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死にぞこないの趣味の世界

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#女性

ウエルベックに見られる女性像 ―『滅ぼす』から

ウエルベックに見られる女性像 ―『滅ぼす』から

ミシェル・ウエルベック(1956年生)は、僕とは異なり、保守派である。
ところが彼の女性観に、非常にしばしば、僕は同意してしまう。
そのことは僕をモヤモヤさせる。
でも同意するという事実と、向き合わなければとも思う。
読み終えたばかりの『滅ぼす』から幾つか例をひこう。

痛みについての特殊な知識
例えば次のシーン。
アルアルだ。とてもよく実感できてしまう。
ポールとプリュダンスという夫婦が、ある事

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映画『落下の解剖学』を観て-必然としての曖昧さと必要としての決断

映画『落下の解剖学』を観て-必然としての曖昧さと必要としての決断

トニ-と映画館でフランス映画『落下の解剖学』を観た。
トニ-はこれまでの人生の悲喜交々をすべて糧として成長した、明るく健康的で包容力のある大人の女性だ。だから僕は彼女のそばにいるとそれだけで楽しい。

ひとつの事件、ひとりの人物の曖昧さ映画『落下の解剖学』のテーマは曖昧な現実だ。

歴史学研究者として僕は、曖昧さは必然でなければならないと信じている。つまりできるかぎり緻密に徹底的に分析して、物事を

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聴いてもらいたいから、カバー「唇によだれL'eau à la bouche」

聴いてもらいたいから、カバー「唇によだれL'eau à la bouche」


可愛い偽悪者
「唇によだれL'eau à la bouche」は、セルジュ・ゲーンズブールSerge Gainsbourgの数ある楽曲のなかでも、なかなかの名曲です。
僕は個人的に大好きです。
けど知り合いに勧めると、総スカン。
特に女性陣から「気持ち悪い」と、人気ゼロ。
え?なぜなぜなぜ??

主人公の男性が女性を口説いています。
でも「おまえが欲しい」とも「あなたを愛しています」とも言わな

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バレンタインなので、女性に捧げる歌 -Julien Clerc, « Femmes… je vous aime »

バレンタインなので、女性に捧げる歌 -Julien Clerc, « Femmes… je vous aime »


いよいよ来週はバレンタイン。
ちなみに僕はかかりつけの女医さんから、「バレンタインにチョコレートをもらっても、食べてはいけません」と言われています。

でもせっかくだから、バレンタインには女性への賛歌を聞きたいと思います。

ジョン・レノン女の人全般に捧げられた歌ならば、ジョン・レノンの « Woman »をすぐに思い出すことができるでしょう。
「僕は君に永遠の恩debtがある」と、軽やかなメロ

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映画『私の知らないわたしの素顔』を観て

映画『私の知らないわたしの素顔』を観て

中高年の恋愛サスペンス映画。
50代以上、必見かな。
若いひとで、これを観て「おもしろい」と言えるひとは、よっぽどの文学好きでしょうね。

映画の冒頭、中高年男女の夜の寝室が赤裸々に、しかし美しく撮られている。
こういうシーンを撮れるのがフランス映画なのだ。

なりすましというテーマ主人公は比較文学を専攻する50代の女性大学教授(ジュリエット・ビノシュ)。結婚・出産・離婚と、人生フルコースを経験。

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