られたアレンジや他楽器の導入などの実験性を獲得すると同時にバンドの意義を自問自答しているようでもあった。ベボベはセルフプロデュースで3.5枚目となるアルバムを2作発表。これまで控えていた遊び心や尖った要素を全開に。両者ともにその在り方を揺さぶっていた時期。



21.踵で愛を打ち鳴らせ
22.short hair

2011年、東日本大震災を経た作品群も印象的なのがこの2組。アジカンは徹底的に言葉と向き合いながら、サウンドでは前作『マジックディスク』から一転してバンドセッションへと回帰。開放的かつ、大きな愛のイメージへと飛翔していた時期だ。ベボベは小出氏が自身の生活、自身の日常と向き合うことでバイオリズムと心象を重ねる『新呼吸』を完成。社会と自己、視線の向く先はかなり異なっていた。


23.Re:Re:(2016)
24.祭りのあと(2016)

バンドとしての足場を固めながら、偶然にも2016年に総括的なタームが訪れた。アジカンは代表作『ソルファ』を全曲再録。ライブで人気な「Re:Re:」は巨大なスケール感を携えたスタジアムロックのように生まれ変わった。ベボベは湯浅脱退につき、強制的にまとめざるを得ないタイミングになったがここでルーツである田渕ひさ子(ナンバーガール)を招きキラーナンバーを再録する見事な動きを見せつけた。


25.Easter/復活祭
26.いまは僕の目を見て

活動歴の長い2組ゆえ、過去にあった曲と近いゾーンに寄せて曲を作ることもする、のだけどもそこに確実にアップデートされた要素が入ってるのが特徴的。「Easter」は「リライト」ばりのヘヴィかつラウドな1曲だが構成の思い切りの良さや突っ走りっぷりで今やライブで大爆発を起こす1曲。「いまは〜」は疾走感と清廉なメロディがまさにベボベ印だが、歌詞は初期にはなかった慈しみが刻まれている。


27.今を生きて
28.SYUUU

「別れ」をテーマにした2曲。さよならすること、忘れていくこと、その情感を噛み締めるように歌うのはアジカンとベボベの最も大きな共通項なのかもしれない。もう戻れない日々と続く日々の間で愛しさを抱きしめる温かな「今を生きて」、ソリッドなギターサウンドの中でもう会えなくなった君とそっと心を交わす「SYUUU」。死と生という、誰しもが離れ難いテーマは特に最近の楽曲にまぶされている。



29.ボーイズ&ガールズ
30.ドライブ

最後はミドルソングを2曲。どちらもアルバムのラストを飾っていた。「ボーイズ&ガールズ」はどんな過酷な時代であっても心の中だけでも<まだ始まったばかり>と誓う、ロックバンドが高らかに歌う力強いバラード。「ドライブ」は柔らかなフレージングとコロナ禍を経て生まれた生活への眼差しを歌うささやかな1曲。アウトプットは違えど、ともにリスナーを含む人々の世界に寄り添ってくれているのだ。



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