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劇評

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主に石川県金沢市での、演劇・ダンスの観劇記録です。
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#ダンス

北陸の演劇への誘い

北陸の演劇への誘い

2021年11月6日より、北陸の舞台公演を連続上演する「かなざわリージョナルシアター『げきみる』」というイベントが始まっています。12月26日まで、8団体が毎週末に公演を行うものです。例年は石川県の団体のみでしたが、今年は、富山県と福井県の団体も参加しています。
https://www.geimura.com/drama/gekimiru2021/

2週目の「ジュニア・クラブ」のチケットは完売の

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(劇評)春を呼ぶ叫び声

(劇評)春を呼ぶ叫び声

鈴木ユキオプロジェクト『春の祭典』の劇評です。
2019年10月26日(土)19:00 金沢21世紀美術館 シアター21

 クラフト紙でできたファイルボックスが100個ほど、客席から見て山の形になるように、きっちりと積み重ねられていた。ファイルボックスは映像を映し出す壁になる。『春の祭典』が流れだし、壁に最初に映ったのは、ダンスを踊る一組の男女のアニメーション。やがて実写の映像が混じる。不穏な雰

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(劇評)自分のオーケー、誰かのオーケー

(劇評)自分のオーケー、誰かのオーケー

『最後のオーケー』の劇評です。
2019年9月6日(金)19:30 金沢21世紀美術館シアター21

 ダンスの言葉で、歌の言葉で、ピアノの言葉で、映像の言葉で。それぞれの一番得意な言語で彼らは話しかけてくる。でも一人一人が勝手に喋っているわけではない。周囲の様子を伺いながら、言葉達は発されている。

 『最後のオーケー』は、おどり:100いまるまる(松田百世、なかむらくるみ)、 音楽:Otnk(

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(劇評)日常はおどっている

(劇評)日常はおどっている

ひととせプロジェクト『ダブル・ビル』の劇評です。
2019年8月7日(水)19:00 金沢21世紀美術館 シアター21

 「ひととせ」とは、一年・春夏秋冬という日常。人と世。そう当日パンフレットに書いてあった。演者達が過ごしている、いつもどおりの日常。その様子をそっと差し出してひととき見せてくれたのが、ひととせプロジェクトの『ダブル・ビル』であるように感じた。

 会場に入ると、『二人がおどる、

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(劇評)踊りたいんだ、僕は

アクラム・カーン カンパニー『Chotto Desh チョット・デッシュ』の劇評です。
2018年8月17日(金)14:00 金沢21世紀美術館 シアター21

撮影:池田ひらく 写真提供:金沢21世紀美術館

 これが僕のやりたいこと。
 君のやりたいことは何?
 アクラム・カーン カンパニーの『Chotto Desh チョット・デッシュ』は、満面の笑顔でそう問いかけてくるような作品だった。

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(劇評)私は父と踊れるか?

(劇評)私は父と踊れるか?

伊藤郁女『私は言葉を信じないので踊る』の劇評です。
2018年8月4日(土)19:00 金沢21世紀美術館 シアター21

 私は父と踊れるか?
 私は父と、踊るようなコミュニケーションを取ることができるだろうか?
『私は言葉を信じないので踊る』が、伊藤郁女と伊藤博史の、実の親子によるダンスだということを知ってから、私は自分と父親の関係を考えていた。

 会場に入ると、上手に置かれた背もたれのある

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(劇評)わくわくする気持ちが

(劇評)わくわくする気持ちが



 会場に入ると、女子の心をときめかせる空間があった。5つの小さな店舗が並ぶ。花(NOTE)、パン、お菓子(金沢小町)、服、布製品(山﨑菜穂子)、アクセサリー、紙製品(つぶ100%)、ドレス(lecture de minuit)。それらが素敵にディスプレイされて、それぞれに魅力を放っている。そこは「いまるまる商店街」。椅子に荷物を置いて、お店を見て周る。塩パンとハーブティーを早速買い求め、食べな

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(劇評)自己紹介は難しいけれど

(劇評)自己紹介は難しいけれど

(劇評)自己紹介は難しいけれど
LIRY Project 01 in KANAZAWA『4xPersonne』の劇評です。
2018年7月21日(土)14:00 金沢21世紀美術館 シアター21

 自己紹介は難しい。新年度などに見知らぬ人達の前で、自分というものを数分で説明せねばならないのが、いわゆる自己紹介だろう。私はこういうものですと、人前に差し出せる「私」は、どうあがいても私の一部分でしか

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(劇評)もし純愛があるのならば

(劇評)もし純愛があるのならば

Noism1×SPAC 劇的舞踊 vol.4『ROMEO&JULIETS』の劇評です。
2018年7月14日(土)17:00 オーバード・ホール

 Noism1×SPAC 劇的舞踊 vol.4『ROMEO&JULIETS』は、演劇でもあり舞踊でもある。俳優と舞踊家が入り交じり、その世界を織りなしていく。状況の説明は最小限に留められ、役者達の対話は少なく、舞踊が多くを占める。シェイクスピアの『ロミ

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(劇評)ちいさな、から、はじまる

100いまるまる『いまるまるのおどりの公演6 ちいさなうそをつく』の劇評です。
8月28日(日)2000開演 金沢アートグミ

 演じられるスペースは、アートグミの板張りの床そのままである。奥の中央に正方形の大きな白い壁がある。この壁に、映像が映し出されて、パフォーマンスが始まる。
 回る地球儀、めくられる本、スイッチを押される扇風機。部分だけの映像は、日常の風景を引用しているかのようだ。
 しば

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