リーダーシップとは何か2 人の仕事に敬意を払う

これは僕が失敗を重ねて学んだことの一つです。

少し僕自身の話をしたいと思います。
僕の経歴を見て頂いた方には話が重複しますが、僕は大学院を終了し、博士号を修得した翌春から大学の教員として就職しました。公募に応募したこともなく、大学院の終了前に就職先の大学が決まっていました。
これはかなり幸運なことでした。今、博士課程やポスドク、非常勤講師の方からすれば「どうやって?」と質問されそうですが、こればかりは縁と運と恩師のおかげとしか言いようがありません。断言しますが、自分の実力など、これっぽっちもありません。
両親は中卒と高卒ですが、仕事の傍ら父は民謡を、母は書道を教えており、和の芸事の家ですから、それなりに礼儀作法には厳しく、年長者には可愛がられましたから、伸び伸びと大学院生活を送りました。

大学院以降、こんな超温室育ちでしたから、大学に就職した後、苦労したことは想像に難くないと思います。
学内政治など全く気にせず、恩師に言われたまま、とにかく頭を低くし、謙虚に頑張ったつもりでしたが、、、体を壊して大学を退職することになりました。
その後紆余曲折を経て、非常勤講師などをしながら、民間で仕事をしましたが、周りから見れば世間知らずのお人好しです。まあ、何度も痛い思いをしました。

これについつて、僕の親しい人は、後に「こんな無垢な大人がいると思わなかった」と評しています。

さて、この過程で僕は大切なことを学びました。それは、「人の仕事に敬意を払う」ということです。僕は人に敬意を払うのは当然のことだと思っていましたかが、世の中以外とそうでもありませんでした。

これは今だから言えることですが、人に敬意を払う人は、やたらと人を誉めたりしません。しかし一方でどんな相手にでもちゃんと「ありがとう」と言うことができます。また肩書きや経歴ではなくその人自身を見ます。つまりいわゆる「ブランド」に惑わされません。以前「言葉の重さと温度」という内容で書きましたが、立場に伴う責任を身をもって示します。

あまりにも当たり前ですが、僕はこのことに気づくまでに、随分時間と心身を費やしてしまいました。

多くの経営者の方とお会いする中で、この経験は今とても役立っています。前回のリーダーシップの話の中でも記しましたが、人の品格は言葉や態度の端々に現れます。そして、それは会社の状態に直結します。

その一つが、人の仕事に敬意を払えるかどうかです。

これは一般論ですが、経営者の仕事の一つは、自分にできない事を、もしくは自分の代わりに仕事をしてくれる人を雇い、その人たちが心地よく能力を発揮する場を整える事です。これは管理職であろうとアルバイトであろうと変わりません。自分1人では賄えない労働力を提供してもらっているのです。ですからアルバイトの方でも、仕事を通じて敬意を持って指導しなければなりません。

例を挙げます。これは僕が尊敬する飲食業の経営者の方の話です。たまたまその方とお酒の場を共にさせて頂きました。
その方は職場では、時として従業員の方にとても厳しい言葉を投げ掛けます。しかしある時、僕とお酒を共にしながら、その方は「お客様、お会社様、社員さん、パートさん、バイトさん」と仰いました。かなり機嫌良くお酒を召し上がっておられ、二人ともそれなりに上機嫌でしたが、この表現が最後まで変わることがありませんでした。
しばらく経って、とある居酒屋さんにいた時のことです。そのお店のオーナーさんが、「あの客は~ 」とか、違う店舗の店長さんを「あいつは~」という表現をしていました。
この店は自宅から比較的近く、気が利く店長さんを気に入っていました。それなりに人は入っていましたが、前の店長の時に客層が変わっていしまったり、人手が少ないなどといったいくつかの問題点は感じていました。残念ながらこの店は、ほどなくして閉店することとなりました。

この事例は、文字どおり今回のテーマを現している事例ではないでしょうか。

経営(企業)理念の話からCI、リーダーシップと続く内容を記していますが、一貫して述べてきたのは、経営者の方の姿勢です。

これは企業経営に限った話ではないのでしょう。困ったことやうまくいかないことがある時、携わっている人がそれぞれの役割にちゃんと経緯をはらうことができていないのではないでしょうか。
その上で、どうしても敬意を払えない関係であれば、なるべく早く関係を解消しましょう。

僕の失敗からの提言です。

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