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ゼミや授業での課題

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#恋愛

女ごっこ

女ごっこ

 小説家になる、というのが幼い頃の僕、綿貫梓の夢だった。過去形になっているのは無論、今の自分がそうなってはいないからである。コンビニのアルバイトで稼いだ都内最低賃金をいくら本に注ぎ込もうとも、ノートにいくら文章を綴ろうとも、いずれは叶うだろうと一縷の希望を抱くほど現実はそう甘くない。お陰で僕の有り金はいつしか酒代に変わるようになっていた。小説家なんて天才か少しばかり運が良かった話題性の凡人にしかな

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ナプキン

ナプキン

そろそろかな、と思ったときにはもう遅かった。筋肉がなくなって弛んだ太ももの間の暗い部分を見つめながら大きく息を吐いて、それと同じ量の息を吸った。こびりつくようなラベンダーの臭気が酷く神経に障る。おっと。イライラしちゃ駄目よ、智恵里。真横に取りつけられている鏡へ向かって普段通りの笑みを作ってみせる。口角に厚化粧でも誤魔化しきれない小皺が浮かんだ。無表情に戻っていく自分と目を合わせたまま、股に突っ込ん

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焼き餅とウツケモノ

焼き餅とウツケモノ

「糠漬け食べたい」

「……え?」

「糠漬け食べたら、寝られる気がする」

 絡まった足を引っこ抜き、奥でオレンジ色に照らされた玉簾をくぐった。ワンルームにしてはちょっと大きめのキッチン。料理なんて、全くしないはずなのに、いつだって綺麗に整頓されている。

 シンク横の冷蔵庫を開けた。ひやっとした冷気がよれよれのTシャツの中に滑り込む。首のところをパタパタと仰ぐと、下顎から胸元へ玉の汗が滴り落ち

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夏の終わりに

夏の終わりに

 高校三年生の夏休みのことだ。その日は角笛のように先のとがった月がやけに朱く、雨上がりの空気がまとわりつくような蒸し暑さだった。

 コンビニを出て、すぐにパイナップルの入った缶詰のプルタブを引っ張った。平たい上蓋が面白いように丸まって、黄色い輪っかが顔を覗かせた。甘酸っぱい匂いが空っぽのお腹を刺激する。親指と人差し指で黄色い果実を潰さないようにそっと摘んで、シロップにたっぷり吸ってくたくたになっ

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四次元リュック

四次元リュック

ユキと出会ったのは、大学一年の春休みだった。小柄な身体に不釣り合いのやけに大きなリュックを背負った彼女は、嫌味じゃない笑みを浮かべて真っ黒な瞳でじっと見上げていた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 僕もまた、目を細めて微笑み返した。印象はそれほど悪くなかっただろう。昼はカフェ、夜はバーになるメニューの入れ替えが毎度面倒なコーヒーチェーンで働くようになって約十ヵ月。面接時から店長や同僚に笑顔

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星に願いを・小暑(7月7日)

星に願いを・小暑(7月7日)

 踵の吐き潰した上履きを脱ぐと、白い靴下に穴が空いていた。またやってしまった。下駄箱のスチール扉を開きながら、芋虫のように飛び出た小指を見下ろす。部活終わりで火照っているせいだろうか、薄暗くなった昇降口の床はやけにひんやりとしていて、触れたそこだけ気持ちよかった。

「あのさ、依子」

 すぐ横で液体の跳ねる音がした。顔を上げると、モカの胸元があった。小学校、いや中学生まではあたしの方が大きかった

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