見出し画像

市場をつくる上で「世の中の認識を変える」ことは欠かせない 『PERCEPTION』市場をつくる新発想 本田哲也著(日経BP)

■この本が役立つひと


商品の認知は高いのに、売り上げが低迷しているひと。
歴史あるブランドが、どう若年層にアピールすべきか。
社会の中で、ブランドの存在意義をどう定めればよいか。
スタートアップは、とにかく広告で認知度を高めればよいのか。
新しい市場をどうやって生み出せば良いのか。

■パーセプションとは


パーセプションとは、「客観的認識」
消費者の商品やブランドに対する認識のこと。

見え方捉え方は人によって異なり、時代によっても移り変わる。

■パーセプションコントロールスキルを身につけると良い理由


1、トレンドを生み出すことができる
2、パーセプションは、経営、マーケティングまで広くさまざまな仕事に関係する
3、トレンドの発生や移り変わり、そして衰退の裏には、常にパーセプションの変化が潜んでいる。→長く継続できる

■なぜ、パーセプションが必要か


認知重視型マーケテイングは限界にきている。
ものが溢れ、コモディティ化がすすむ昨今は、認知を獲得するだけでは、消費者の心は動かせない。認知ばかり上がっても、認識されなければ行動変容にはつながらない。

SNSが浸透し、企業と消費者が対等になった世界で、企業・ブランドからの一方的な情報発信の価値は下がっている。企業から一方的に機能価値を伝えるだけでは、行動変容はおこらない。情報が溢れ、ネットで検索すらしない消費者も増えている。興味対象外の情報は、容赦無く排除される。

もはや「認知」を争う戦いではない。

いま、客観性(消費者視点での商品やブランドのみられかたの変化)
の重要性が高まっている。

世の中から商品・ブランドに向けられる認識つまり「パーセプション」の正しいコントロールスキルが求められる。

そのために、わたしたちは、お客様の目に、自分たちがどのようにうつっているかから目を背けてはいけない。

現代的なマーケティングで、パーセプションの正しい理解は不可欠。
新しい市場をつくる上で、「世の中の認識を変える」ことは欠かせない。

パーセプションを正しく理解することで、マーケティング課題の突破口がみつかる。

■著者が主張する3つの主な理由


1、メタの時代

メタ認知とは、
「認知していることを認知すること」(自分の認知行動を把握できる能力)
「無知の知」ソクラテス
自分の思考と行動を客観的に把握すること。

Z世代は、すでにメタ認知ができていて、
消費行動において、自分に必要なものとそうでないものを客観視できる。
「みんながもっているから」は直接的な購買動機にはならない。
自分にとって必要なものを、冷静に判断できる。
Web3、メタ時代の到来により、「メタ認知」の価値は高まる。

2、社会との接点
社会的な存在意義が共感を呼ぶ。
いかにファクトの積み上げで信頼を得るか。
(ストーリーテリングから、トラストビルディングへ)
真っ当なファクトの集積が必要になる。

消費者とのタッチポイントが多角化し、
利害関係がマルチ化している今だからこそ、
存在意義が明確であることが求められる。

企業は、重要なステークホルダーが、「従業員」であることも
覚えておかなくてはいけない。

単にブランドを管理するだけではなく、ブランドの関係者をより広く捉え、ステークホルダーまで拡張して管理する必要がある。

3、長期的しなやかさ
先が見えないいま、
長期的なブランド価値は存在しにくくなっている。

消費者にどう受け止められるか絶えず考慮し、それをアップデートし続けなければならない。時代に対してよりしなやかかに、その価値を定義すべき。

LTV、ブランドエクイティが、より重要性される。

■パーセプションとイメージの違い


信頼の獲得は、イメージ勝負では得られない。
パーセプションには、「ファクト」が必要
(イメージには、ファクトがない)

事象とパーセプションのサイクル(循環)で、大きく育つ

■ブラントとパーセプションの違い

ブランドとは、個別の売り手、または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスを区別するための名称、ことば、・、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせのこと。

重要なポイントは、「主体が企業側である」ということ。
ブランドの成功と企業の理念は密接な関係にある。

ブランドの本質は、「企業が大事だと思うこと」

一方、パーセプションは対極的な存在で、
「世の中や消費者があなたをどう見るか」ということ。

ブラントとパーセプションの一致「オーセンティシティ」が重要になる。

一致すると、ビジネスに直結。炎上しにくくなる。

■パーセプション5つの要素

1、事象(それに至る事象や事実)
2、リテラシー(みているひとの経験や価値観)
3、グループ(属するグループに対するパーセプションが個人のパーセプションに影響を与える)
4、コントラスト(例)スカイツリーと東京タワー
5、タイミング(例)新型コロナウイルスのマスクの必要性の高まり

