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満月と心 ーヒトは月の影響を受ける話ー

 今日は令和4年5月18日。
 2日ほど前に心身不調を感じた方はいらっしゃいますでしょうか。妙に気持ちが昂ったり、あるいは不安になったり、鬱々としたり。それから徐々に落ち着いてきて、あれはなんだったんだろうと、まぁいいかと、そんなふうに流して記憶の彼方へ遠ざかっていくような。

 それは、月の影響かもしれません。

 私は別に何か悪いことがあったわけでもないのに、なんだか落ち着かない感じで心が不安定になりました。憂鬱な霧が胸のあたりに絡まるような感覚です。カレンダーをみますと、ちょうど満月。ああこれかと思って調子を整えるような漢方やら指圧やらを自分でやって、すうっと落ち着いていきました。自分で鍼もやりたいなぁというのが最近の密かな目標です。

 月は地球に大きな影響を与えています。月の引力が潮の満ち引きに関係しているように、私たちの身体にも影響を与えることが知られています。

 このことは現存する中国最古の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』にも記載があります。

新月より月が満ちていくと気血は徐々に盛んになり、衛気も巡り始める。
満月の頃に気血は充実し、肌や筋肉は十分に養われ頑強となる。
満月から月が欠けていくと肌や筋肉も衰え経絡も虚ろになり体表の衛気は去り形骸化していく。

黄帝内経・素門より抜粋(口語訳)

 東洋医学領域での「気」とはエネルギー、「血」とは身体を物質的に支える有色の液体のことです。衛気とは体の表面を流れる気のことで、外界からの防御や免疫にも関係します。では満月の頃は皆元気になるかというと、そう単純な問題ではなくて、理論的には衛気が充実しますから外邪による疾病には侵されにくくなりますが、気や血が盛んになることで流れが鬱滞し、却って気鬱や瘀血はきたしうると解釈します。古代ギリシャの医師ヒポクラテスも「満月が近づくと出血量が増え止血しにくくなる」という主旨の言葉を残し、手術する時期を調整していたと伝えられていますから、やはりそういう影響はあるのでしょう。
 このあたりを詳しく知りたい方は下記のリンク先の総説が比較的わかりやすくまとまっていましたので共有させていただきます。

『免疫と漢方:黄帝内経に啓示された古代人の智慧』
日東医誌 Kampo Med vol.64 No.1. 1-9, 2013.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/64/1/64_1/_pdf


 現代日本では太陰暦も忘れ去られ、月の満ち欠けで手術日程を決めるようなことはありませんし、西洋医学者が聞いたら月の影響による体調不良なんて鼻で笑われるかもしれません。
 しかし事実として、影響があるのです。

 よほどの不調があるようなら、東洋医学的なアプローチが有効かもしれませんね。この場合、あくまで私見ですが漢方医(東洋医学の内科医)よりも鍼灸師(東洋医学の外科医)の方が得意とする領域かもしれません。いずれも医療者側の質が治療成果に大きく影響しますから、慎重に見極める必要はありますが…

 軽い不調なら「なんだ月のせいか」と軽く受け流して気にしないくらいがちょうどいいでしょう。不安定なのは自分のせいじゃない、月の影響だから放っておこう…みたいな。

 
 古代から人は空を見上げて生きてきました。
 月や星空や、その彼方に広がる世界を。
 広大な宇宙に漂う小さな小さな地球の上で、
 人類は一体何処を目指しているのでしょうか。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方が天体のリズムに惑わされず、流れに乗って生活できますように。


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