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恋愛依存症の告白(フランス恋物語68)

1ケ月に満たなかった恋

早いものでもう9月に入ってしまった。

8月を振り返ると、ニコラとお付き合いをスタートして未知のセレブ生活を謳歌し、最後は衝撃的な恋の幕引き・・・というジェットコースターのような経験をして、私はもぬけの殻となっていた。

もう、フランス生活にも、フランス人の彼氏にも疲れた・・・。

フランスのワーホリビザは年末まであったのだが、私は10月末に帰国することを決めた。

このことについて、以前からニコラとの恋愛相談をしていたミヅキちゃんには、電話で報告した。


しかし、もう一人のパリの親友・エリカちゃんにはまだだった。

今日、その報告のために、私はエリカちゃんと会う約束をしている。

そもそも私がニコラと知り合ったのは、彼女が教えてくれた”国際恋愛専用出会い系サイト”だった。

別に彼女を責めるつもりではなく、「使ってみたけど、こんな結果になったよ」という報告もしておきたかったのだった。

Starbucks Coffee Capucines

私たちが待ち合わせたのは、オペラ座のすぐ近くにあるスターバックスだ。

「お待たせ~。待った?」

笑顔で駆けつけてきたエリカちゃんは沢尻エリカにそっくりで、私は彼女の美しい顔を見るのが大好きだ。

彼女は、生き方も恋愛の仕方も申し分のないくらい正統派で、私にとってお手本のような女性だった。


私たちは、”Starbucks Coffee Capucines”に入った。

ここは「廃墟になりかけていた貴族の館を改装した」というだけあって、天井画が描かれ、きらびやかなシャンデリアがぶら下がり、とにかく豪華な内装が素晴らしい。

外観や注文カウンターは普通のスタバで、もちろん値段も全世界共通のスタバ価格なのだが、商品を受け取り店内の奥へ進むと・・・「ここは〇〇宮殿!?」と勘違いしそうな優雅な空間が広がっている。

私はたまたまここに入って以来すっかり気に入り、友達と”リッチスタバ”と呼んではよく利用していた。

Girls talk

私とエリカちゃんはお揃いのキャラメルマキアートを受け取ると、奥の方の眺めの良いソファ席に座った。

私が彼女にサントリーニ島のお土産を渡した後、まったり女子トークを開始した

※エリカちゃんはミヅキちゃんと違って過激な話はしないので、周りに日本人がいるかどうかなどの配慮はしなくていいのが、彼女との女子トークの特徴である。

「レイコちゃん、ニコラと別れたんだってね。

結婚相手には申し分ない相手だったし、すごく愛されていたみたいだったのに、何が問題だったの?」

私は、ニコラと前妻・ジョセフィーヌとの離婚についてのいきさつ、二人で行ったサントリーニ旅行の夜にジョセフィーヌから恐ろしい電話がかかってきたこと、そして、ニコラ宅に一緒にいた時に刃物を持ったジョセフィーヌが押し入り、危機一髪の難を逃れ帰ってきたエピソードなどを、順を追って説明した。

その話には、エリカちゃんもかなり驚いていた。

「それは大変だったね。

レイコちゃんが無事で本当に良かった。

それにしても、レイコちゃん、刃物を向けられても冷静に考えられるってすごい!!

合気道やってたおかげだね。

私も始めてみようかな・・・。」

私はそのドラマチックな話を盛り上げたくて、面白おかしく話して聞かせた。

別にそこまでサービス精神を発揮する必要もないのだが・・・。

決意表明

私は、帰国を早めた理由についても話した。

「やっぱり、パリに住んでフランス人の結婚相手を探すのは、私にはハードルが高すぎたのかなと・・・。

私は語学が苦手だからどんなに頑張ってもエリカちゃんレベルには到底及ばないし、日本語教師の仕事は収入も不安定だし。

日本だったら正社員じゃなくても月20万円は稼げて、ちゃんと東京で一人暮らしもできてた。

それがパリだと、こんなに難しいなんて・・・。

やっぱり私、自分で稼いでしっかり自立できる女になりたい。

だから、行きたい所に旅行さえ行ければ、もうパリ生活に固執する必要もないかなと思って。」

エリカちゃんは感心したように頷いた。

「レイコちゃん、しっかり自分のこと分析してて偉いね。

そうやってスッパリ決断できるところ、私はすごく好きだよ。

私はレイコちゃんがどんな選択をしても、ずっと応援してるからね。」

エリカちゃんにはいつも頼りっぱなしで、褒められることなんて滅多になかったから驚いた。

「ありがとう。私もエリカちゃんのこと応援してる。」

照れた私はこう返した。

エリカの忠告

しかし彼女は、私の懸念材料をしっかり押さえることも忘れていなかった。

「でも、残り2ケ月、恋愛は大丈夫?

また『この人カッコイイ』とか言って、一時の気の迷いで変な男にひっかかったりしない?

レイコちゃんはいつも『遠距離恋愛は無理』って言ってるんだから、深みにハマったら後で痛い目見るよ。」

・・・私は一番痛いところを突かれた。

そういえば、1~3月にトゥールに住んでいた時も、「4月からはパリに引っ越すし、恋愛はお休み」と言いながら、クラスメイトの唯一の日本人・ジュンイチくんと男女の関係になってしまったっけ・・・。(今となればそれもいい思い出だが)

「そうだね。

一応”残り2ケ月は恋はおやすみ”と思ってたけど、結局どうなるかは、その時になってみないとわからないよね。

だって、『恋はするものじゃなくて落ちるもの』だし・・・。」

開き直った私のセリフに、エリカちゃんは呆れていた。

「私、レイコちゃんの恋愛に一直線なところは眩しいし、ちょっと羨ましくもあるけど・・・。

でも、つまづいた時辛いのは、自分が一番よく知っているでしょ?

エリカちゃんの正しすぎる言葉が一つ一つ胸に突き刺さる・・・。

「ごめんなさい。

本当、私も失恋の度に辛すぎて、『いっそのこと、瀬戸内寂聴みたいに尼になろうか』って思ったこと、何度もあるよ。

でもね・・・目の前に素敵な男性が現れたら気になって仕方ないの。

この人、どんなキスをするんだろう?さらにその先は・・・?みたいな。

エリカちゃん、どうしたらいい?」

エリカちゃんは呆れながらも、私の手を握り締め、目をじっと見つめてこう言った。

「そんな時は、私のことを思い出して。

行動を起こす前に、必ず電話するのよ。

その場で説得するし、それでも聞かないようなら、現場に行ってでも止めるから。」

・・・あぁ、なんて心強い言葉だろう。

私はエリカちゃんに惚れそうになった。


この後、エリカちゃんはフランス人の彼氏とデートがあるらしく、夕方に私たちは別れた。

約2年間の遠距離を経て結ばれたエリカちゃんと警察官の彼の仲はずっと順調で、来年辺り結婚の話も出ているそうだ。

その話を聞いて、「羨ましい。自分には絶対にできないことだ。」と思った。

ジュンク堂パリ支店

エリカちゃんと別れた後、私は久しぶりにオペラ地区のジュンク堂書店にいた。

イタリアのガイドブックも買いたかったし、フランス語の学習意欲がなくなった私は、日本語の本を読み漁ろうと気になる本を探したかったのだ。

すると、私はある男性から声をかけられた。

それは・・・強烈に記憶に残りながらも、すっかり忘れていた人だった。


私は彼との再会により、煩悩の渦に巻き込まれるのである・・・。


ーフランス恋物語69に続くー


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