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#短編小説
安らぎの場所 -小さな故郷-
大陸横断鉄道の列車から見える街並みの景色が、少しずつ東方系の色を帯びてきていた。
――帰ってきたな。
ルーシン ウェイは故郷に近づくにつれ、顔の緊張がほぐれていくのを感じていた。普段は気づかないが、外の世界にいると、やはりどこか身体に力が入ってしまうものなのだということを、自覚させられた。
アルフライラ北東区、イェンルー老街。その近くの小路にある、小さな商店。ここが、ルーシンの実家だった。
BARD――世界は囁く(前編)
それは今日のことか、昨日のことか、明日のことでありましょうか。
とある小さな村に、バードという名の娘が暮らしておりました。
バードは、風や木や虫たち、その他様々なものと話をすることができる娘でした。川の楽しそうな笑い声、土の優しい子守唄、星たちとの秘密の内緒話。他の村人たちが知らないことを、世界の神々の囁き声から知ることができました。
時には神様たちの話を皆に伝えることによって、村人たちを