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ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑲~ 旅の終わり

■ レナデルタ出発

天候が荒れて、なかなかボートが出せないまま、チクシからヤクーツクに戻る飛行機の日程(7月15日)はせまってくる。
少し心配になって「いつ出る予定なのか?」と聞いても、

「I don’t know」と、返ってくるばかり。。。

「天気が悪いのは続くものだ。Arctic Exoticだ!」

だそうである。
7月11日の夕方になって、ようやく晴れ間が出てきた。
21:00 ワロージャ氏が、むくっと起きる。

「Finish!」と、一言。

おぉ、ついにここを去る時が来たのか、、、と感慨深く、片づけを始める。帰る前にこれは、やっておかなければならない、ということで、ツンドラで着物を着て記念撮影。

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片づけをして、掃除をして、漁師さんの私物をもとに戻す。

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ありがとう、漁師小屋。

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日付がかわって、7月12日 0時33分。
ついに、ニェルパーハ島をあとにする。

白夜とは言っても夜は冷える。帰りは極寒。川面にも朝もやがかかっていた。
ヒシクイの群れが名残惜しそうに飛んでくれている。気がする。

コハクチョウもちょうど孵化したくらいの時期のようで、たくさんの家族に遭遇。

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5:30にMETEOに到着し、長かったような短かったような調査が終わりを迎えるのであった。

■ チャイカにもパカー!

一寝入りして、最後にカモメを取らなきゃ気がすまない人がいたので、もうひと踏ん張り。

腐った缶詰 プリマンカ をもらい、罠を仕掛けてる。

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セグロカモメ。でかいよな。

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達者に暮らして、日本に来るんだぞ!
パカー!(バイバイ)

7月13日朝、METEOを出発し、15:00にチクシの町まで戻り、19日にわたるレナデルタ滞在が無事、終了したのであった。

■ 帰路

7月14日、チクシに滞在し、お土産の購入や体を休めることに専念。
7月15日、チクシからヤクーツクへ飛行機で戻る予定。

しかし、この日は風が強く、我々がとった航空会社(ポーラーエアー)は飛行機が飛ぶか調整中とのことであった。
もし、この日に飛行機が飛ばなければ、次のチクシ→ヤクーツク便は、18日になる。18日早朝には、ヤクーツクからハバロフスク→仁川→成田まで帰る予定であったので、15日の飛行機に乗れなかったら、とても面倒。

飛ぶのか飛ばないのかわからないまま、待機し、ワロージャ氏は何やら電話で確認したりしてくれている。と、突然、

「Fresh information! Today, no flight!」

と。しかたない、もう少しゆっくりして、フライトの変更などもおいおい考えるか、と思っていたところ、
12:30、急に「空港に行く」と空港に向かいだした。

どうやら、ポーラーエアーは飛びそうにもないが、ヤクーツク航空なら飛びそうとのことで、空港までチケットを変更に来たのだ。
しかし、空港まで来たはいいものの、ここのチケットカウンターはインターネットがダウンしていて、チケットの変更ができないとのことであった…。急いでチクシの町に戻り、旅行会社カウンターへ。2軒目でようやくチケットを変更できたらしい。状況が理解できないまま、ただひたすら、ワロージャ氏についていき、再度空港まで向かう。どうやら何とかヤクーツクまで帰れそうな気がしてきた。

飛行機が飛ぶことが決定し、あとは搭乗手続きのみ!であったのだが、
ここで

「チクシに到着したときに渡されているはずの国境警備隊からの書類がない!」とひと悶着。

そういえば、池内氏が先に帰ったので、その時に持って帰っていたのである。ワロージャ氏に説明してもらい、15分くらい待たされ、なんとか搭乗手続きも通過。そして無事にヤクーツクにたどり着いたのであった。


7月16日、ヤクーツクにつき、観光やお土産購入などゆっくりできると思っていたが、、、朝起きると、まさかの腰痛が再発して動けないほどになってしまった。

佐藤氏にお湯を沸かしてもらい、あっためたタオルで腰を温めたり、足を温めたりを繰り返して何とか処置をする。しかし、痛みはなかなかひかない。ヤクーツクでお世話になっているインガ女史に電話し、助けを求める。土曜日で病院が営業していないので、色々電話をかけてくれたり、車で探し回ったりしてくれた。しかし、医者が見つからず、インガ女史の妹がやっているマッサージ屋さんでとにかくコリをほぐして、痛み止めを打ってもらった。マッサージを受け、幾分ましになったところで、その日は安静に過ごす。

7月17日。今日も一日安静に…。
仕方がないがマンモス博物館などに観光に行けなかったことが心残りである。佐藤氏が、ヤクーツクに来た時に行った、池の様子を見に行くと。

ユリカモメはすっかり巣立っていたようである。

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なんと、ヒメカモメも1羽いたとか。

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マーリンキ。小さくてかわいい…。みたかったなぁ!

7月18日。朝4:30に宿まで運転手のサーシャ氏に迎えに来ていただき、空港へむかう。

もう本当にロシア生活が終わってしまうのだとしみじみ。

帰りはなんだかあっという間で、ハバロフスク、仁川と乗り継ぎ、成田には21:00ごろ到着した。たかだか1か月であったが、すっかり白夜になれてしまったので、「夜って暗いものなのか」と改めて感じ、日本に戻ってきたことを実感してしまった。
そして、成田からの帰り道、1か月間苦楽を共にした佐藤氏と、充実した調査生活の余韻に浸りながら、それぞれ帰路についたのであった。

つづく

【過去記事】
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ①~ はじまり編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ②~ 資金集め編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ③~ 準備編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ④~ 出発編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑤~ ヤクーツク編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑥~ ヤクーツク編その2
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑦~ チクシ編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑧~ チクシ生活事情
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑨~ いよいよチクシ出発
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑩~ レナデルタ潜入
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑪~ METEO散策
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑫~ 調査拠点到着
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑬~ 北極圏の洗礼
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑭~ シギチ天国
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑮~ コクガンコロニー上陸①
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑯~ コクガンコロニー上陸②
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑰~ 続・ニェルパーハ島探検!
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑱~ フィールドでのとある一日


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渡り鳥の研究には、旅費や発信器購入、罠の作成など、そこそこのお金がかかります。もちろん科研費や助成金などを最大限獲得していますが、それだけでは大変厳しく、手弁当も多いです。渡り鳥についてもっと知ってみたいという方々のご支援よろしくお願いします。