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ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑬~ 北極圏の洗礼

調査拠点であるニェルパーハ島には、10~15日程度滞在するとのこと。天気が荒れるとボートが出せないので、7月8日から13日の間の天気が良い時に帰路につくようだ。

コクガンのコロニーへの調査(調査拠点からボートで行く)は、コクガンが一番捕獲しやすい孵化直前の時期を狙うとのことで、7月3日くらいを考えているとのことであった、それ以外は基本的にフリーだから、何をやってもよいとのこと。早速、ニェルパーハ島の探検に繰り出そうか!と思っていた矢先…

■ 北極圏の試練

6/29 朝4:30に目が覚める。白夜でずっと明るいので昼夜の感覚はない。トイレから戻り、小屋で伸びをしたところ、、、

左腰から左足先にかけてしびれが走り、つったような感覚を覚え、痛みが走る…。直感的にやばい、と思った…。
その後、腰と左足の痛みは増すばかり、立っていても座っていても寝ていても痛みが引かず、、、日本から持ってきた痛み止め(イヴ)も全く効かず、ワロージャさんにもらった痛み止めも効かず、ボバさんがぶかぶかの腰のサポーターを貸してくれたが、全く痛みはひかず… 朝食も満足に食べることができなかった…

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ずっと寝てる小生(上段)↑

寝袋の中で悶えながら、本気でレスキューを呼ぼうかと思い、旅行保険の説明書を読み込む

なんと…「腰痛、むちうちは対象外」らしい。

愕然とする…
あぁ、約款はよく読んでおくべきだったと後悔。。。

すると佐藤氏から「あ、俺、温シップあるよ」との一言。

藁にもすがる思いで温シップを腰に貼ると、、、驚くほど腰が楽に!まだ外を歩き回るにはつらいけれども、何とかなりそうだと希望が湧く。あぁ、帰国したら、久光製薬に挨拶に行こう!

帰国後、整形外科を受診すると、椎間板ヘルニアであることが判明。
どうやら、これまで蓄積されたものが、ベッドの寝心地の悪さと、北極圏の寒さと、疲労で表に現れてしまったようだ…
ちなみに、今回のように病名がつくと保険は効いたらしい。結果的にヘリは呼ばなくてよかったのだが、椎間板ヘルニアだと保証範囲内とのこと。
残念ながら、久光製薬にはお礼に行くことはなかった…

■ 待つのも仕事

上述の通り、6/29はほぼ動けず。佐藤氏が小屋周辺を散策し、
「ヨーロッパトウネンの巣があった!ケワタガモが営巣してた!」
などと、うらやましい報告を上げてくる。あぁ、早く外を探検したい…

6/30 幾分、痛みは和らいだ。

しかし、外は強風。今日はコクガン調査行かないとのこと。あぁ、よかった。。。

腰の痛みに焦る小生に、佐藤氏が一言

「待つのも仕事」

ありがたや。。。
外に出れず、暇を持て余しているので、なんかできることはないかと考える。
なんだか、シギ・チドリ類はかなり繁殖してそうで、巣はかなり見つけられそうだとのこと。それならば、各種ごとに営巣場所の特徴を記録できないか、と思い、巣がどれだけ隠れた場所に作られるのかを調べるためのチェックボードを作成。

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■ ロマンティックアークティック

7/1 今日も強風のため、外に出れず。
ここは北極海に面しているし、さえぎるものは何もないので、風がそのまま吹き付ける。レナ川も波がたっていて、船は出せない。
レナ川に首突っ込んで餌を探すコハクチョウ↓

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まぁ、天気が悪いのはいつものこと。ワロージャ氏いわく、これが

「ロマンティックアークティック」

らしい。

どれくらい強風だったのかというと、
外でした御小水が、地面に着く前に全て飛んで行くくらいであった。

あまりにも暇だったので、ここで一句。

レナデルタ 吹き荒れる風 身に染みて
飛び散るしずく エンジェルフォール

このロシア調査中、短歌がマイブームだったので、ほかの作品はまた今度。

まぁ、腰の具合はだいぶ良くなってきたので、この天候は自分にとってはよかったのかもしれない!
つづく

【過去記事】
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ①~ はじまり編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ②~ 資金集め編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ③~ 準備編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ④~ 出発編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑤~ ヤクーツク編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑥~ ヤクーツク編その2
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑦~ チクシ編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑧~ チクシ生活事情
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑨~ いよいよチクシ出発
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑩~ レナデルタ潜入
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑪~ METEO散策
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑫~ 調査拠点到着

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