マガジンのカバー画像

英語

72
本とか映画とかHR/HMとかレトロゲームとか。
運営しているクリエイター

2024年5月の記事一覧

自分の子供に好きな作家の妻の名前をつける親の心理の謎【固有名詞】Hathaway(シェイクスピア『ハムレット』)

自分の子供に好きな作家の妻の名前をつける親の心理の謎【固有名詞】Hathaway(シェイクスピア『ハムレット』)

ゆえあって『ハムレット』を読み返そうとして、巻頭の著者紹介でひっかかった。

シェイクスピアの嫁さんの名前は、アン・ハサウェイだったのだ。

調べてみると、まさかとは思ったが、女優のアン・ハサウェイ(本名アン・ジャクリーン・ハサウェイ)は彼女にちなんだ名前だった。シェイクスピアとともに数々の文学作品に登場してはいるそうだが、子どもにつける名前としては妙である。

例えば中根という苗字の人が、夏目漱

もっとみる
ジョークを分析し、おもしろい要素を抽出して消滅せしめ、おもしろくなくする試み【ジョーク】どこかで見た顔(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

ジョークを分析し、おもしろい要素を抽出して消滅せしめ、おもしろくなくする試み【ジョーク】どこかで見た顔(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

文学にまつわる事件を解決する文学刑事シリーズより。潜入捜査中のヴィクターが、正体を見破られそうになる場面である。

どこかで聞いたことがあるような、なつかしく、そしておもしろいジョークだ。

どこの国でも、どんな言語でも通用する普遍性もありそうだ。

なにがおもしろいのか、考えてみよう。

人は主に顔で他の人間を認識しているから、「どこかでお前に会ったことがある」という意味で「どこかでお前の顔を見

もっとみる
ピザをFAXする【ジョーク】sending pizzas by fax(ジャスパー・フォード『文学刑事サ-ズデイ・ネクスト』)

ピザをFAXする【ジョーク】sending pizzas by fax(ジャスパー・フォード『文学刑事サ-ズデイ・ネクスト』)

本の世界に入って事件を解決する文学刑事シリーズ。発明家の伯父について語られる箇所だ。

FAXでピザを送信するってすごくおもしろいアイデアだ。この本を読んだのはたぶん20年近く前で、筋はほとんど忘れていたけど、一度だけ言及されたこのアイデアだけはずっと覚えていた。

野暮を承知でなにが面白いのか説明してみると、その昔、世の中にFAXというものが登場した時に、「紙を送信できる」と勘違いする人もいて、

もっとみる
人生の意味を知りたい方へ【バンド名】Tombstoner

人生の意味を知りたい方へ【バンド名】Tombstoner

Spotify のレコメンドに上がってきていて、一瞬で惚れた。すばらしいバンド名だ。

Tombstone (墓石)に r をくっつけて、動作者名詞のように造語して、ストーナーロックのように思わせながら、実はストレートなデスメタル、という裏切らない裏切り。

歌詞は悪趣味極まりなく、ここではとても紹介できないが、次の哲学的な一節は、ごみ溜めの中できらりと光っている。

虚無的に見えて地に足のついた

もっとみる
使いたくも使われたくもない言葉【フレーズ】Permission denied(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

使いたくも使われたくもない言葉【フレーズ】Permission denied(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

文学にまつわる事件を解決する文学刑事シリーズより。政界も牛耳る軍事企業の介入により、主人公が上司から意に染まぬ命令を受ける場面。

知ってるけど使いたくないし、使われたくない言葉ってないだろうか。

私はある。例えば You're dismissed だ。

直訳すると「あなたは去らせられる」。この場に留まる必要はないことを伝える言葉で、「解散」とか「下がってよろしい」などと訳される。

この人を

もっとみる
身と蓋【表現】Time Management

身と蓋【表現】Time Management

『世界くらべてみたら』というテレビ番組の、「妻が夫に抱く不満を夫に当てさせる」という企画で、Time Management と答えている奥さんがいた。

字幕では「遅刻」と訳されていた。番組の趣旨には合致しているけれど、身も蓋もない訳だ。

逆に言うと、ネガティブな言葉をニュートラルな言葉で言い換えるこの「身と蓋」こそが文化であり、教養なのだろう。ぜひ身につけたいものだ。

「片付けができない」→

もっとみる
ひはいほんやふにまへるな!【翻訳】(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

ひはいほんやふにまへるな!【翻訳】(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

文学にまつわる犯罪を解決する文学刑事シリーズより。正体を現した吸血鬼と主人公が対峙する場面。Spike は同僚のヴァンパイアハンターである。

引用は、牙が伸びて下唇に引っかかり、うまくしゃべれなくなった吸血鬼のセリフである。s を th に置き換えて表現されている。

驚いたことに昨今の機械翻訳は、このくらいの表記の変化やスペルミスくらいなら、難なく訳してしまえるのだ。

しかし、しかしである!

もっとみる
励ましと労わりと愛【歌詞】ゲワイエンタフ(TMネットワーク / Get Wild )

励ましと労わりと愛【歌詞】ゲワイエンタフ(TMネットワーク / Get Wild )

ゲワイエンタフ。久しぶりに心地よい英語のカタカナ表記にまみえた。「シェキラベイベー」とか「ゲロンパ」とか「グッジョブ」とか、英語を聞こえたままカタカナ表記することを推奨するものとしては見逃せない逸材だ。似たようなことは以前にも書いた。

この度 B'z がTMネットワークの Get Wild をカバーすることになって、関連ニュースがいろいろ流れてきているが、ある動画で「歌詞の意味はわからないが、雰

もっとみる
本物のひざ【動詞】genuflect(ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』)

本物のひざ【動詞】genuflect(ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』)

genuflect って、あまり見かけない単語なので調べてみると、genu はまんま「ひざ」のことだった。

さらに重要単語 genuine(本物の、純粋な) はラテン語由来で「gen-(ひざ)+ine (…に関する)=ひざに置かれた」の意味で、「赤ん坊を父親のひざに置いて認知したことから」(ジーニアス英和大辞典)だという。

「ひざ」と「本物」が結びつくなんて、なかなか思いつかない。こういう語源

もっとみる
心の壁【動詞】cocoon(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

心の壁【動詞】cocoon(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

本の世界に入って事件を解決する文学刑事シリーズ。主人公が『ジェイン・エア』の登場人物と初めて出会ったときのことを回想する場面。

だいぶ意訳してるが、おもしろいのは、子どもが現実と虚構の区別があいまいなのは、心が未発達だからではなくて、か弱い蛹を守る繭のように、心を虚構から守るシェルターが、十分な強度を持っていないからだとしている点だ。

そのことを示すために、cocoon が動詞として効果的に使

もっとみる

Cvlte というバンドに Praystation 2 (祈りの場所?)というアルバムがあることを知って、l と r はネイティブにとっては絶対間違えることがないくらい違うと聞いていたけど、シャレになるくらいは似ているのかと思ったら、札幌のバンドだった。

タオる【動詞】 towel(ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』)

タオる【動詞】 towel(ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』)

殺人事件に巻き込まれ、動揺する主人公を描いた場面。

towel が、「水気を取る」という意味の動詞として使われている。英語ってなんでも動詞になるのね。

確かにタオルというものは、他の使い道はちょっと思いつかない。

想像をたくましくすれば、もし有史以来、体表の水分を自然乾燥させたり、ティッシュで拭き取っていた人類(ずいぶんのんびりした人類だ)が、今世紀になってタオルという超便利なものを発明し、

もっとみる