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#孤独

ミシェル・ウエルベック『地図と領土』を読んで

ミシェル・ウエルベック『地図と領土』を読んで


仏文学者ではないから、優れた書評はできない。ただ気になった点をノートしておく。

現代の孤独へのスタンス
おそらくウエルベックの小説『地図と領土』のテーマは、現代人の孤独だ。
誰もが独房にうずくまる、パノプティコンと化した、現代がテーマだ。
フーコーがそれに警鐘を鳴らしてから、既に半世紀が経った。
時代はひさしく寂しい。みんなむなしく孤独だ。

そんな孤独な人々をウエルベックは膨大な情報から浮か

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テレビドラマ『交渉人』(米倉涼子主演)を観て ―孤独のなかのおとな、雑踏のなかの子ども

テレビドラマ『交渉人』(米倉涼子主演)を観て ―孤独のなかのおとな、雑踏のなかの子ども


おまえなんか、いらない
アマゾンプライムがすすめてくれたので観てみる。
『交渉人』(2008年)。
第一回で心をわしづかみにされた。
米倉涼子演じる主人公が、まるで僕自身のように感じられたからである。

主人公は交渉人として特殊犯捜査係に配属されるが、同僚から邪険にされる。
上司から、わかってるんだろ、自分が歓迎されていないことぐらい、と怒鳴られ、
古株から、なんでそんなに交渉人のポストにこだわ

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映画『ヴィクトリア』を観て -悪意なき自己中心主義者

映画『ヴィクトリア』を観て -悪意なき自己中心主義者

ジュスティーヌ・トリエという女性監督の『ヴィクトリア』(2016年)をアマゾンプライムで観た。
「フランス映画は大人が見る夢だ」という言葉を思い出した。
自己中心的な女主人公が、ある男の愛に気づく夢物語なのだが、
現実には主人公のような女性が愛されることはない。

登場人物はすべて、非常にリアルであった。
パリで暮らしたことのある人なら、「いるいる」と思うのではなかろうか。高圧的な女主人公も、自分

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コロナ禍、試される日本のエンタメの底力

コロナ禍、試される日本のエンタメの底力

先日、懐かしい、昔の教え子に出会った。
彼女は新藤兼人監督のファンで、現在はエンタメ業界で働いている。

僕は、エンタメについて、ちょっと考えた。

緊急事態宣言テレビの報道番組が、緊急事態宣言下の街の声として、
名探偵コナン、観たいのに、映画館、あいてない、と愚痴る、20代の女性二人を映していた。

僕が驚愕したのは、彼女たちが20歳をこえているにもかかわらず、アニメ映画を観たいと言っていたから

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