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風待ち日記

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水無月のほとりで風を待つ、いつかその日が来るまで
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#日々

レース編みの光を浴びて

レース編みの光を浴びて

午後の光というのは、どこか穏やかなようでいて情熱を秘めていたりするので、なんとも好ましいなあと思う。

桜が散ったあとの季節の太陽の光は、春にしてはやや強すぎて、夏というにはまだまだ未熟だけれど、私にはちょうどいい。やさしくてほがらかでさわやかで。風がぬるくて気持ちがいい。木かげがひんやりしていて気持ちいい。

大体、季節というものは総じてたちが悪い。季節は私の手をとって巧みにエスコートし、心底楽

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陰鬱なる土曜日

陰鬱なる土曜日

土曜日じゃないのに土曜日とタイトルをつけた。そして夏じゃないのに、夏に撮った写真を使うことにした。そうでもしないと、やってられない気分なのだ。冬のつめたい風に負けてしまいそうなのだ。

たとえば非常階段の3階に立ち、爆音で音楽を聴きながら雨交じりの風に吹かれても、この気持ちはどうにもならない。胸の中へ押し込むことも、逆に追い出すこともできない。だったら、書くしかないではないか。

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とびき

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お月さまを追いかけて

お月さまを追いかけて

秋のゆうぐれの空ってなんであんなにきれいなんだろう、といつも思う。

秋のゆうやけはまるで燃えているみたいだ。
濃い群青色の空、蜜柑色のレースで織られたように繊細なゆうやけ雲。

あとお月さまもきれい。昼間の月も、夜の月も好き。

ゆうやけの色に染まる少し前の、まだ透明な水色の空に、ほっそりした三日月が浮かんでいるのも好き。繊細でもろくて、飴細工みたいでもあるし、ブレスレットのチャームみたいでもあ

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