フリーランス1歳の誕生日。みえない未来もわるくない。|独立年記2022
思い出すのは、途方もない真っ白な空間。会社員というレールの上から、ゲームでいうところのオープンワールドに一人ポツンと降り立った感覚。
右に行くも良し、左へ行くも良し。
寝るも良し、食べるも良し。
人と交流するも良し、しないも良し。
仕事をするも良し、遊びに出かけるも良しーー。
すべてが自由となった世界を目の前にしたとき、わたしはもっと「自由だーーーー!」という解放感に包まれるものだと思っていた。
ところが現実は、おぼつかない足元で辺りを見渡す迷子そのもの。「どうしたらいい?何をしたらいい?」と空虚な空間に、戸惑いと不安を浮かべるばかりだった。
会社員の世界には、コマンドがたくさんあった。
RPGとまではいかないものの「最初の街に来たら、このクエストを達成しよう」「目標クリア!お祝いに新しい装備を授けよう」というように、ある程度のストーリーがあって、そのなかでコマンドを選択して進んでいく。
出勤・休憩・退勤などの時間的な制限もあれば、評価・給料といった目に見えて分かるボーナスステージもある。
けれど、フリーランスの世界はちがう。
すべてが自由。時間も仕事も環境も、誰に決められることもない。更地に村をつくるように、真っ白な世界で、好きに「自分の生き方」をレイアウトしていく。
何をしてもいい。好きにしていい。
夢に見ていた「自由」だけれど、1秒先の未来もわからない毎日が、わたしには恐ろしく感じられた。
だけれど恐怖を感じるとともに、心の底で愉快に弾む感情があることも確かだった。
何だってできる。好きなことで生きていい。
もしかしたらフリーランスとは「冒険すること」なのかもしれない。
そう思えてから、随分と気持ちが楽になった。
未来がわからないことなんて、当たり前。
だって、冒険なのだから。
会社を休職したのち、復帰することなく退職して、転職活動で内定が取れず、荒波にのまれるままに独立したあの日から2022年9月で1年が経った。
独立初月なんて、詐欺まがいの仕事にあたってしまって、1万字超の記事を納品したにも関わらず報酬はたったの390円。
「おかしい」と気づいたのは納品が終わって、契約も終了してからのことだった。事前に気づけなかった自分の愚かさに「わたしはなんてバカなんだろう」と涙をこぼしたものだけれど、今となっては笑い話だ。
いや「早くお金を稼がなければ……!」と焦っていたとはいえ、390円の仕事を請けるのは冷静さを欠きすぎていて、さすがに呆れてしまうな……。
けれどハプニングに見舞われたおかげで、フリーランスには仕事を見極める「目」が必要であることを身をもって実感することができた。
フリーランス生活がはじまった途端、困難に当たってかすり傷を受けるとは、なんて冒険らしいのだろう。
そしていまも、失敗を経験しながら、わたしは毎日、冒険をつづけている。
その旅路はもちろん、傷をつくるばかりではない。
思わぬつながりから互いに心地よい時間を過ごせるビジネスパートナーと出会えたり、昔から好きだった憧れのコンテンツに携われるようになれたり……。
フリーになったからこそ体験できている「喜び」がいま、わたしの手元にはあふれている。
「明日」さえもわからない生活スタイルに、あれほど恐怖していたわたしだけれど、1年も経ってみると考え方も見方もだいぶ変わったものだ。
みえない未来も、わるくない。
フリーランス1歳の誕生日を迎えて、そう思う。
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