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【読書録】『メモの魔力』前田裕二

2018年12月の出版以来、大ブームになった本。本日(2020/6/6)現在も、近所の大型書店で平積みになっていた。

私は、過去の記事で書いたが、日々、日記やメモを書くのが習慣になっていて、記録することについては強い思い入れがある。そのため、この本のことを知って、素通りするわけにはいかなかった。ただ、最近、自己啓発本を読んでも、内容が薄っぺらいと感じることも多かったため、正直に言って、あまり期待していなかった。しかし、よい意味で期待が裏切られ、沢山の学びがあった。

要約

メモを取ることは、単なる記録ではなく、そこから抽象化、転用することによって、アイデアを生む知的生産のために、また、自己分析して自己を知り、夢をかなえるために大変有用である。

第1章<日常をアイデアに変える> 記録ではなく知的生産のためにメモを取る。5つのスキル(知的生産性、情報獲得の伝導率、傾聴能力、構造化能力、言語化能力)が鍛えられる。「ファクト→抽象化→転用」というフレームワーク。

第2章<メモで思考を深める> 抽象化して本質を考え、言語化能力を高める。

第3章<メモで自分を知る> 自己分析ノートを書いて、抽象化して、人生の軸を見つける。

第4章<メモで夢かなえる> 夢を言語化して設定し、優先度をつけ、とるべき行動の細分化をする。

第5章<メモは生き方である> メモで創造の機会損失を減らすため、習慣化し、自己分析で人生の軸をみつけて時間を有効に使うべし。

感想

最大の学びは、メモを取ることが、「ファクト→抽象化→転用」というフレームワークを経ることによって、知的生産と自己分析に力を発揮する、ということである(なお、私にとっては、メモを取るというより、ノートを取る、というほうが、しっくりくる。)。

まず、冒頭で述べたように、私は、今まで長年、日記をつけてきて、記録することが自分の人生に役立つと感じていたが、その理由を、きれいに言語化していただいたように感じて、すっきりした。

他方で、私は、抽象化・転用という過程がまだまだできていなかったなと感じた。インプットし、記録をする習慣は既にあるが、そこで止まっていた。今後は、インプットを生かして、抽象化しアウトプットし、転用してアイデアを何かに生かすことをしていきたいと思ったし、できるような気がしてきた。

ただ、具体的なメモの書き方については、自分のルールを変えるほどでもないかなと思った。筆者は、ご自身の例として、ノートを見開きで使い、「日付」「サマリー」「標語」を書くとか、4色ボールペンを使い分けるとかいうテクニックを紹介している。

なるほど、事実の記録を、自動的に抽象化、転用できるようにする仕組みとして、大変よくできている。しかし、私にとっては、自分が半世紀試行錯誤して落ち着いたスタイルや方法論を変えたいとまでは思わなかった。この種の具体的なノウハウは、あくまで参考に留め、自分に合ったやり方を見つければよいと思う。

(ところで、ノートメーカーのモレスキンが著者とコラボして前田流のモレスキンノートを発売したそうである。そういうところは、前田流を実践したい読者にとって有益だと思うし、よいビジネスだなあと思った。)

また、「夢を言語化する」という箇所は、別稿で紹介した『神メンタル』の「目的地を設定する」と大いに共通すると思った。

最後に、読後感として、筆者がおそらくとても優しいお人柄の方なのだろうなと感じた。終章では、筆者が子供の頃、コンプレックスや承認欲求に突き動かされ、メモを取る習慣をつけて、それが人生を変える力になった、というストーリーを紹介している。そして、読者がメモで人生を変えて幸せになってほしいというメッセージで締めくくっている。人の役に立ちたいというお気持ちがにじみ出ていて、こちらも温かい気持ちになれた。


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