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掌編小説

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140字から始まる超短編小説です
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2021年1月の記事一覧

誰かのためのごはん【短編】

誰かのためのごはん【短編】

経営してた三ツ星のフレンチレストランがつぶれ、借金を抱えた。

従業員は解雇し、自分はツテを頼って知人の店に。味の意見が衝突して辞めた。
何度かそれをくりかえして、ハローワークへ。
そこからまた何軒か転々とした。

今は格安のチェーンで、決まったメニューを出す日々だ。
味付けは会社が指定している。変えたらクビだと言われた。

クリスマスに、客なんか来やしない。

すみのテーブルに、牛丼を食べている

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星を語るピアノ【短編】

星を語るピアノ【短編】

宇宙船がその星に降りたとき、生体反応は1人だけだった。

「あなただけですか?」
船員は相手にたずねた。

数日間観察した結果、わかったこと。
このヒューマノイド型の女性が、ピアノを弾き続けていたという事実だ。食事をとるときと寝るとき以外、ずっと。

「そうです」
女性はうなずき、指を鍵盤に置いた。口はほとんど動かない。テレパシーだろうか。
「私で最後です。もう650年生きました。そろそろ寿命が尽

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