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上海のくらげ
2020年7月23日 03:10
飲み物でも買いにコンビニに行こうとアパルトのドアを開けた瞬間、いわゆる夏の匂いに包み込まれて私は思わずイヤホンを外した。 私にとっての夏の匂いとは、すなわち小学校のプールの匂いだった。今年引っ越してきたこのアパルトの目の前には小学校がある。今まで毎朝毎晩仕事に行く時と帰ってくる時はこの小学校の前を通っているはずだが、プールの匂いを感じたのは始めてだった。 なんだか懐かしい気持ちになって、
2020年7月16日 19:44
もうすぐ世界が終わってしまうのは仕方のないことだ。どうせみんな消えてしまうのなら、せめて最後にあたたかい幻を見たい。 田舎道、遠くに見える電波塔を指差して「東京タワー!」と笑う子どものような。昔読み聞かせてもらった絵本に、大人になってから偶然出会った時のような。 そんなことを考えているうち、気づけば私は砂浜に居た。周りには、同じように日の出を待っているであろう人たちが5、6人居た。彼らの
2020年7月13日 20:58
最寄り駅の近くに居酒屋がたくさんあるせいで、俺が金曜の夜にアルバイトを終えてアパートに帰る帰り道は、いつも酔っ払って馬鹿騒ぎしている大学生でいっぱいだ。俺はこういう馬鹿な大学生のことを心底見下している。馬鹿な男と馬鹿な女、セックスと酒のことしか頭にないくせに、どいつもこいつも自分が物語の主人公だ、みたいな顔をして笑っている。 そういう奴らを見下しながら帰路に着くのも最初の方は悪くはなかった。
2020年7月3日 00:48
ここ数ヶ月で、私は本当にどうしようもない人間になってしまった。でも本当はもともとそういう人間だったのが、何かのタイミングで自分自身にばれてしまっただけなんだろう。 ひとりで眠るには到底大きすぎるこのベッドの上で、私はいろんなことを考えてきたつもりだった。今のことも、昔のことも、これからのことも。そうしているほかに眠りに落ちるためのやり方を知らなかったし、そうしているのがなんだか好きだった。