■パーセプションチェンジで重要な5つの要素

1、ビフォーアフター
2、主観と客観
3、カテゴリーとプロダクト
4、完全変容と拡張
5、ブランドエクイティ

■マーケティングへの活用

どのようなパーセプションを世の中に送り出すか明確化し、つくること。

■パーセプションフローモデル

パーセプションフローモデルとは、認識が変化する流れ。

この消費者のパーセプションを中心としたマーケティング活動の全体設計図で、全体がわかる、消費者中心の活動設計できる、一枚のパーセプションフローモデルで一連のマーケティング活動を管理できる(共通言語として共有しやすい)。自動車、オートバイ、医薬品、家電、アプリ、受託、電力会社、放送局へと適用範囲を大きく広げている。

■6つのメリット

認知と知覚の理解は、「何を言うか、どう言うか」という送り手の視点だけではなく、「どのように聞かれて、どのように理解されるか」という受け手の視点をもつことにもつながる。

1、全活動を把握できるので、全体最適を実現しやすい
2、全体最適に基づいて各活動の目的が明確になるので、成果をあげやすい。
3、消費者の変化を描くので、消費者中心の経営を仕組み化できる
4、消費者の変化や段階に応じて、先端技術を運用しやすくなる。
5、共通言語として、知識の収集・蓄積・流通のプラットフォームになる。
6、部門間の意思疎通を促し、権限移譲や自律的なオペレーションの構造を促す。

■5段階活用

・つくる
市場創造。確固たる自信をもち、新しい認識を世の中に創造する。
消費者が気づいていないようなインサイトを導きださなければならない。
競合分析も、そもそもすでにある狭い領域の中での分析結果しかでてこない同業種、同領域の調査をしたところで、まだ見ぬ新しい領域やマーケットを発想することは難しい。

有用な問い:「世の中のどこに新しいパーセプションをつくる余地があるか」

・かえる
“パーセプションチェンジ”(認識変容の実践)
パーセプションチェンジとは、商品やサービスに対して既存のパーセプションが、何らかの状況変化や仕掛けによってかわること。
新しい顧客を獲得したり、ブランドを活性化したりできる可能性が高まるため、最も需要が高い活用方法と言える。

空気の変化をよく読み、中長期的な視点でプロジェクトを策定し、遂行していく必要がある。

・まもる(認識の維持)
「認知」には「まもる」と言う概念がない。
認知で大事なのは広告出稿を継続するなどして、想起を継続させること。
対し、パーセプションは、様々な要因によって変化するもの。

パーセプションは、同時多発的に起こる。
パーセプションは、世の中に1つしか形成されるものではなく、会社やブランドを見る角度や見ている層によって異なったパーセプションが存在し得る。
パーセプション戦略において、「まもる」という視点は非常に重要になる。

・はかる(既存認識の計測分析)
マーケティングでは、施策の効果を計測・分析しKPIを見て、次の打ち手にいかす作業が大切になる。しかし、パーセプションの貢献度を正しくはかることは、容易ではない。

なぜなら、パーセプションとは受けて、世の中の認識だからだ。
また、パーセプションは、生き物のように限りなく変化する。
いままで企業で行われてきたような、マーケティング調査や消費者調査という方法論は、応用できない。


・いかす(商品開発に応用)
パーセプションは、マーケティングにとどまらず、もっと広くビジネス全体に応用できる。(コミュニケーション対象、マーケティングをこえた取り組み)


(※各々の方法については、本書を参照)


■事例

・アリエール「新しいパーセプション:除菌」
PR戦略で洗濯物には菌が残っているというパーセプションを生み出し「除菌」の必要性を訴えかけて成功した。

除菌は、市場に全く受け入れられなかったところからのスタートだった。
アリエールはまず、衛生の専門家の先生と共同で実証実験を行い、「バイ菌の移行サイクル」という循環モデルを作成した。

外で遊んできた子どもの服には、バイ菌が付着している。それに加えて、日本特有の行動としてお風呂の残り湯を洗濯に使う家庭が多い。
その結果、見えないバイ菌が洗濯槽に集まる。そのため普通に洗濯しただけでは、バイ菌が残存する。

洗上がって、白くなっているようにみえるが、実はバイ菌が残存している。それを子どもたちが着れば、感染症のリスクが高まる。
実験と事象をもとに、除菌という新しいパーセプションを生み出した。


■まとめ

どんなパーセプションが市場に受け入れられるのか
どんなパーセプションをつくりだすことで、市場が広がっていくのか
「パーセプションフローモデル」を使い、顧客視点で考えてくことが、
マーケティングの中心になる。

パーセプションをコントロールすれば、
世の中に、まだ創造されていない様々な価値を生み出すことができる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?