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ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ②~ 資金集め編

そもそも、資金がないのに調査の計画を決めたんかい、という突っ込みは置いといて… 今回は資金集めと準備について書きます。これもリアルな研究の裏側の一つということで。
※ 最終的にかかった費用は、別の記事で検証します。

■ 資金集め編

調査までにしなければならないこと、資金集め。主な必要資金は、ロシア側の受入機関への費用(フィールド調査の日当やボート、燃料、食料等)と、最寄りの町から調査地までのヘリコプターによる輸送代である。調査に係る個人の渡航費用などは、自腹とのこと。
日本からの調査隊は当初、最大6名の予定であり、6名全員が行くためには、ヘリコプターでの輸送が必須。ヘリコプターの資金が獲得できない場合は、ボートでの移動となり、4名がギリギリという感じであるとのこと。ハードルは高いが、できるだけやってみましょうということで資金集めを本格的に開始した。

助成金もいろいろ探したが、4月に応募して6月の調査からもらえる助成金はなかった。寄付を募っていこうということで、4月末には、池内氏が「Ready for」というクラウドファンディングに登録して、資金集めの体制を整えて下さった。

日本に飛来する雁の調査開始から30年!コクガンの繁殖地解明へ!クラウドファンディングの説明サイトには、池内氏がとても丁寧に調査趣旨やこれまでの成果を記載してくださっていたため、これを使って様々な方へ支援を呼びかけた。2016日5月18日付の毎日新聞にコクガン調査の記事が掲載され、5月21日には千葉県習志野市谷津干潟自然観察センターで調査説明会を行うなど、調査への理解と支援を求める活動を展開。
しかし実態は、知人(雁の里親友の会の会員中心)に声掛けをしていくことで、支援の輪が広がったような感じで、なかなか全く知らない人からの支援というものを得るのはとてもハードルが高いということを実感した。

このReady forでは、成立金額の12~17%が手数料としてひかれる仕組みになっている。担当がついてくれるようであるが、あくまで、周知して広げていくのはこちらの責任でやらなければならないし、Ready forが新規の支援者をひっぱってきてくれるわけではない。それなのに、既存の知り合いから支援をいただき、さらにReady forに手数料を取られるのはばかばかしい、という話になり、結局、最後のほうは達成を目指さずにクラウドファンディングは終わってしまった。
最終的には、クラウドファンディングは不成立ながらも、池内氏が雁の里親友の会の会員の方々に呼びかけていただき、ヘリコプター代までは届かないものの、なんとか調査を実施する資金めどを立てることができた。支援してくださった方々に本当に感謝。

クラウドファンディングの振り返りとしては以下の感じであろうか。
【よかった点】
・Ready forに登録することで、知名度を上げることができた。
・支援のお願いやどういう調査にいくのかの説明には、Ready forのサイトがおおいに役立った。

【反省点】
・不特定多数の人から支援をもらうには、”共感”をどのように得るかが大事
・今持っている伝手を太く維持することが大事

この資金集め、現在も一番苦労するところである。成果を学術論文だけでなく、様々な形でアウトプットして、
 ・色んな人に知ってもらう努力をする
 ・支援者、社会へ還元する
 ・普及、教育も視野に入れ、仲間を作っていく

ということが重要だと痛感している。

さて、資金については、ある程度目途がつき、調査隊の規模も3名にするということに決まった。次は、調査には何がいるのか??準備にとりかかる。
つづく

ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ①~ はじまり編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ②~ 資金集め編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ③~ 準備編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ④~ 出発編
ミニ連載:雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記 ⑤~ ヤクーツク編

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