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ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑫~ 調査拠点到着

■ 調査拠点 ニェルパーハ島へ

2016/6/28 晴れ。ロシアに来てから2週間。ようやく、調査拠点へ向かう。
調査拠点は、レナデルタの中でも、ほぼ北極海に面した先端部。
METEOから170kmほど離れた、ニェルパーハ島(Nerpalbakh)島である。
北緯72°52'、東経129°22'

調査拠点

人生最北端更新でです。

10:10 出発。入り組んだデルタ地帯をGPSや地図を頼りに、時折停止して位置を確認しながら注意深く進む。

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120kmほど来たところで、島に停泊し、ガソリンの補給。

少し時間があったので、あたりを見回すと、コハクチョウ、ヌマライチョウなど。

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テンション上がるなー!と思っていたら、ふと、遠くから全速力で向かってくる黒い物体を発見。

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ぐんぐん向かってくる。途中でコハクチョウと思われる巣にアタックをかけて、ハクチョウが飛びのいて威嚇。そして、また全速力でこちら方面に向かってくる、、、

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正体は、クズリ(英名:ウルヴァリン)であった。最初は、おぉ!と思っていたのだが、さらに近づいてくる。ちょっとやばいんじゃないか???そのうち川岸にたどり着き、岸沿いをこちらに向かってきた。声をあげて、ロシア人2人に知らせると同時に、クズリも気が付いたのか、すくっと立ち上がり、こちらを見てまた全速力で引き返していった。。。クズリは獰猛と聞いていたので、けっこう焦った。

ガソリンを入れ終わり、再び出発。16:45 ようやく調査の拠点となる島に到着。

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ここにも立派な小屋がある。
この付近は、冬季になると凍結した川や海で、氷に穴をあけて漁や猟をするという。そのための漁師小屋があるのだが、夏季は誰もいないため、そこで宿泊させてもらうのである。

■ 宿泊場所

小屋につくと、窓ガラスはバキバキに割れていて、カップ麺などの食料やゴミが散乱していた。なかなかの荒れ具合。

「漁師はこんな汚いところで生活して、食い散らかして帰るのか…」と思ったのだが、どうやら無人の時にクズリが来て荒らしていったらしい。ゴミやガラスの破片が散らかり、雨や雪が吹き込んでびしょびしょの部屋の中。ここで過ごすならテントのほうがましなのでは…などと思ったが、ひとまず片づけを始める。

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ボバ氏とワロージャ氏は、どこから見つけてきたのか、半透明のシートを窓枠大にカットし、材木片を見繕い、窓を修理し始める。
日本人2人は、部屋の掃除。濡れた漁師の布団を納屋にしまい、部屋をほうきではき、ゴミをまとめ…。1時間くらいは掃除しただろうか。一段落したところで、ビールで乾杯。

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スノーモービルも拝借し、荷物を運びこむ。

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落ち着いて、ストーブに火を入れると、部屋の湿気もとれ、見違えるような快適な空間へと早変わり。

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ここへ7月12日まで約2週間滞在したが、この小屋のおかげで、とても快適な生活をすることができた。

寝床も4人がちょうど寝れるスペースがあった。

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ライチョウの足。豊漁のお守りのようである。これ、欲しい。

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そして、小屋のまわりには、トイレ、バーニャ、スノーモービルの車庫など。

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左から車庫、トイレ・バーニャ、漁具などが入った倉庫。

バーニャの中はこんな感じ。ストーブでガンガンお湯を沸かし、そのお湯をこの裏につんであるある石やストーブにかけていく。

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トイレは、写真はないけど、個室の真ん中に穴があいており、その下にドラム缶が置いてある。
風が強い時は、ドラム缶にめがけて発射した御小水がドラム缶に入る前に霧散してしまう。

ともあれ、まさか北極圏でこんな快適な小屋に泊まることができたとは、幸いであった。
つづく

【過去記事】
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ①~ はじまり編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ②~ 資金集め編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ③~ 準備編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ④~ 出発編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑤~ ヤクーツク編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑥~ ヤクーツク編その2
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑦~ チクシ編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑧~ チクシ生活事情
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑨~ いよいよチクシ出発
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑩~ レナデルタ潜入
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑪~ METEO散策

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